政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
3-2 2番目の愛人
「こんなオーソドックスな嫌がらせしなくたって最初から初夜をする気が無いなら、私の事なんか無視してくれればいいのに……。もういいわ。自分の部屋に戻りましょう」
立ち上がって扉へと向かった。こんな何もない部屋にいたって落ち着かない。まだ完全に夜も明けていないようだから自分の部屋に戻って寝なおそう……。
部屋を出て、まだ薄暗い廊下をふらふらと歩きながら自分の部屋に戻りると、ベッドの中に潜り込んだのは言うまでも無かった――
****
「……ろ、……起きろ」
う~ん……誰かの声がすぐそばで聞こえる。
「……おい! 起きろっ!」
「え?」
慌てて起き上がると、腕組みをして怒り心頭なアレックス王子がいた。その背後には昨夜私を呼びに来た新しいメイドの…確かカーラとがいる。
これは一体どういう状況なのだろう?
寝ぼけ眼をこすり、窓の外を見ればカーテンの隙間からまぶしい太陽が差し込んでいる。
「あ……おはようございます」
とりあえず、3日ぶりに会うアレックス王子に挨拶をする。
「何がおはようございます……だ」
アレックス王子はかなり苛立っているのか声を震わせながら私を見下ろしていた。
「あの、今何時ですか?」
「……午前10時だ」
「そうですか。ところで私の侍女のミラージュはどこでしょう? 何かご存じですか?」
キョロキョロしながらアレックス王子に尋ねた。……この時間になってもミラージュが私の傍にいないなんて何かおかしい。
「お前の侍女なら朝から侍女教育を受けると言う事で侍女長から城の案内を受けている」
はあ、と溜息をつきながらアレックス王子は右手で髪をかきあげた。
「そうでしたか」
そうか、ミラージュはいないのか。
すると――
「おい! そんな事より、まずは俺の事を聞くのが先だろう!?」
朝からよく通る声でアレックス王子は声を荒げる。
「あ、そう言えば今朝はどのようなご用向きでこちらへいらしたのですか?」
アレックス王子を見上げて尋ねる。
「は……? お前、本気で言っているのか? それはこちらの台詞だ。昨夜は何処へ行っていた!?」
「え? 何処って?」
「昨夜は待てど暮らせど、一向にお前が俺の部屋に姿を現さない。なのでついに痺れを切らして、この部屋を尋ねてみれば部屋の中はもぬけの殻。それなのに今朝来てみれば部屋に戻り、ベッドの中で眠っている。一体昨夜は一晩中何処へ行っていたのだ!? そんなに俺と夫婦の営みをするのが嫌なのか!?」
いやいや……夫婦の営みなんて、朝からそんな言葉を大きな声で叫ぶとは。大体……。
そこで私は新しく専属メイドになったと名乗るカーラと目が合った。
「そう、彼女ですよ! 私の専属メイドになった、そこにいるカーラ。彼女が昨夜私の部屋にやってきて部屋を案内したのですのよ? 王子様がお待ちですのでお部屋へご案内いたしますって。それで私は彼女の後をついていき、見知らぬ部屋に通されて……一晩中寝ずにお待ちしていたのですよ」
「……その話、本当なのか?」
アレックス王子はクラウディアを見ると尋ねた。
「いいえ、私は何も知りません。レベッカ様の部屋へ伺った際、既にこの部屋にはいらっしゃいませんでした」
おおっ!私の前で堂々と嘘をついた!
「しかし、こいつはお前が呼びにやってきて部屋から連れ出したと言っているぞ?」
アレックス王子は私を指さしてクラウディアに尋ねた。
すると……。
「ひ、酷い……アレックス王子様。ここで5年間もメイドとして勤めている私よりも、ほんの3日前にこの国へやってきたレベッカ様の言葉の方を信じるのですか? 私の事を疑うなんて酷すぎます。何故レベッカ様がそのような嘘を言うのか私には信じられません……」
そしてシクシクと泣き始めた。
「ああ……泣くな。カーラ。お前を少しでも疑うような真似をした俺が悪いかった」
アレックス王子はカーラを宥め始めた。
「は?」
何故、一応妻である私の言葉よりもそんな気の強そうなメイドの言葉を信じるのだろう? いや、そもそも仮にも王女である私の前で堂々と嘘をつくその精神の図太さに呆れてしまう。
「き、きっとレベッカ様は……アレックス王子様との……夜の営みが嫌で逃げたのですよ……それなのに私のせいにするなんて……」
「え!?」
何と!そ こまで口から出まかせを言うなんて! その言葉を聞いたアレックス王子の顔色が変わり、私を睨みつけてきた。
「何……? そうなのか……?」
「あの、ちょっと待ってください。私は本当の事しか言っておりません。本当にあのメイドが……」
すると……ワッ! とクラウディアは泣き崩れてしまった。
「酷い……酷いですっ! レベッカ様!」
するとアレックス王子はとんでもないことを言ってきた。
「ああ……落ち着けカーラ。堂々と嘘をついたレベッカには今日1日食事抜きの罰を与えるから…、どうか泣き止んでくれ。俺が悪かったから……」
はい!? 食事抜き……? しかも丸1日……嘘でしょうっ!?
「あ、あの……アレックス王子……?」
「うるさいっ! お前は俺をたばかった罪で今日は1日食事抜きだ!」
そしてシクシク泣くカーラの肩を抱いて、2人は部屋を出て行った。その時、私は見てしまった。カーラが意地悪そうな笑みを浮かべて私を見ているのを。
――バタン
「ふ~ん……あのメイドが2番目の愛人なのね……」
閉じられた扉を見ながらポツリと口にした――
立ち上がって扉へと向かった。こんな何もない部屋にいたって落ち着かない。まだ完全に夜も明けていないようだから自分の部屋に戻って寝なおそう……。
部屋を出て、まだ薄暗い廊下をふらふらと歩きながら自分の部屋に戻りると、ベッドの中に潜り込んだのは言うまでも無かった――
****
「……ろ、……起きろ」
う~ん……誰かの声がすぐそばで聞こえる。
「……おい! 起きろっ!」
「え?」
慌てて起き上がると、腕組みをして怒り心頭なアレックス王子がいた。その背後には昨夜私を呼びに来た新しいメイドの…確かカーラとがいる。
これは一体どういう状況なのだろう?
寝ぼけ眼をこすり、窓の外を見ればカーテンの隙間からまぶしい太陽が差し込んでいる。
「あ……おはようございます」
とりあえず、3日ぶりに会うアレックス王子に挨拶をする。
「何がおはようございます……だ」
アレックス王子はかなり苛立っているのか声を震わせながら私を見下ろしていた。
「あの、今何時ですか?」
「……午前10時だ」
「そうですか。ところで私の侍女のミラージュはどこでしょう? 何かご存じですか?」
キョロキョロしながらアレックス王子に尋ねた。……この時間になってもミラージュが私の傍にいないなんて何かおかしい。
「お前の侍女なら朝から侍女教育を受けると言う事で侍女長から城の案内を受けている」
はあ、と溜息をつきながらアレックス王子は右手で髪をかきあげた。
「そうでしたか」
そうか、ミラージュはいないのか。
すると――
「おい! そんな事より、まずは俺の事を聞くのが先だろう!?」
朝からよく通る声でアレックス王子は声を荒げる。
「あ、そう言えば今朝はどのようなご用向きでこちらへいらしたのですか?」
アレックス王子を見上げて尋ねる。
「は……? お前、本気で言っているのか? それはこちらの台詞だ。昨夜は何処へ行っていた!?」
「え? 何処って?」
「昨夜は待てど暮らせど、一向にお前が俺の部屋に姿を現さない。なのでついに痺れを切らして、この部屋を尋ねてみれば部屋の中はもぬけの殻。それなのに今朝来てみれば部屋に戻り、ベッドの中で眠っている。一体昨夜は一晩中何処へ行っていたのだ!? そんなに俺と夫婦の営みをするのが嫌なのか!?」
いやいや……夫婦の営みなんて、朝からそんな言葉を大きな声で叫ぶとは。大体……。
そこで私は新しく専属メイドになったと名乗るカーラと目が合った。
「そう、彼女ですよ! 私の専属メイドになった、そこにいるカーラ。彼女が昨夜私の部屋にやってきて部屋を案内したのですのよ? 王子様がお待ちですのでお部屋へご案内いたしますって。それで私は彼女の後をついていき、見知らぬ部屋に通されて……一晩中寝ずにお待ちしていたのですよ」
「……その話、本当なのか?」
アレックス王子はクラウディアを見ると尋ねた。
「いいえ、私は何も知りません。レベッカ様の部屋へ伺った際、既にこの部屋にはいらっしゃいませんでした」
おおっ!私の前で堂々と嘘をついた!
「しかし、こいつはお前が呼びにやってきて部屋から連れ出したと言っているぞ?」
アレックス王子は私を指さしてクラウディアに尋ねた。
すると……。
「ひ、酷い……アレックス王子様。ここで5年間もメイドとして勤めている私よりも、ほんの3日前にこの国へやってきたレベッカ様の言葉の方を信じるのですか? 私の事を疑うなんて酷すぎます。何故レベッカ様がそのような嘘を言うのか私には信じられません……」
そしてシクシクと泣き始めた。
「ああ……泣くな。カーラ。お前を少しでも疑うような真似をした俺が悪いかった」
アレックス王子はカーラを宥め始めた。
「は?」
何故、一応妻である私の言葉よりもそんな気の強そうなメイドの言葉を信じるのだろう? いや、そもそも仮にも王女である私の前で堂々と嘘をつくその精神の図太さに呆れてしまう。
「き、きっとレベッカ様は……アレックス王子様との……夜の営みが嫌で逃げたのですよ……それなのに私のせいにするなんて……」
「え!?」
何と!そ こまで口から出まかせを言うなんて! その言葉を聞いたアレックス王子の顔色が変わり、私を睨みつけてきた。
「何……? そうなのか……?」
「あの、ちょっと待ってください。私は本当の事しか言っておりません。本当にあのメイドが……」
すると……ワッ! とクラウディアは泣き崩れてしまった。
「酷い……酷いですっ! レベッカ様!」
するとアレックス王子はとんでもないことを言ってきた。
「ああ……落ち着けカーラ。堂々と嘘をついたレベッカには今日1日食事抜きの罰を与えるから…、どうか泣き止んでくれ。俺が悪かったから……」
はい!? 食事抜き……? しかも丸1日……嘘でしょうっ!?
「あ、あの……アレックス王子……?」
「うるさいっ! お前は俺をたばかった罪で今日は1日食事抜きだ!」
そしてシクシク泣くカーラの肩を抱いて、2人は部屋を出て行った。その時、私は見てしまった。カーラが意地悪そうな笑みを浮かべて私を見ているのを。
――バタン
「ふ~ん……あのメイドが2番目の愛人なのね……」
閉じられた扉を見ながらポツリと口にした――