政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
1-4 勝手口からの入城
それから約30分程馬車は走り続け、やっと止まった。
「ど、どうやら着いたようですね……」
ミラージュが肩で息をしながら青ざめた顔で私を見る。
「え、ええ……そうね……」
私も何とか笑みを浮かべてミラージュに返事をした。けれども、おしりがずきずき痛むし、腰も痛いしでかなり限界に来ていたのでホッとした。
「さあ、どうぞ降りて下さいませ。レベッカ様と……」
爺やさんはミラージュをじっと見つめた。
「私はレベッカ様の侍女のミラージュと申します」
ミラージュは素っ気なく答えるとすぐに爺やさんにお願いした。
「馬車にトランクケースが10個も入ってるんです。先ほど乗せるのだけでも大変だったのですから、どなたか人を呼んで降ろして下さいね。そして必ずレベッカ様のお部屋に運ぶよう伝えてください。ところで第二王子様はどちらですか? レベッカ様が到着されたのに、何故誰も出迎えないのですかっ!」
ミラージュはよほど我慢しているのか、眉間に青筋が浮いている。
「そ、それが……今夜の……う、宴の準備が忙しく、誰も手が離せないのです……」
爺やさんがしどろもどろに言うが、宴と聞いて途端にミラージュは笑顔になる。
「まあ、宴ですか? それならば仕方ありませんね。では私が先に降りてレベッカ様をエスコート致しましょうか?」
ミラージュは私を振り返ると尋ねてきた。
「いいえ、大丈夫よ。エスコートしてもらわなくても降りられるから」
大体私は王女だけども、誰かにエスコートしてもらえるような身分では無かった。何せ私のあだ名は『ガラクタ姫』と呼ばれていたくらいなのだから。
手すりにつかまり、ストンと地面に降りて驚いた。眼前には巨大な城がそびえたっているのに、出入口はこじんまりした扉しかないのだ。しかもどう見てもここは城の裏側にも見えるし、庭に見えるのは風に揺れるシーツの数々。
ひょっとしてここは……?
「ちょとっ! ど、どういう事ですかっ!? この出入口、どう見ても使用人用の勝手口じゃないですかっ! どうして一国の王女様を……王女様を……!」
そして頭に血が上り過ぎたのか、ふらりとよろけるミラージュ。
「キャアッ! ミラージュ! しっかりしてっ! だから怒り過ぎは良くないって言ったのよ」
慌ててミラージュを支えながら私は爺やさんに尋ねた。
「あの、何故勝手口から入るのですか? 一応私は明日アレックス様と婚姻する花嫁ですが」
すると爺やさんはポケットからハンカチを出すと汗をふく。
「そ、それが…ア、アレックス様のご命令で…」
「はぁ!? 迎えも寄越さず、出迎えも無し。挙句の果てにこの仕打ちですか!? いい加減にして下さいっ!」
私が口を開く前にミラージュが怒気を含んだ声で爺やさんを睨みつけた。
「い、いえ。きっとお坊ちゃま……もとい、アレックス様は……レベッカ様をテ、テストされているのでしょう」
「テスト……ですか?」
「は、はい。どんな逆境にもめげず……そ、その折れない心を……と言いますか、度量の大きさを……」
傍から聞いても苦しい言い訳にしか聞こえない爺やさんの言葉を聞いて私は思った。
やはり私は歓迎されていないのだ。だけど普通の姫なら泣いて国へ帰ると言うかもしれないけれど、私は母国でメイド達や姉達に踏みつけられるような生活をしてきのだから、これ位別にどうって事はない。
「分かりました。それではこちらから中へ入りましょう。アレックス様をお待たせするわけにはまいりませんから」
そして私は笑みを浮かべて爺やさんを見た――
「ど、どうやら着いたようですね……」
ミラージュが肩で息をしながら青ざめた顔で私を見る。
「え、ええ……そうね……」
私も何とか笑みを浮かべてミラージュに返事をした。けれども、おしりがずきずき痛むし、腰も痛いしでかなり限界に来ていたのでホッとした。
「さあ、どうぞ降りて下さいませ。レベッカ様と……」
爺やさんはミラージュをじっと見つめた。
「私はレベッカ様の侍女のミラージュと申します」
ミラージュは素っ気なく答えるとすぐに爺やさんにお願いした。
「馬車にトランクケースが10個も入ってるんです。先ほど乗せるのだけでも大変だったのですから、どなたか人を呼んで降ろして下さいね。そして必ずレベッカ様のお部屋に運ぶよう伝えてください。ところで第二王子様はどちらですか? レベッカ様が到着されたのに、何故誰も出迎えないのですかっ!」
ミラージュはよほど我慢しているのか、眉間に青筋が浮いている。
「そ、それが……今夜の……う、宴の準備が忙しく、誰も手が離せないのです……」
爺やさんがしどろもどろに言うが、宴と聞いて途端にミラージュは笑顔になる。
「まあ、宴ですか? それならば仕方ありませんね。では私が先に降りてレベッカ様をエスコート致しましょうか?」
ミラージュは私を振り返ると尋ねてきた。
「いいえ、大丈夫よ。エスコートしてもらわなくても降りられるから」
大体私は王女だけども、誰かにエスコートしてもらえるような身分では無かった。何せ私のあだ名は『ガラクタ姫』と呼ばれていたくらいなのだから。
手すりにつかまり、ストンと地面に降りて驚いた。眼前には巨大な城がそびえたっているのに、出入口はこじんまりした扉しかないのだ。しかもどう見てもここは城の裏側にも見えるし、庭に見えるのは風に揺れるシーツの数々。
ひょっとしてここは……?
「ちょとっ! ど、どういう事ですかっ!? この出入口、どう見ても使用人用の勝手口じゃないですかっ! どうして一国の王女様を……王女様を……!」
そして頭に血が上り過ぎたのか、ふらりとよろけるミラージュ。
「キャアッ! ミラージュ! しっかりしてっ! だから怒り過ぎは良くないって言ったのよ」
慌ててミラージュを支えながら私は爺やさんに尋ねた。
「あの、何故勝手口から入るのですか? 一応私は明日アレックス様と婚姻する花嫁ですが」
すると爺やさんはポケットからハンカチを出すと汗をふく。
「そ、それが…ア、アレックス様のご命令で…」
「はぁ!? 迎えも寄越さず、出迎えも無し。挙句の果てにこの仕打ちですか!? いい加減にして下さいっ!」
私が口を開く前にミラージュが怒気を含んだ声で爺やさんを睨みつけた。
「い、いえ。きっとお坊ちゃま……もとい、アレックス様は……レベッカ様をテ、テストされているのでしょう」
「テスト……ですか?」
「は、はい。どんな逆境にもめげず……そ、その折れない心を……と言いますか、度量の大きさを……」
傍から聞いても苦しい言い訳にしか聞こえない爺やさんの言葉を聞いて私は思った。
やはり私は歓迎されていないのだ。だけど普通の姫なら泣いて国へ帰ると言うかもしれないけれど、私は母国でメイド達や姉達に踏みつけられるような生活をしてきのだから、これ位別にどうって事はない。
「分かりました。それではこちらから中へ入りましょう。アレックス様をお待たせするわけにはまいりませんから」
そして私は笑みを浮かべて爺やさんを見た――