政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
3-5 私の計画
私がアレックス王子から食事抜きの罰を与えられ、早いもので1週間が経過していた。
「フンフンフ~ン……」
太陽の光がさんさんと照り付ける温室で半そでのワンピースにエプロンを締めた私はランス王子の果樹園で鼻歌を歌いながらメロンの水やり作業を行っていた。そして隣の畑ではミラージュがイチゴの選別をしている。
「レベッカ様、その鼻歌は何ですか?」
ミラージュが立ち上がるとハンカチで汗を拭きながら尋ねてきた。
「これ? これはねぇ……2日前に慈善活動で訪れた施設の子供たちが歌っていた歌なのよ。歌詞を覚えていないから鼻歌で歌っていたの」
フフ……可愛かったなぁ子供たち……。思わず子供たちの顔が頭に浮かんで笑みがこぼれた。
「うう……レベッカ様……」
すると何故か分からないが、突然ミラージュが目をウルウルさせ始めた。
「ど、どうしたのっ!? ミラージュ」
驚いて声を掛けるとミラージュは声を詰まらせながら話し始めた。
「ウッウッ……ひ、酷いと思いませんか? アレックス皇子は……。普通他国に嫁いだ姫はその国の風習や歴史、文化を学ぶために家庭教師がついて勉強させて頂いたりするのですよ? 時にはダンスや歌の練習も行ったり……。それなのに! アレックス王子は一度たりともレベッカ様に教育を付けさせてくれないじゃありませんかっ! おまけにあの専属メイドはいつも食事を運んでくるだけで、すぐにどこかへいなくなってしまうし……それに知っていますかっ!? 時々こっそりレベッカ様のクローゼットから衣装を抜き取っているんですよっ!? 私……見てしまったんです。あのメイドが仕事が休みの日、レベッカ様から盗んだ衣装を堂々と来て……ア、アレックス王子と並んで歩いている姿をっ!!」
……確かに私の部屋のクローゼットから衣装が抜き取られているのは気づいていた。
だけど……。
「ああ~あれね。別にいいのいいの。だって少しも私の趣味じゃない衣装なんだもの。どうせ一度も袖を通したことが無かったんだし、ドレスだって誰かに着てもらえた方が嬉しいじゃない?」
それを聞いたミラージュはますます目を潤ませた。
「うう……レベッカ様……本当にレベッカ様は何て慈愛に満ちたお方なのでしょう。あんな畜生の妻にしておくのはあまりにもったいなさすぎます……!」
「妻……ねえ……」
しかし、本当に私やアレックス王子の関係を夫婦と呼んでいいのだろうか? あの日、アレックス王子に食事抜きを言い渡されて以降一度も私は王子の姿を見てもいないし、初夜の話もどこかへ吹き飛んでしまった。でも……。
「私、オーランド王国にいた時よりも今の方がずっと幸せよ。政略結婚のお飾り妻かもしれないけれど、気楽に暮らせるんだもの。それにランス王子のお陰で飢える事も無くなったしね」
そう、実は私は時々専属侍女? のカーラから食事抜きの嫌がらせをされている。食事時間になると時々カーラは行方をくらますのだ。その数時間後に何事も無く私の前に現れる。そして仕事が忙しくて食事を届けられなかったと悪びれもせずに言うのだから、前回のメイドのビビアンよりもたちが悪いかもしれない。おまけに私は知っている。夜半になると、クラウディアがアレックス王子の寝室へそっと足を向け……朝まで部屋から出てこないと言う事を。恐らく2人で宜しくやっているのだろう。
だけど、この話は絶対にミラージュには内緒なのだけど。
ミラージュは温室をぐるりと見渡す。
「本当ですね、ランス王子には感謝ですよ。ご自身の温室と果樹園の管理をレベッカ様に任せて下さったのですから。お陰でレベッカ様は飢える事も無く……ううっ! 申し訳ございませんっ! わ、私が不甲斐ないばかりに……!」
すると今度はミラージュは泣き崩れてしまった。
「ど、どうしたの、ミラージュ」
「ま、まさか……レベッカ様が今も継続して食事抜きの罰を与えられていたなんて……な、何故相談して下さらなかったのですか!?そうしたら私があのメイドを締め上げて……!」
すると途端にミラージュの頭から本性が現れ始めた。
「キャアッ! ミ、ミラージュッ! 頭、頭からまた生えてきてるわよっ!!」
「え……?キャアアアッ!」
ミラージュは頭に手をやり、悲鳴を上げた。そう……私がミラージュに色々な事を相談できない理由はこれだ。最近ミラージュは力のコントロールがうまくできないのか、興奮するとすぐに本性が現れてしまう。だから私も自分の置かれた境遇を秘密にしていたのだけど、いつの間にかミラージュにばれていた。
「ううう……レベッカ様……これが原因なんですね……? 私に相談できなかったのは……?」
涙目になって頭を押さえるミラージュに私は苦笑いしながら頷いた。
「大丈夫よ、ミラージュ。これからまた少しずつだけど確実に私たちの味方になってくれる人や物たちを増やしていくから。そしたらもっと私やミラージュにとって住みやすい環境になっていくわよ。ね?」
そして、そっと傍にあるブドウの木に触れると、木は嬉しそうに葉を揺らめかせ……
ポトリ
私の手の中に一房のブドウを落としてくれた――
「フンフンフ~ン……」
太陽の光がさんさんと照り付ける温室で半そでのワンピースにエプロンを締めた私はランス王子の果樹園で鼻歌を歌いながらメロンの水やり作業を行っていた。そして隣の畑ではミラージュがイチゴの選別をしている。
「レベッカ様、その鼻歌は何ですか?」
ミラージュが立ち上がるとハンカチで汗を拭きながら尋ねてきた。
「これ? これはねぇ……2日前に慈善活動で訪れた施設の子供たちが歌っていた歌なのよ。歌詞を覚えていないから鼻歌で歌っていたの」
フフ……可愛かったなぁ子供たち……。思わず子供たちの顔が頭に浮かんで笑みがこぼれた。
「うう……レベッカ様……」
すると何故か分からないが、突然ミラージュが目をウルウルさせ始めた。
「ど、どうしたのっ!? ミラージュ」
驚いて声を掛けるとミラージュは声を詰まらせながら話し始めた。
「ウッウッ……ひ、酷いと思いませんか? アレックス皇子は……。普通他国に嫁いだ姫はその国の風習や歴史、文化を学ぶために家庭教師がついて勉強させて頂いたりするのですよ? 時にはダンスや歌の練習も行ったり……。それなのに! アレックス王子は一度たりともレベッカ様に教育を付けさせてくれないじゃありませんかっ! おまけにあの専属メイドはいつも食事を運んでくるだけで、すぐにどこかへいなくなってしまうし……それに知っていますかっ!? 時々こっそりレベッカ様のクローゼットから衣装を抜き取っているんですよっ!? 私……見てしまったんです。あのメイドが仕事が休みの日、レベッカ様から盗んだ衣装を堂々と来て……ア、アレックス王子と並んで歩いている姿をっ!!」
……確かに私の部屋のクローゼットから衣装が抜き取られているのは気づいていた。
だけど……。
「ああ~あれね。別にいいのいいの。だって少しも私の趣味じゃない衣装なんだもの。どうせ一度も袖を通したことが無かったんだし、ドレスだって誰かに着てもらえた方が嬉しいじゃない?」
それを聞いたミラージュはますます目を潤ませた。
「うう……レベッカ様……本当にレベッカ様は何て慈愛に満ちたお方なのでしょう。あんな畜生の妻にしておくのはあまりにもったいなさすぎます……!」
「妻……ねえ……」
しかし、本当に私やアレックス王子の関係を夫婦と呼んでいいのだろうか? あの日、アレックス王子に食事抜きを言い渡されて以降一度も私は王子の姿を見てもいないし、初夜の話もどこかへ吹き飛んでしまった。でも……。
「私、オーランド王国にいた時よりも今の方がずっと幸せよ。政略結婚のお飾り妻かもしれないけれど、気楽に暮らせるんだもの。それにランス王子のお陰で飢える事も無くなったしね」
そう、実は私は時々専属侍女? のカーラから食事抜きの嫌がらせをされている。食事時間になると時々カーラは行方をくらますのだ。その数時間後に何事も無く私の前に現れる。そして仕事が忙しくて食事を届けられなかったと悪びれもせずに言うのだから、前回のメイドのビビアンよりもたちが悪いかもしれない。おまけに私は知っている。夜半になると、クラウディアがアレックス王子の寝室へそっと足を向け……朝まで部屋から出てこないと言う事を。恐らく2人で宜しくやっているのだろう。
だけど、この話は絶対にミラージュには内緒なのだけど。
ミラージュは温室をぐるりと見渡す。
「本当ですね、ランス王子には感謝ですよ。ご自身の温室と果樹園の管理をレベッカ様に任せて下さったのですから。お陰でレベッカ様は飢える事も無く……ううっ! 申し訳ございませんっ! わ、私が不甲斐ないばかりに……!」
すると今度はミラージュは泣き崩れてしまった。
「ど、どうしたの、ミラージュ」
「ま、まさか……レベッカ様が今も継続して食事抜きの罰を与えられていたなんて……な、何故相談して下さらなかったのですか!?そうしたら私があのメイドを締め上げて……!」
すると途端にミラージュの頭から本性が現れ始めた。
「キャアッ! ミ、ミラージュッ! 頭、頭からまた生えてきてるわよっ!!」
「え……?キャアアアッ!」
ミラージュは頭に手をやり、悲鳴を上げた。そう……私がミラージュに色々な事を相談できない理由はこれだ。最近ミラージュは力のコントロールがうまくできないのか、興奮するとすぐに本性が現れてしまう。だから私も自分の置かれた境遇を秘密にしていたのだけど、いつの間にかミラージュにばれていた。
「ううう……レベッカ様……これが原因なんですね……? 私に相談できなかったのは……?」
涙目になって頭を押さえるミラージュに私は苦笑いしながら頷いた。
「大丈夫よ、ミラージュ。これからまた少しずつだけど確実に私たちの味方になってくれる人や物たちを増やしていくから。そしたらもっと私やミラージュにとって住みやすい環境になっていくわよ。ね?」
そして、そっと傍にあるブドウの木に触れると、木は嬉しそうに葉を揺らめかせ……
ポトリ
私の手の中に一房のブドウを落としてくれた――