政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
4-5 追い出される私
「あ~……気持ちよかった……」
髪を乾かし、白いネグリジェに着替えて部屋に戻るとすでにアレックス王子はベッドに寝転がって読書をしていた。そしてバスルームから出てきた私を見て驚きの声を上げる。
「な……何!? お、お前……1人でこの部屋のバスルームを使って風呂に入ったのか!?」
「はい、そうですけど?」
「何だって……? 1人でそんな事が出来るのか?」
「え!? 出来ないんですかっ!? ひょっとしてお湯の出し方も知らないとかっ!?」
「わ……悪いか!? 俺は王族だっ! そんなものは使用人にまかせればいいのだっ! 何か文句でもあるかっ!?」
アレックス王子は顔を真っ赤にして抗議する。
「いえ~……別にいいですけどね~……」
貴族の嗜みを身につけるより、私が今まで生きる為に学んで来た事の方が余程役立つのに……。そんな事を考えていたら何だか眠くなってきた。
「ふわあ……。では失礼します」
アレックス王子のいるベッドに近付き、よじ登ろうとしたところ……。
「お、おいっ!? 何でベッドに入って来るんだ!?」
アレックス王子が焦った様子をみせる。
「え……? そんなの決まっています。眠いから寝る為です」
「馬鹿な事を言うなっ! これは俺のベッドだっ! 出てけっ!」
滅茶苦茶な事を言ってくれる。
「ええ~いいじゃないですか。だってキングサイズベッドですよ? 広いじゃないですか。私、寝相はいいですから」
「ってこら~っ! 話ながら潜り込んでくるなっ! 早く出て行かないと蹴り飛ばすぞっ!」
「え! それこそずるいですっ! 不公平ですっ!」
「うるさいっ! お前みたいなテーブルマナーもまともに知らないような女はソファの上で寝ろっ! 大体あのカウチソファが気に入ったと言っていたじゃないかっ!」
アレックス王子はカウチソファを指さした。
「……分かりましたよ……。あそこで寝ればいいんでしょう? でもその上掛けくらいは貸して下さいよ」
グイッとアレックス王子の上掛けをはがそうとすると、王子も負けじと引っ張り返す。
「駄目だ! 貸さんっ!」
「ええっ!? 酷いじゃないですかっ!ベッドに入れてもくれない、上掛けも貸してくれない……風邪引いたらどうするんですか!?」
「うるさいっ! 俺だって風邪を引きたくないっ! 大体俺とお前とじゃなあ……命の重さが違うんだよっ!」
おおっ! ついに命の重さという単語迄飛び出してきた。
「分かりましたよ……」
私は肩をすくめた。
「何? 分かったのか?」
アレックス王子がきょとんとした顔で私を見る。
「ええ……命の重さとまで言われてしまえば仕方ないですからねぇ……」
「そうだ、分かれば良いのだ。分かれば」
そしてそのままアレックス王子は本をパタンと閉じると、どさりとベッドに横たわり目を閉じた。
「おい、ちゃんと明かりを消してから寝ろよ」
「はいはい……」
「フン。はいは1回だ」
「はい、アレックス様」
これ以上もめるのも嫌だから仕方なく素直に返事をすると、部屋中の明かりを消して周った。そして一つだけ火を残しておいたランタンを持って全てのバスローブを取って来るとカウチソファに敷いて、身体の上に掛けた。うう……これでも寒いじゃないの……。だけど他に掛けるものは無いし……。
我慢するしかないか……諦めて寝よう。
フッと息を吹きかけてランタンを消し、どうせ返事も反って来ないだろうと思いつつも寝る前の挨拶をした。
「おやすみなさい、アレックス様」
「ああ……」
何と返事が返ってきた。へぇ~てっきり無視されると思っていたのに……ひょっとしてほんの少しだけ、2人の距離が近づいてきたのかな~。
やがて徐々に眠くなってきて……眠りに落ちる瞬間、私は思った。
そうだ、ベッドをここに運んできてもらえば良かった――と。
髪を乾かし、白いネグリジェに着替えて部屋に戻るとすでにアレックス王子はベッドに寝転がって読書をしていた。そしてバスルームから出てきた私を見て驚きの声を上げる。
「な……何!? お、お前……1人でこの部屋のバスルームを使って風呂に入ったのか!?」
「はい、そうですけど?」
「何だって……? 1人でそんな事が出来るのか?」
「え!? 出来ないんですかっ!? ひょっとしてお湯の出し方も知らないとかっ!?」
「わ……悪いか!? 俺は王族だっ! そんなものは使用人にまかせればいいのだっ! 何か文句でもあるかっ!?」
アレックス王子は顔を真っ赤にして抗議する。
「いえ~……別にいいですけどね~……」
貴族の嗜みを身につけるより、私が今まで生きる為に学んで来た事の方が余程役立つのに……。そんな事を考えていたら何だか眠くなってきた。
「ふわあ……。では失礼します」
アレックス王子のいるベッドに近付き、よじ登ろうとしたところ……。
「お、おいっ!? 何でベッドに入って来るんだ!?」
アレックス王子が焦った様子をみせる。
「え……? そんなの決まっています。眠いから寝る為です」
「馬鹿な事を言うなっ! これは俺のベッドだっ! 出てけっ!」
滅茶苦茶な事を言ってくれる。
「ええ~いいじゃないですか。だってキングサイズベッドですよ? 広いじゃないですか。私、寝相はいいですから」
「ってこら~っ! 話ながら潜り込んでくるなっ! 早く出て行かないと蹴り飛ばすぞっ!」
「え! それこそずるいですっ! 不公平ですっ!」
「うるさいっ! お前みたいなテーブルマナーもまともに知らないような女はソファの上で寝ろっ! 大体あのカウチソファが気に入ったと言っていたじゃないかっ!」
アレックス王子はカウチソファを指さした。
「……分かりましたよ……。あそこで寝ればいいんでしょう? でもその上掛けくらいは貸して下さいよ」
グイッとアレックス王子の上掛けをはがそうとすると、王子も負けじと引っ張り返す。
「駄目だ! 貸さんっ!」
「ええっ!? 酷いじゃないですかっ!ベッドに入れてもくれない、上掛けも貸してくれない……風邪引いたらどうするんですか!?」
「うるさいっ! 俺だって風邪を引きたくないっ! 大体俺とお前とじゃなあ……命の重さが違うんだよっ!」
おおっ! ついに命の重さという単語迄飛び出してきた。
「分かりましたよ……」
私は肩をすくめた。
「何? 分かったのか?」
アレックス王子がきょとんとした顔で私を見る。
「ええ……命の重さとまで言われてしまえば仕方ないですからねぇ……」
「そうだ、分かれば良いのだ。分かれば」
そしてそのままアレックス王子は本をパタンと閉じると、どさりとベッドに横たわり目を閉じた。
「おい、ちゃんと明かりを消してから寝ろよ」
「はいはい……」
「フン。はいは1回だ」
「はい、アレックス様」
これ以上もめるのも嫌だから仕方なく素直に返事をすると、部屋中の明かりを消して周った。そして一つだけ火を残しておいたランタンを持って全てのバスローブを取って来るとカウチソファに敷いて、身体の上に掛けた。うう……これでも寒いじゃないの……。だけど他に掛けるものは無いし……。
我慢するしかないか……諦めて寝よう。
フッと息を吹きかけてランタンを消し、どうせ返事も反って来ないだろうと思いつつも寝る前の挨拶をした。
「おやすみなさい、アレックス様」
「ああ……」
何と返事が返ってきた。へぇ~てっきり無視されると思っていたのに……ひょっとしてほんの少しだけ、2人の距離が近づいてきたのかな~。
やがて徐々に眠くなってきて……眠りに落ちる瞬間、私は思った。
そうだ、ベッドをここに運んできてもらえば良かった――と。