政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
4-6 期待外れ
――翌朝
う……寒いな……。ガタガタ震えながら……。
「ハ……ハックションッ!」
盛大なくしゃみをした。
「何だ? お前みたいな人間でも風邪を引くんだな?」
目を開けるとそこには既に着替えの終わったアレックス王子がテーブルの前の椅子に座り、紅茶を飲んでいる最中だった。
「あ……おはようございます……」
ぼ~っとする頭でベッド代わりにしていたカウチソファからムクリと起き上がり、酷い悪寒がしてブルリと身体を震わせた。
「何がおはようございますだ。今何時だと思ってるんだ?」
「へ……? 何時ですか?」
「もう11時を過ぎてるぞ?」
アレックス王子は紅茶のカップをカチャリと置く。
「え……? もうそんな時間ですか? アレックス様は朝食はどうされたんですか?」
「何言ってる、そんなものはとっくに食べたに決まっているだろう? 来賓客の為に用意されたダイニングルームでな」
「え? そんな酷いっ! どうして私も連れて行ってくれなかったんですか? ……うっ!」
大きな声を上げて頭痛で思わず頭を押さえる。
「何言ってるんだ? 俺は一度は声をかけたぞ? 一度はな。だがお前は目を覚まさなかった。だから俺1人で行ってきたんだ。って言うか……お前、風邪引いてるんじゃないのか? 顔が赤いぞ?」
アレックス王子が眉をひそめる。
「あ? ひょっとして心配してくれているんですか? フフ……」
するとアレックス王子は露骨に嫌そうな顔になった。
「はぁ~? 何を笑っているんだ、気持ち悪い。大体なぁ、誰がお前みたいな奴の心配をしないといけないんだ? それにしても馬鹿は風邪引かないって言うのは……あれは嘘だな。何せお前はこうやって風邪を引いたわけだからな」
相変わらず憎まれ口しか叩かない王子だ。
「少しは気にかけてくれてもいいんじゃないですか……? 仮にも私はアレックス様の妻ですよ?」
バスローブを手繰り寄せ、肩に掛けながら恨めしい目を向けた。
「誰が妻だ! 誰が! いいか? 俺は仕方なしにお前と結婚しただけだからな? これからこの先もずっとお前に愛情のひとかけらも向くことは無い。それだけは覚えておけよ?」
病人に対して容赦ない言葉を突き付けてくる。そんなアレックス王子に溜息をついた。
「でも私には色々親切にしておいた方がいですよ?」
そう、私に親切にしてくれる人にご利益があるんだから。
「ふざけるな。お前に親切にすること程無駄な行為はこの世にない。あ~全く。病人のお前と同室だと風邪がうつりそうだ」
アレックス王子は立ち上がると、髪をかき上げながらドアの方へ向かって歩いて行く。
「あの? どちらへ行かれるのですか?」
「うるさい、散歩だ、散歩。俺に構うな」
そしてそのままドアを開けて部屋を出て行ってしまった。
少しの間閉められたドアを見つめていた私は再びゴロリとカウチソファに寝転がった。
「う~……具合悪い……ベッドで寝たいけど……きっと怒られるだろうな……」
そしてそのままウトウトしつつ……いつの間にか私は眠っていた――
****
う~ん……冷たくて気持ちい……それになんか美味しそうな匂いがするな……。
ん? 匂い……?
思わずパチリと目を開けると、私はふかふかのベッドの上で温かい上掛けを掛けて眠っていた。
「え? 私ソファで眠っていたはずなのに?」
思わずガバッと起き上がった拍子に頭の上から氷嚢が落ちてきた。
「え? 氷嚢?」
すると……。
「あ、お目覚めですか?」
女性の声が聞こえた。振り向くとそこにはこの城に勤めるメイドがいた。テーブルの上には美味しそうな匂いのする料理が載っている。
「あの……私……?」
「ええ、実はアレックス王子様に言われたのです。妻が風邪を引いてしまったので医者を呼んで欲しいと。そして食事の用意もして欲しいと頼まれてきたのです」
「え……? アレックス王子が?」
私は信じられない気持ちで尋ねた。
「ええ、そうですよ。目が覚められたようですので食事になさいますか? 野菜入りのクリームチーズリゾットを用意致しましたので」
「え? 食べる! 食べますっ!」
するとメイドはベッドテーブルを用意し、リゾットを運んで来てくれた。
「どうぞ、お召し上がりください。では私はこれで失礼致します」
そしてメイドは出て行きドアはパタンと閉じられた。
「良かった~……お腹空いていたんだよね……」
そしてさっそく熱々のリゾットをスプーンですくって一口パクリ。
「うわ! 美味しいっ! これは元気が出てきそうだわっ!」
そして私は無我夢中でリゾットを食べ続け……あっという間に完食してしまった。
「ふ~……美味しかった。アレックス王子もいいとこあるじゃないの。やっぱりああは言っても私の事心配してくれているのかな?」
そしてベッドテーブルを片付ける為にベッドから降りて……何の気なしに窓の外を覗き込んで目を見張った。
「アレックス王子……?」
この部屋の窓からは美しい庭園が見下ろせる。そしてその庭をアレックス王子がパラソルをさした女性と歩いていたのだ。あの女性は誰なんだろう?
そのまま窓から様子を窺っていると、アレックス王子は女性の肩を抱き寄せ……パラソルのせいで見えないが、恐らく女性とキスをした。
「ふ~ん……」
なるほどねぇ……。少しは期待していたのに、とんだ期待外れだったようだ。
私は頬杖をつき、2人が庭を去る迄黙って見つめていた――
う……寒いな……。ガタガタ震えながら……。
「ハ……ハックションッ!」
盛大なくしゃみをした。
「何だ? お前みたいな人間でも風邪を引くんだな?」
目を開けるとそこには既に着替えの終わったアレックス王子がテーブルの前の椅子に座り、紅茶を飲んでいる最中だった。
「あ……おはようございます……」
ぼ~っとする頭でベッド代わりにしていたカウチソファからムクリと起き上がり、酷い悪寒がしてブルリと身体を震わせた。
「何がおはようございますだ。今何時だと思ってるんだ?」
「へ……? 何時ですか?」
「もう11時を過ぎてるぞ?」
アレックス王子は紅茶のカップをカチャリと置く。
「え……? もうそんな時間ですか? アレックス様は朝食はどうされたんですか?」
「何言ってる、そんなものはとっくに食べたに決まっているだろう? 来賓客の為に用意されたダイニングルームでな」
「え? そんな酷いっ! どうして私も連れて行ってくれなかったんですか? ……うっ!」
大きな声を上げて頭痛で思わず頭を押さえる。
「何言ってるんだ? 俺は一度は声をかけたぞ? 一度はな。だがお前は目を覚まさなかった。だから俺1人で行ってきたんだ。って言うか……お前、風邪引いてるんじゃないのか? 顔が赤いぞ?」
アレックス王子が眉をひそめる。
「あ? ひょっとして心配してくれているんですか? フフ……」
するとアレックス王子は露骨に嫌そうな顔になった。
「はぁ~? 何を笑っているんだ、気持ち悪い。大体なぁ、誰がお前みたいな奴の心配をしないといけないんだ? それにしても馬鹿は風邪引かないって言うのは……あれは嘘だな。何せお前はこうやって風邪を引いたわけだからな」
相変わらず憎まれ口しか叩かない王子だ。
「少しは気にかけてくれてもいいんじゃないですか……? 仮にも私はアレックス様の妻ですよ?」
バスローブを手繰り寄せ、肩に掛けながら恨めしい目を向けた。
「誰が妻だ! 誰が! いいか? 俺は仕方なしにお前と結婚しただけだからな? これからこの先もずっとお前に愛情のひとかけらも向くことは無い。それだけは覚えておけよ?」
病人に対して容赦ない言葉を突き付けてくる。そんなアレックス王子に溜息をついた。
「でも私には色々親切にしておいた方がいですよ?」
そう、私に親切にしてくれる人にご利益があるんだから。
「ふざけるな。お前に親切にすること程無駄な行為はこの世にない。あ~全く。病人のお前と同室だと風邪がうつりそうだ」
アレックス王子は立ち上がると、髪をかき上げながらドアの方へ向かって歩いて行く。
「あの? どちらへ行かれるのですか?」
「うるさい、散歩だ、散歩。俺に構うな」
そしてそのままドアを開けて部屋を出て行ってしまった。
少しの間閉められたドアを見つめていた私は再びゴロリとカウチソファに寝転がった。
「う~……具合悪い……ベッドで寝たいけど……きっと怒られるだろうな……」
そしてそのままウトウトしつつ……いつの間にか私は眠っていた――
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う~ん……冷たくて気持ちい……それになんか美味しそうな匂いがするな……。
ん? 匂い……?
思わずパチリと目を開けると、私はふかふかのベッドの上で温かい上掛けを掛けて眠っていた。
「え? 私ソファで眠っていたはずなのに?」
思わずガバッと起き上がった拍子に頭の上から氷嚢が落ちてきた。
「え? 氷嚢?」
すると……。
「あ、お目覚めですか?」
女性の声が聞こえた。振り向くとそこにはこの城に勤めるメイドがいた。テーブルの上には美味しそうな匂いのする料理が載っている。
「あの……私……?」
「ええ、実はアレックス王子様に言われたのです。妻が風邪を引いてしまったので医者を呼んで欲しいと。そして食事の用意もして欲しいと頼まれてきたのです」
「え……? アレックス王子が?」
私は信じられない気持ちで尋ねた。
「ええ、そうですよ。目が覚められたようですので食事になさいますか? 野菜入りのクリームチーズリゾットを用意致しましたので」
「え? 食べる! 食べますっ!」
するとメイドはベッドテーブルを用意し、リゾットを運んで来てくれた。
「どうぞ、お召し上がりください。では私はこれで失礼致します」
そしてメイドは出て行きドアはパタンと閉じられた。
「良かった~……お腹空いていたんだよね……」
そしてさっそく熱々のリゾットをスプーンですくって一口パクリ。
「うわ! 美味しいっ! これは元気が出てきそうだわっ!」
そして私は無我夢中でリゾットを食べ続け……あっという間に完食してしまった。
「ふ~……美味しかった。アレックス王子もいいとこあるじゃないの。やっぱりああは言っても私の事心配してくれているのかな?」
そしてベッドテーブルを片付ける為にベッドから降りて……何の気なしに窓の外を覗き込んで目を見張った。
「アレックス王子……?」
この部屋の窓からは美しい庭園が見下ろせる。そしてその庭をアレックス王子がパラソルをさした女性と歩いていたのだ。あの女性は誰なんだろう?
そのまま窓から様子を窺っていると、アレックス王子は女性の肩を抱き寄せ……パラソルのせいで見えないが、恐らく女性とキスをした。
「ふ~ん……」
なるほどねぇ……。少しは期待していたのに、とんだ期待外れだったようだ。
私は頬杖をつき、2人が庭を去る迄黙って見つめていた――