政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
4-11 似た者同士
「ああ、ダンスタイムが始まったんだな」
「宜しいのですか? 私に張り付いていないで、サミュエル王子は主催者なのですから踊らないと……」
そこまで言いかけた時、アレックス王子とペアのドレスを着た謎の女性が踊っている姿が目に飛び込んできた。2人とも互いの目をじっと見つめながら踊り……まさに息ピッタリだった。
「……お似合いですねえ」
ポツリと呟く私にサミュエル王子が尋ねてきた。
「もしかして嫉妬してる?」
「は? 嫉妬? 誰が誰にですか?」
「いや……だから、アレックス王子とあの女性に対して……」
「何故私がアレックス王子に嫉妬しなくてはいけないのですか?大体サミュエル王子も私たちの結婚がどのようなものだったのかご存じだったのですよね?」
私がアレックス王子に嫉妬なんて常識的に考えてあり得ない。
「ああ、勿論知ってるよ。あれは本当に酷い話だったな。全く、君って言う人は凄いよ。あそこ迄されて逃げずに、今もここに立っているんだから。普通の女性だったらとっくに逃げ出しているだろうに。きっとアレックスはさぞかし……」
何故かそこでサミュエル王子は言葉を切る。
「あの、今一体何を言いかけたのですか?」
「いや……それよりもレベッカ王女。向こうに椅子があるんだ。ちょっとあっちで話をしないかい?」
「ええ~……いいんですか? この国の主催者の王子様ですよね?」
「王子って言っても俺は3番目だしな。跡を継げるわけでもない。俺の役目はここで司会を務める事なのさ。大体俺が直接招待状を送ったのはアレックスと……その妻である君だけだし」
意味深な目で見つめてくる。
「ですが……」
「その証拠に……ほら。誰1人俺の事を気にしていないだろう?」
言われてみれば、確かに大勢の招待客がいるのにもかかわらず、誰一人としてサミュエル王子を気に掛けるものはいない。その様子はまるで自分の姿と被ってしまう。
「……何だか似てますね」
思わず口からポロリと本音が出てしまった。
「似てる……? もしかして俺と自分自身の事を言ってるのかな?」
「私の事何か知ってるんですか?」
顔を上げてじっとサミュエル王子を見ると、彼は肩をすくめた。
「さぁどうかな? それより、どうせなら椅子に座って話をしよう」
「はい」
そして私はサミュエル王子に案内されて、パーティー会場の奥に設置された来賓席に2人並んで座った。
「レベッカ王女。君の国は確かオーランド王国だったよね?」
「ええ、よくご存じですね。それこそ吹けば飛ぶような小さな国なのに」
「確かにそうかもしれないが……でもあの国が何て呼ばれているか知らないのかい?」
「いえ……? 何て呼ばれているのですか?」
「『この世の楽園』って呼ばれていたんだけどね?」
「この世の楽園……」
知らなかった。そんな話、私は全くの初耳である。
「何故そんなふうに言われているのですか?」
「それはね、不思議な事にあの国だけは1年を通して常に穏やかな気候に恵まれている。大きな自然災害に見舞われることも無く、おまけにオーランド王国にある山々からは貴重な鉱石が採掘されるんだよ」
私は黙って話を聞いていた。ああ……そう言えばそうだったかもしれない。でもそれは……。
「でも知ってるかい? 最近あの国では異変が起こり始めている事を。そのせいで今、君もグランダ王国で微妙な立場に置かれているって事も」
「え? 私が……ですか……?」
サミュエル王子の言葉に首を傾げた――
「宜しいのですか? 私に張り付いていないで、サミュエル王子は主催者なのですから踊らないと……」
そこまで言いかけた時、アレックス王子とペアのドレスを着た謎の女性が踊っている姿が目に飛び込んできた。2人とも互いの目をじっと見つめながら踊り……まさに息ピッタリだった。
「……お似合いですねえ」
ポツリと呟く私にサミュエル王子が尋ねてきた。
「もしかして嫉妬してる?」
「は? 嫉妬? 誰が誰にですか?」
「いや……だから、アレックス王子とあの女性に対して……」
「何故私がアレックス王子に嫉妬しなくてはいけないのですか?大体サミュエル王子も私たちの結婚がどのようなものだったのかご存じだったのですよね?」
私がアレックス王子に嫉妬なんて常識的に考えてあり得ない。
「ああ、勿論知ってるよ。あれは本当に酷い話だったな。全く、君って言う人は凄いよ。あそこ迄されて逃げずに、今もここに立っているんだから。普通の女性だったらとっくに逃げ出しているだろうに。きっとアレックスはさぞかし……」
何故かそこでサミュエル王子は言葉を切る。
「あの、今一体何を言いかけたのですか?」
「いや……それよりもレベッカ王女。向こうに椅子があるんだ。ちょっとあっちで話をしないかい?」
「ええ~……いいんですか? この国の主催者の王子様ですよね?」
「王子って言っても俺は3番目だしな。跡を継げるわけでもない。俺の役目はここで司会を務める事なのさ。大体俺が直接招待状を送ったのはアレックスと……その妻である君だけだし」
意味深な目で見つめてくる。
「ですが……」
「その証拠に……ほら。誰1人俺の事を気にしていないだろう?」
言われてみれば、確かに大勢の招待客がいるのにもかかわらず、誰一人としてサミュエル王子を気に掛けるものはいない。その様子はまるで自分の姿と被ってしまう。
「……何だか似てますね」
思わず口からポロリと本音が出てしまった。
「似てる……? もしかして俺と自分自身の事を言ってるのかな?」
「私の事何か知ってるんですか?」
顔を上げてじっとサミュエル王子を見ると、彼は肩をすくめた。
「さぁどうかな? それより、どうせなら椅子に座って話をしよう」
「はい」
そして私はサミュエル王子に案内されて、パーティー会場の奥に設置された来賓席に2人並んで座った。
「レベッカ王女。君の国は確かオーランド王国だったよね?」
「ええ、よくご存じですね。それこそ吹けば飛ぶような小さな国なのに」
「確かにそうかもしれないが……でもあの国が何て呼ばれているか知らないのかい?」
「いえ……? 何て呼ばれているのですか?」
「『この世の楽園』って呼ばれていたんだけどね?」
「この世の楽園……」
知らなかった。そんな話、私は全くの初耳である。
「何故そんなふうに言われているのですか?」
「それはね、不思議な事にあの国だけは1年を通して常に穏やかな気候に恵まれている。大きな自然災害に見舞われることも無く、おまけにオーランド王国にある山々からは貴重な鉱石が採掘されるんだよ」
私は黙って話を聞いていた。ああ……そう言えばそうだったかもしれない。でもそれは……。
「でも知ってるかい? 最近あの国では異変が起こり始めている事を。そのせいで今、君もグランダ王国で微妙な立場に置かれているって事も」
「え? 私が……ですか……?」
サミュエル王子の言葉に首を傾げた――