政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
5-1 催眠暗示をかけてみた
ガラガラガラガラ……
走り続ける馬車の中……。
ぐぅ~……
あ、また私のお腹が鳴ってしまった。向かい側に座り、本を読んでいるアレックス王子をチラリと見ると、私のお腹の虫に気付いていない様子でこちらを見ようともしない。良かった……聞こえていないみたいだ。
しかし……。
「お前、さっきからグウグウと腹の鳴る音がうるさいぞ」
私の方を見もせずにアレックス王子は読書をしながら話しかけてきた。
「え……? ひょっとして、ひょっとすると……聞こえていたのですか!? 私のお腹の鳴る音が!」
「当り前だ。あいにく俺は難聴を患っているわけでは無いからな。大体こんな近くに座っていて、あれほど大きな腹の鳴る音に気付かないはずはないだろう?」
チラリとこちらを一瞥すると、アレックス王子は再び本に視線を落とした。
な、何て酷い……。私がお腹を空かせているのを知っていながら無視を続けていたなんて。かくなる上は……。
「あの、アレックス様」
「何だ?」
「目にゴミが入ってしまったみたいで……ちょっと見て頂けないでしょうか?」
目をこすりながら訴えた。
「全く……お前と言うやつは。女のくせに手鏡すら持っていないのか?」
アレックス王子は溜息をつくと、しおりを挟んで本を閉じると顔を近づけてきた。
「どっちの目だ?」
えっと……どっちにしよう……。
「ん? 何だ? 何か言ったか?」
「いえ、何も言ってません。右です。右でお願いします」
「右だな? どれどれ……」
アレックス王子は私の目をじっと見つめ……その茶色の目に私の顔が映し出される。よし、今だ!
「……」
全神経を集中させる。
「……別にゴミなんか入っていないみたいだが……?」
アレックス王子は何故か少し頬を赤く染めながら、私から顔を離し……。
ぐぅ~……
突然アレックス王子の腹の虫が鳴りだした。
「う……」
「おや? どうしましたか? アレックス様」
「い、いや……」
しかし、その直後またしても……。
ぐぅ~……
「おやぁ……ひょっとして……」
「な、何だっ!?」
「先程から何か鳴っていませんか?」
「……気のせいだろう?」
しかしその直後――
ぐうううううぅ~……
今までで一番大きな音でお腹の虫が鳴った。
「アレックス様……お腹空いたんですよね?」
しかし、横を向いて答えない。
「恥ずかしがることないじゃないですかぁ~。私だって先程からお腹が空いて鳴ってるんですから…」
「し、しかし……」
「まだ16時ですよ。夕食まで時間がありますから、ね? 何所かの村に滞在して何か美味しい物、食べて行きましょうよ?」
アレックス王子は絶対にお腹が空いているはずだ。何しろ先程、催眠暗示で王子の体内時計を10時間程進めたのだから。
「わ……分かった……。おい! お前っ!」
アレックス王子は馬車の窓から顔を出すと護衛の兵士に声をかけた。
「はい、何でしょうか? アレックス王子」
「この近くに村か町は無いか?」
「そうですね……恐らくあと5kほど先に確か小さな村があったはずですが……」
「そこに食堂はあるか?」
「ええ、多分……あると思いますけど?」
兵士は首をかしげる。
「よし、分った! では一旦、その村で馬車を止めろっ! 食事休憩にする」
「分りました!」
休みと聞いて兵士もうれしかったのか、笑みを浮かべて元気よく返事をした。
「ふん。言っておくがな、俺の為に村に寄るんじゃないぞ? お前が先程から腹を空かしているからだ。分ったな?」
「ええ、分ってますってば」
村に立ち寄って食べ物を食べられればどうでもいい。私は満面の笑みを浮かべて返事をした。
しかし後程。
この村に立ち寄ってしまったことで私はとんでもない事に巻き込まれてしまうのだった――
走り続ける馬車の中……。
ぐぅ~……
あ、また私のお腹が鳴ってしまった。向かい側に座り、本を読んでいるアレックス王子をチラリと見ると、私のお腹の虫に気付いていない様子でこちらを見ようともしない。良かった……聞こえていないみたいだ。
しかし……。
「お前、さっきからグウグウと腹の鳴る音がうるさいぞ」
私の方を見もせずにアレックス王子は読書をしながら話しかけてきた。
「え……? ひょっとして、ひょっとすると……聞こえていたのですか!? 私のお腹の鳴る音が!」
「当り前だ。あいにく俺は難聴を患っているわけでは無いからな。大体こんな近くに座っていて、あれほど大きな腹の鳴る音に気付かないはずはないだろう?」
チラリとこちらを一瞥すると、アレックス王子は再び本に視線を落とした。
な、何て酷い……。私がお腹を空かせているのを知っていながら無視を続けていたなんて。かくなる上は……。
「あの、アレックス様」
「何だ?」
「目にゴミが入ってしまったみたいで……ちょっと見て頂けないでしょうか?」
目をこすりながら訴えた。
「全く……お前と言うやつは。女のくせに手鏡すら持っていないのか?」
アレックス王子は溜息をつくと、しおりを挟んで本を閉じると顔を近づけてきた。
「どっちの目だ?」
えっと……どっちにしよう……。
「ん? 何だ? 何か言ったか?」
「いえ、何も言ってません。右です。右でお願いします」
「右だな? どれどれ……」
アレックス王子は私の目をじっと見つめ……その茶色の目に私の顔が映し出される。よし、今だ!
「……」
全神経を集中させる。
「……別にゴミなんか入っていないみたいだが……?」
アレックス王子は何故か少し頬を赤く染めながら、私から顔を離し……。
ぐぅ~……
突然アレックス王子の腹の虫が鳴りだした。
「う……」
「おや? どうしましたか? アレックス様」
「い、いや……」
しかし、その直後またしても……。
ぐぅ~……
「おやぁ……ひょっとして……」
「な、何だっ!?」
「先程から何か鳴っていませんか?」
「……気のせいだろう?」
しかしその直後――
ぐうううううぅ~……
今までで一番大きな音でお腹の虫が鳴った。
「アレックス様……お腹空いたんですよね?」
しかし、横を向いて答えない。
「恥ずかしがることないじゃないですかぁ~。私だって先程からお腹が空いて鳴ってるんですから…」
「し、しかし……」
「まだ16時ですよ。夕食まで時間がありますから、ね? 何所かの村に滞在して何か美味しい物、食べて行きましょうよ?」
アレックス王子は絶対にお腹が空いているはずだ。何しろ先程、催眠暗示で王子の体内時計を10時間程進めたのだから。
「わ……分かった……。おい! お前っ!」
アレックス王子は馬車の窓から顔を出すと護衛の兵士に声をかけた。
「はい、何でしょうか? アレックス王子」
「この近くに村か町は無いか?」
「そうですね……恐らくあと5kほど先に確か小さな村があったはずですが……」
「そこに食堂はあるか?」
「ええ、多分……あると思いますけど?」
兵士は首をかしげる。
「よし、分った! では一旦、その村で馬車を止めろっ! 食事休憩にする」
「分りました!」
休みと聞いて兵士もうれしかったのか、笑みを浮かべて元気よく返事をした。
「ふん。言っておくがな、俺の為に村に寄るんじゃないぞ? お前が先程から腹を空かしているからだ。分ったな?」
「ええ、分ってますってば」
村に立ち寄って食べ物を食べられればどうでもいい。私は満面の笑みを浮かべて返事をした。
しかし後程。
この村に立ち寄ってしまったことで私はとんでもない事に巻き込まれてしまうのだった――