政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
5-13 出発
翌朝――
宿屋の階下の食堂で私はアマゾナお手製の朝食を食べていた。その時。
ギシギシと音を鳴らしながらアレックス王子を先頭に護衛の兵士たちが一列になって階段を降りてきた。
「あ、おはようございます! アレックス様!」
美味しい朝食ですっかりご機嫌な私はアレックス王子に手をブンブン振りながら朝の挨拶をした。
「全くお前は朝から元気だな……と言うか俺は最悪な夢を見たせいで朝から非常に機嫌が悪い。だから俺に構うな、話しかけるな」
「はい、分りました」
素直に返事をする。良かった……完全に昨日の事を夢だと思ってくれている。でも既にこの村にやってきて丸二日が経過しているけれども。それについて違和感を感じていないだろうか? 護衛の兵士は何だか腑に落ちないといった様子で首を捻っている人たちも何人かいるようだけれども。
そこへスープのお代わりを持ってきたアマゾナが私に耳打ちした。
「お嬢ちゃん、あの男、またしても気にくわない台詞をお嬢ちゃんに言ったようだけど……殴ってきていいかい?」
何やら物騒な事を持ちかけて来る。
「いいえ、いいんですよ。あの方はああいう人なのですから。もう諦めました。なので私、開き直って愛情表現だと思う事にしたのです」
ほんとはそんな事微塵にも思っていないけれども、こうでもしてアマゾナを納得させないと今にも背後から襲いかねない雰囲気だったので止むを得ず心にも無い台詞を言ってしまった。
「フン……まあお嬢ちゃんがそう言うなら仕方ないけどね……」
アマゾナは不満そうだったが、すぐに商売用の笑みを浮かべると朝食の注文を聞くためにアレックス王子たちのテーブルへ向かっていく姿を食後のコーヒーを飲みながら私は見つめていた。
****
10時――
やがて朝食を食べ終えたアレックス王子たちが椅子から立ち上がると私に声をかけてきた。
「おい、食べ終わったのですぐに国へ帰るぞ。用意しろ」
「あ、それならもう大丈夫です。私の準備は既に終わっているので。荷物ももうここに持ってきてあります」
足元に置いたボストンバックを指さした。
「ほーう、お前にしては気が利いているようだな? 俺としては一刻も早くこんな薄汚い宿をさっさと出て、住み心地の良い我が国へと帰りたいのだ。では俺も準備をしてくる。お前はここで待っていろ」
「はい、分りました」
素直に返事をすると、アレックス王子は兵士たちを連れて再び階段を昇って行った。
「「……」」
私とアマゾナはその様子をじっと見ていると……。
「あ~っ! むしゃくしゃするっ! 何だい! あいつのあの態度はっ!」
アマゾナが鼻息を荒くして手に持っていたトレーを強く握りしめた。
「まあまあ……落ち着いて下さい、アマゾナさん。苛立つ気持ちは分りますけど、あの方はああいう言い方しか出来ない可哀想な人なのです。そんな事よりも感謝致します。アレックス王子の財産を奪わないで頂いて」
「そ、そんな事は当然じゃないか。だってお嬢ちゃんには鉱石を沢山見つけてもらったし……畑の作物も成長速度が速まったのだから」
「アマゾナさん……」
その時、再び階段をギシギシ言わせてアレックス王子が2階から降りてきた。
「よし! 準備が出来た。出発するぞ!」
アレックス王子は私に命じた。
「はい、分りました。では参りましょうか?」
足元のボストンバックを持つと私はアマゾナを振り返り、笑みを浮かべてた。
「どうも色々お世話になりました!」
アマゾナは笑って親指を立てて私にウィンクをしたのだった――
宿屋の階下の食堂で私はアマゾナお手製の朝食を食べていた。その時。
ギシギシと音を鳴らしながらアレックス王子を先頭に護衛の兵士たちが一列になって階段を降りてきた。
「あ、おはようございます! アレックス様!」
美味しい朝食ですっかりご機嫌な私はアレックス王子に手をブンブン振りながら朝の挨拶をした。
「全くお前は朝から元気だな……と言うか俺は最悪な夢を見たせいで朝から非常に機嫌が悪い。だから俺に構うな、話しかけるな」
「はい、分りました」
素直に返事をする。良かった……完全に昨日の事を夢だと思ってくれている。でも既にこの村にやってきて丸二日が経過しているけれども。それについて違和感を感じていないだろうか? 護衛の兵士は何だか腑に落ちないといった様子で首を捻っている人たちも何人かいるようだけれども。
そこへスープのお代わりを持ってきたアマゾナが私に耳打ちした。
「お嬢ちゃん、あの男、またしても気にくわない台詞をお嬢ちゃんに言ったようだけど……殴ってきていいかい?」
何やら物騒な事を持ちかけて来る。
「いいえ、いいんですよ。あの方はああいう人なのですから。もう諦めました。なので私、開き直って愛情表現だと思う事にしたのです」
ほんとはそんな事微塵にも思っていないけれども、こうでもしてアマゾナを納得させないと今にも背後から襲いかねない雰囲気だったので止むを得ず心にも無い台詞を言ってしまった。
「フン……まあお嬢ちゃんがそう言うなら仕方ないけどね……」
アマゾナは不満そうだったが、すぐに商売用の笑みを浮かべると朝食の注文を聞くためにアレックス王子たちのテーブルへ向かっていく姿を食後のコーヒーを飲みながら私は見つめていた。
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10時――
やがて朝食を食べ終えたアレックス王子たちが椅子から立ち上がると私に声をかけてきた。
「おい、食べ終わったのですぐに国へ帰るぞ。用意しろ」
「あ、それならもう大丈夫です。私の準備は既に終わっているので。荷物ももうここに持ってきてあります」
足元に置いたボストンバックを指さした。
「ほーう、お前にしては気が利いているようだな? 俺としては一刻も早くこんな薄汚い宿をさっさと出て、住み心地の良い我が国へと帰りたいのだ。では俺も準備をしてくる。お前はここで待っていろ」
「はい、分りました」
素直に返事をすると、アレックス王子は兵士たちを連れて再び階段を昇って行った。
「「……」」
私とアマゾナはその様子をじっと見ていると……。
「あ~っ! むしゃくしゃするっ! 何だい! あいつのあの態度はっ!」
アマゾナが鼻息を荒くして手に持っていたトレーを強く握りしめた。
「まあまあ……落ち着いて下さい、アマゾナさん。苛立つ気持ちは分りますけど、あの方はああいう言い方しか出来ない可哀想な人なのです。そんな事よりも感謝致します。アレックス王子の財産を奪わないで頂いて」
「そ、そんな事は当然じゃないか。だってお嬢ちゃんには鉱石を沢山見つけてもらったし……畑の作物も成長速度が速まったのだから」
「アマゾナさん……」
その時、再び階段をギシギシ言わせてアレックス王子が2階から降りてきた。
「よし! 準備が出来た。出発するぞ!」
アレックス王子は私に命じた。
「はい、分りました。では参りましょうか?」
足元のボストンバックを持つと私はアマゾナを振り返り、笑みを浮かべてた。
「どうも色々お世話になりました!」
アマゾナは笑って親指を立てて私にウィンクをしたのだった――