政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
1-8 部屋が無い!
――バタン
ドアを後ろ手に閉めると、すぐに部屋の外で待っていたミラージュが私の傍に駆け寄って来た。
「レベッカ様、アレックス王子様とのお話し合いはいかがでしたか?」
「ええ、そうね。何か明日の式の為にサプライズを用意して下さっているみたいなのよ」
「まあ。その話は本当なのですか? それは楽しみですねぇ」
ミラージュが笑みを浮かべるのを見て、何故か爺やさんはギョッとした顔で私に尋ねてきた。
「あ、あの……レベッカ様。坊ちゃま…もとい、アレックス王子は式の為にレベッカ様にサプライズを用意したとおっしゃられていたのですか?」
「ええ、そうですね、『明日の結婚式、とんでもない事になるぞ』とおっしゃっていました。これは期待できそうだと思いませんか? 結婚式が今からとても楽しみです。それで明日の式の為に早く休んでおきたいのでお部屋の案内をお願い出来ますか?」
するろ爺やさんは何故か気まずそうな顔をして俯いてしまった。
「あの? どうかしたのですか?」
ミラージュが爺やさんに尋ねると、彼は慌てた様に顔を上げた。
「い、いえ!何でもございませんっ!で、ではお部屋にご案内致しますね」
爺やさんは私たちの前に立つと、再び歩き始めた――
****
「どうぞ。こちらのお部屋をご用意致しましたので、ご自由にお使いください」
何故かビクビクしながら爺やさんは部屋のドアノブに手を掛けた。
カチャリ
ドアが開かれ、私の目の前にこれからお世話になる部屋が現れた。
その部屋は白とクリーム色を基調とした色で構成されていた。落ち着いた雰囲気の部屋はアーチ形の掃き出し窓から太陽がさんさんと降り注いでいた。窓の外は森の美しい景色が広がっている。
「まあ、とても素敵な部屋ですねぇ……」
私は次に部屋に置かれたベッドに視線を移した。そのベッドは天蓋付きで、クリーム色のカーテンがつるされている。床にも白いカーペットが敷かれ、落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「今日からここが私のお部屋になるのね。気に入ったわ」
私はうっとりした目つきで部屋を眺めるが、ミラージュは何所か不服そうだった。
「そうでしょうか? 確かに素敵なお部屋かもしれませんが……。な~んか腑に落ちないんですよね……。本当にこのお部屋はレベッカ様の為に用意されたお部屋なのですか?」
そして爺やさんを見る。
「ギクッ!!」
爺やさんは余程動揺しているのか、自分の動揺する様を言葉で表現した。
「あら? どういう事なのミラージュ」
「ええ。私にはこの部屋は不自然だらけにしか見えません。仮にもレベッカ様はこの国の王子様と結婚されるお方。それなのに、このお部屋……あまりにも狭すぎます。これだけの規模の大きさならもっと広いお部屋を用意されて然るべきです。おまけにこの部屋のイメージカラーが問題ありです! 男女問わず、広く使用できる白にクリーム色のカラーは、とてもレベッカ様用のお部屋とは思えません。それにドレッサーも無ければ大型クローゼットすらないじゃないですか! 挙句にその割には不自然に数の多いソファセット……」
言われてみると部屋には大きな長椅子のソファが6台も用意されているし、長テーブルも2台置かれている。
「確かにミラージュの言う通り不自然に見えない事も無いけれど……。ですが爺やさん。本当のところはどうなのでしょう? 正直に答えて頂けますか?」
チラリと爺やさんを見ると、彼はいきなり床に座り込むと土下座をしてきた。
「は、はいっ! じ、侍女様の言う通りでございます……っ! 素晴らしい、実に見事な推理力です!」
何故かミラージュの推理力をほめちぎる。するとミラージュはイライラした様子で爺やさんに怒鳴った。
「ふざけないで下さい! いいですか? 私は推理ごっこをしているわけではありませんよ! 早くレベッカ様の質問に答えて下さい!」
「も、申し訳ございません! じ、実はレベッカ様のお部屋は用意してありません! 坊ちゃまが言ったのです。きっと泣いてその日のうちに国へ帰るはずだから、あの女の部屋は用意しなくてよいと! で、ですがレベッカ様はこちらの予想を超えておりました! 遙か斜め上をいっておられるお方でした! どうかお許しください! 明日には必ずお部屋をご用意いたしますので、今夜はこの客室でお許し下さい!」
爺やさんは何度も何度も床に頭を擦りつけて謝罪の言葉を述べてくる。
「何ですって……! やはりアレックス王子は始めからレベッカ様を受け入れるつもりは無かったって事ですね!? これは明らかな侮辱です! 私、アレックス王子に決闘を申し込んできます!」
ミラージュは吐き捨てるように言うと、部屋を出て行きそうになり……私と爺やさんはミラージュを思いとどまらせる為に小1時間も時間を費やしてしまった――
ドアを後ろ手に閉めると、すぐに部屋の外で待っていたミラージュが私の傍に駆け寄って来た。
「レベッカ様、アレックス王子様とのお話し合いはいかがでしたか?」
「ええ、そうね。何か明日の式の為にサプライズを用意して下さっているみたいなのよ」
「まあ。その話は本当なのですか? それは楽しみですねぇ」
ミラージュが笑みを浮かべるのを見て、何故か爺やさんはギョッとした顔で私に尋ねてきた。
「あ、あの……レベッカ様。坊ちゃま…もとい、アレックス王子は式の為にレベッカ様にサプライズを用意したとおっしゃられていたのですか?」
「ええ、そうですね、『明日の結婚式、とんでもない事になるぞ』とおっしゃっていました。これは期待できそうだと思いませんか? 結婚式が今からとても楽しみです。それで明日の式の為に早く休んでおきたいのでお部屋の案内をお願い出来ますか?」
するろ爺やさんは何故か気まずそうな顔をして俯いてしまった。
「あの? どうかしたのですか?」
ミラージュが爺やさんに尋ねると、彼は慌てた様に顔を上げた。
「い、いえ!何でもございませんっ!で、ではお部屋にご案内致しますね」
爺やさんは私たちの前に立つと、再び歩き始めた――
****
「どうぞ。こちらのお部屋をご用意致しましたので、ご自由にお使いください」
何故かビクビクしながら爺やさんは部屋のドアノブに手を掛けた。
カチャリ
ドアが開かれ、私の目の前にこれからお世話になる部屋が現れた。
その部屋は白とクリーム色を基調とした色で構成されていた。落ち着いた雰囲気の部屋はアーチ形の掃き出し窓から太陽がさんさんと降り注いでいた。窓の外は森の美しい景色が広がっている。
「まあ、とても素敵な部屋ですねぇ……」
私は次に部屋に置かれたベッドに視線を移した。そのベッドは天蓋付きで、クリーム色のカーテンがつるされている。床にも白いカーペットが敷かれ、落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「今日からここが私のお部屋になるのね。気に入ったわ」
私はうっとりした目つきで部屋を眺めるが、ミラージュは何所か不服そうだった。
「そうでしょうか? 確かに素敵なお部屋かもしれませんが……。な~んか腑に落ちないんですよね……。本当にこのお部屋はレベッカ様の為に用意されたお部屋なのですか?」
そして爺やさんを見る。
「ギクッ!!」
爺やさんは余程動揺しているのか、自分の動揺する様を言葉で表現した。
「あら? どういう事なのミラージュ」
「ええ。私にはこの部屋は不自然だらけにしか見えません。仮にもレベッカ様はこの国の王子様と結婚されるお方。それなのに、このお部屋……あまりにも狭すぎます。これだけの規模の大きさならもっと広いお部屋を用意されて然るべきです。おまけにこの部屋のイメージカラーが問題ありです! 男女問わず、広く使用できる白にクリーム色のカラーは、とてもレベッカ様用のお部屋とは思えません。それにドレッサーも無ければ大型クローゼットすらないじゃないですか! 挙句にその割には不自然に数の多いソファセット……」
言われてみると部屋には大きな長椅子のソファが6台も用意されているし、長テーブルも2台置かれている。
「確かにミラージュの言う通り不自然に見えない事も無いけれど……。ですが爺やさん。本当のところはどうなのでしょう? 正直に答えて頂けますか?」
チラリと爺やさんを見ると、彼はいきなり床に座り込むと土下座をしてきた。
「は、はいっ! じ、侍女様の言う通りでございます……っ! 素晴らしい、実に見事な推理力です!」
何故かミラージュの推理力をほめちぎる。するとミラージュはイライラした様子で爺やさんに怒鳴った。
「ふざけないで下さい! いいですか? 私は推理ごっこをしているわけではありませんよ! 早くレベッカ様の質問に答えて下さい!」
「も、申し訳ございません! じ、実はレベッカ様のお部屋は用意してありません! 坊ちゃまが言ったのです。きっと泣いてその日のうちに国へ帰るはずだから、あの女の部屋は用意しなくてよいと! で、ですがレベッカ様はこちらの予想を超えておりました! 遙か斜め上をいっておられるお方でした! どうかお許しください! 明日には必ずお部屋をご用意いたしますので、今夜はこの客室でお許し下さい!」
爺やさんは何度も何度も床に頭を擦りつけて謝罪の言葉を述べてくる。
「何ですって……! やはりアレックス王子は始めからレベッカ様を受け入れるつもりは無かったって事ですね!? これは明らかな侮辱です! 私、アレックス王子に決闘を申し込んできます!」
ミラージュは吐き捨てるように言うと、部屋を出て行きそうになり……私と爺やさんはミラージュを思いとどまらせる為に小1時間も時間を費やしてしまった――