政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
5-15 私はどうでもよい存在、と王子は言った
ガラガラガラガラ……
揺れる車内の中、私は馬車の中で寝こけているアレックス王子を揺すぶった。
「アレックス様、起きて下さい。もうすぐ到着しますよ」
「う……うう~ん……」
眠そうに目をこすりながらアレックス王子は目を覚ました。
「なんだぁ……? 昼休憩でもするのか?」
フワアアア~と伸びをしながら大あくびをするアレックス王子。全く……あのような姿を平気で人の前でさらけ出して、あれで高貴な血筋だと言えるのだろうか?
「何だ? お前のその冷めた視線は。まさかこれ位の事で高貴な血筋だと言えるのか? なんて思っていないだろうな?」
「ええっ!? ま、まさにその通りですっ! すごいじゃないですか! まさか人の心を読む能力でもあるのですかっ!?」
信じられない、びっくりだ。まさか私の血筋以外にも特殊能力を持つ人間がいたなんて。
「フフン。何、これ位の事容易に想像がつく……って、何!? お、お前、本当にそんな事を考えていたのか!? 相変わらず失敬な奴だな!」
「ええ~だってご自分で今の台詞を言ったくせに……と言うか、他の女性たちの前でも今のような姿をさらけ出しているわけですか? だらしなく大口を開けて、伸びをする姿を……」
「おい、ちょっと待て。何だ? その話は。俺に対する嫌味か?」
ジロリと睨み付けるアレックス王子。
「いえいえ……嫌味だなんてとんでも無い。ただ、私は他の女性たちの前でもそんな姿を見せれば幻滅されるのではないかと思って尋ねただけですってば」
「ふふん。そんな事なら心配ご無用だ。他の女性たちの前ではそのような姿は決して見せないからな。お前にだけだ。先程のような態度を取るのは。……って何だ? その嬉しそうな顔は?」
眉をしかめて私を見る。
「あ、いえいえ。つまりそれは私はアレックス様にとって、特別な存在って事ですよね? 私にならどんな姿でもさらけ出せると言う……」
やっとアレックス王子は私という存在を認めてくれたのかと思うと嬉しくなった。
ところが。
「は? 何勝手に自分の都合の良いように解釈してるのだ? 何故、お前の前でだけ大あくびが出来るか分かるか? つまり、お前は俺に取って、どうでもいい存在って事なんだよ。そこにいようがいまいが、関係無い。ゆえに、お前にどう思われても気にする必要も無いって事なんだよ」
「ええ~そうなんですか? でも、以前にも言いましたけど、私には色々と親切にしておいた方が何かとお得ですよ?」
何故なら私の力は相手が私の事を思ってくれればくれる程に増幅されていくからだ。しかし、はっきり言って今の状態ではアレックス王子は私の中で完璧にマイナス要因の存在でしかない。あのオーランド王国での惨めな暮らしから私を救ってくれた王子様だと思っていたのに。アレックス王子は私にとっての救世主では無かったということなのだろうか?
「ところでここは何処なんだ? それに今気づいたが、どうしてこんなに外が暗いんだ?」
アレックス王子はガラガラと走り続けている馬車の中から顔を覗かせ……。
「な、何だーっ!? 一体っ!」
大きな声で喚いた。
「お、おい……あれは……?」
アレックス王子は震えながら前方に見えてきた城を指さす。
「はい、グランダ王国のお城ですけど? もうすぐ到着するので起きていただきました」
「おいっ! た、確か行く時だって半日位かかったんだぞ? 一体今何時なんだ!?」
「今ですか? もうすぐ22時になりますけど?」
「な、何ぃっ!? に……22時だとっ!? 我々の昼食はどうした? 夕食はっ!?」
騒ぎ立てるアレックス王子。全く……これ程までにうるさくなければ、私だって到着するまで寝かせる必要は無かったのに。ちなみに私と護衛兵士たちは、アレックス王子が眠っている間にちゃんと昼の食事と夜の食事は休憩先の町でいただいている。
「いいですか? アレックス様」
私はアレックス王子の瞳を覗き込んだ。
「私たちは……ちゃんと昼も夜のお食事もいただいています! いいですねっ!?」
「あ……ああ……そうだった……。俺たちは……昼も夜も食事をしていたな……」
まるでうわ言のように呟くアレックス王子。その目は完全に暗示にかかっている。
きっとお腹の中は空いてるはずだろうけど……。
食べ物の恨みは怖いのである。
私はまだ腑に落ちない様子で首をひねるアレックス王子をチラリと見ると馬車の窓を開けて顔を覗かせた。
そこには無数の松明によって明るく照らされたグランダ王国の城が幻想的に浮かび上がっている。
私はその美しい城を見つめながら、そっと呟いた。
「ただいま。ミラージュ」
と――
揺れる車内の中、私は馬車の中で寝こけているアレックス王子を揺すぶった。
「アレックス様、起きて下さい。もうすぐ到着しますよ」
「う……うう~ん……」
眠そうに目をこすりながらアレックス王子は目を覚ました。
「なんだぁ……? 昼休憩でもするのか?」
フワアアア~と伸びをしながら大あくびをするアレックス王子。全く……あのような姿を平気で人の前でさらけ出して、あれで高貴な血筋だと言えるのだろうか?
「何だ? お前のその冷めた視線は。まさかこれ位の事で高貴な血筋だと言えるのか? なんて思っていないだろうな?」
「ええっ!? ま、まさにその通りですっ! すごいじゃないですか! まさか人の心を読む能力でもあるのですかっ!?」
信じられない、びっくりだ。まさか私の血筋以外にも特殊能力を持つ人間がいたなんて。
「フフン。何、これ位の事容易に想像がつく……って、何!? お、お前、本当にそんな事を考えていたのか!? 相変わらず失敬な奴だな!」
「ええ~だってご自分で今の台詞を言ったくせに……と言うか、他の女性たちの前でも今のような姿をさらけ出しているわけですか? だらしなく大口を開けて、伸びをする姿を……」
「おい、ちょっと待て。何だ? その話は。俺に対する嫌味か?」
ジロリと睨み付けるアレックス王子。
「いえいえ……嫌味だなんてとんでも無い。ただ、私は他の女性たちの前でもそんな姿を見せれば幻滅されるのではないかと思って尋ねただけですってば」
「ふふん。そんな事なら心配ご無用だ。他の女性たちの前ではそのような姿は決して見せないからな。お前にだけだ。先程のような態度を取るのは。……って何だ? その嬉しそうな顔は?」
眉をしかめて私を見る。
「あ、いえいえ。つまりそれは私はアレックス様にとって、特別な存在って事ですよね? 私にならどんな姿でもさらけ出せると言う……」
やっとアレックス王子は私という存在を認めてくれたのかと思うと嬉しくなった。
ところが。
「は? 何勝手に自分の都合の良いように解釈してるのだ? 何故、お前の前でだけ大あくびが出来るか分かるか? つまり、お前は俺に取って、どうでもいい存在って事なんだよ。そこにいようがいまいが、関係無い。ゆえに、お前にどう思われても気にする必要も無いって事なんだよ」
「ええ~そうなんですか? でも、以前にも言いましたけど、私には色々と親切にしておいた方が何かとお得ですよ?」
何故なら私の力は相手が私の事を思ってくれればくれる程に増幅されていくからだ。しかし、はっきり言って今の状態ではアレックス王子は私の中で完璧にマイナス要因の存在でしかない。あのオーランド王国での惨めな暮らしから私を救ってくれた王子様だと思っていたのに。アレックス王子は私にとっての救世主では無かったということなのだろうか?
「ところでここは何処なんだ? それに今気づいたが、どうしてこんなに外が暗いんだ?」
アレックス王子はガラガラと走り続けている馬車の中から顔を覗かせ……。
「な、何だーっ!? 一体っ!」
大きな声で喚いた。
「お、おい……あれは……?」
アレックス王子は震えながら前方に見えてきた城を指さす。
「はい、グランダ王国のお城ですけど? もうすぐ到着するので起きていただきました」
「おいっ! た、確か行く時だって半日位かかったんだぞ? 一体今何時なんだ!?」
「今ですか? もうすぐ22時になりますけど?」
「な、何ぃっ!? に……22時だとっ!? 我々の昼食はどうした? 夕食はっ!?」
騒ぎ立てるアレックス王子。全く……これ程までにうるさくなければ、私だって到着するまで寝かせる必要は無かったのに。ちなみに私と護衛兵士たちは、アレックス王子が眠っている間にちゃんと昼の食事と夜の食事は休憩先の町でいただいている。
「いいですか? アレックス様」
私はアレックス王子の瞳を覗き込んだ。
「私たちは……ちゃんと昼も夜のお食事もいただいています! いいですねっ!?」
「あ……ああ……そうだった……。俺たちは……昼も夜も食事をしていたな……」
まるでうわ言のように呟くアレックス王子。その目は完全に暗示にかかっている。
きっとお腹の中は空いてるはずだろうけど……。
食べ物の恨みは怖いのである。
私はまだ腑に落ちない様子で首をひねるアレックス王子をチラリと見ると馬車の窓を開けて顔を覗かせた。
そこには無数の松明によって明るく照らされたグランダ王国の城が幻想的に浮かび上がっている。
私はその美しい城を見つめながら、そっと呟いた。
「ただいま。ミラージュ」
と――