政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
6-16 王子は私を魔女と呼ぶ
バチッ!!
私の身体から飛び散った火花がアレックス王子の足元にまで飛んで行き、激しい音と共に爆ぜた。それを見た王子の顔に恐怖が宿る。
「ヒッ! お、お前……さ、さては魔女だったのかっ!? 今まで間抜けなふりをしてこの俺を騙して好き勝手していたのか? も、もしや最初からこの国を乗っ取るつもりでオーランド国からやってきたな!? そうか……分かったぞ。お前はあの国に災いをもたらす魔女だったのか……。それで親から見捨てられ、王族の受けるべき教育を一切受けさせて貰えなかったのだな? 一体この国で今度は何を企んでいるっ! だがな……いいか、よく聞け! 俺が何も知らないとでも思っているなら大間違いだぞっ!? 俺は知っているんだぞっ! お前が大臣たちを買収して懐柔したと言う事をなっ!」
アレックス王子が怯えた目で私を見ながら物凄い剣幕でまくしたてる。全く相変わらずうるさい口だ。やはりすこし黙っていてもらおう。
「お黙り下さい」
「ヒグッ!」
再びアレックス王子の口を閉じさせた。
「好き勝手してきたのは私ではなく、むしろ貴方の方ではありませんか? 遠くから嫁いでくる私に迎えも寄越さず、私たちの結婚式にも不参加、おまけに年がら年中発情して次から次へと色々な女性を床に連れ込んでいる。これを好き勝手と言わず、何と言うのでしょう? それに私がその気になればこの国などあっという間に乗っ取ること等造作も無いのですよ?」
尤もそんな気は一切無いけれど。
私は冷ややかな目でアレックス王子を見た。既にこの部屋は私の感情に触発され、冷たい冷気に覆われている。部屋の中だと言うのに、冷たい風が吹きすさび、寒さの為か、はたまた恐怖の為か。アレックス王子は白い息を吐きながら小刻みに身体を震わせて私を見ている。
「とにかく、今すぐにミラージュを連れ戻して下さい。後……私が部屋から出た後は今までこの部屋で起きた出来事は全て忘れる事。これでも私は一応アレックス様の妻ですから今回だけは愚行に目をつぶってあげましょう。でも次はもうないですからね?」
誰かに私の力をばらされないように、そこだけは釘を刺しておいた。
――バタン
「う~ん……」
扉を閉じると、私は大きく伸びをした。
「ふう~……」
良かった…危ないところだった。けれど何とか最後まで理性を失わずに済んだ。アレックス王子には深層心理に私への畏怖心を植え付けておいたから、よほどの馬鹿では無い限り、今後は私に対して横柄な態度を取ることは無いだろう。それにしてもアレックス王子ごときに無駄な力を使ってしまった。
「お腹空いたわ……。ランス王子の果樹園に行って来ましょう」
そして美味しいフルーツを心置きなく食べてこよう。私はウキウキしながら果樹園へと向かった――
****
「う~ん美味しい!」
ランス王子が私とミラージュの為に用意してくれた果樹園の傍に建てられた木製ガゼボの中で、もぎたてのブドウを食べていた時の事だった。
「やあ、レベッカ。やっぱりここにいたんだね?」
ニコニコしながら現れたのはランス王子だった。
「あ、こんにちは。ランス王子」
立ち上がって挨拶をした。
「レベッカ、今日はね……何と君にお客様が来ているんだよ?」
「え? 私にお客様ですか?」
はて…一体誰だろう? 私には親しい知り合いなどほとんどいないのに。
すると――
「やあ、レベッカ。元気にしていたかい?」
聞き覚えのある声と共に、現れたのはサミュエル王子だった――
私の身体から飛び散った火花がアレックス王子の足元にまで飛んで行き、激しい音と共に爆ぜた。それを見た王子の顔に恐怖が宿る。
「ヒッ! お、お前……さ、さては魔女だったのかっ!? 今まで間抜けなふりをしてこの俺を騙して好き勝手していたのか? も、もしや最初からこの国を乗っ取るつもりでオーランド国からやってきたな!? そうか……分かったぞ。お前はあの国に災いをもたらす魔女だったのか……。それで親から見捨てられ、王族の受けるべき教育を一切受けさせて貰えなかったのだな? 一体この国で今度は何を企んでいるっ! だがな……いいか、よく聞け! 俺が何も知らないとでも思っているなら大間違いだぞっ!? 俺は知っているんだぞっ! お前が大臣たちを買収して懐柔したと言う事をなっ!」
アレックス王子が怯えた目で私を見ながら物凄い剣幕でまくしたてる。全く相変わらずうるさい口だ。やはりすこし黙っていてもらおう。
「お黙り下さい」
「ヒグッ!」
再びアレックス王子の口を閉じさせた。
「好き勝手してきたのは私ではなく、むしろ貴方の方ではありませんか? 遠くから嫁いでくる私に迎えも寄越さず、私たちの結婚式にも不参加、おまけに年がら年中発情して次から次へと色々な女性を床に連れ込んでいる。これを好き勝手と言わず、何と言うのでしょう? それに私がその気になればこの国などあっという間に乗っ取ること等造作も無いのですよ?」
尤もそんな気は一切無いけれど。
私は冷ややかな目でアレックス王子を見た。既にこの部屋は私の感情に触発され、冷たい冷気に覆われている。部屋の中だと言うのに、冷たい風が吹きすさび、寒さの為か、はたまた恐怖の為か。アレックス王子は白い息を吐きながら小刻みに身体を震わせて私を見ている。
「とにかく、今すぐにミラージュを連れ戻して下さい。後……私が部屋から出た後は今までこの部屋で起きた出来事は全て忘れる事。これでも私は一応アレックス様の妻ですから今回だけは愚行に目をつぶってあげましょう。でも次はもうないですからね?」
誰かに私の力をばらされないように、そこだけは釘を刺しておいた。
――バタン
「う~ん……」
扉を閉じると、私は大きく伸びをした。
「ふう~……」
良かった…危ないところだった。けれど何とか最後まで理性を失わずに済んだ。アレックス王子には深層心理に私への畏怖心を植え付けておいたから、よほどの馬鹿では無い限り、今後は私に対して横柄な態度を取ることは無いだろう。それにしてもアレックス王子ごときに無駄な力を使ってしまった。
「お腹空いたわ……。ランス王子の果樹園に行って来ましょう」
そして美味しいフルーツを心置きなく食べてこよう。私はウキウキしながら果樹園へと向かった――
****
「う~ん美味しい!」
ランス王子が私とミラージュの為に用意してくれた果樹園の傍に建てられた木製ガゼボの中で、もぎたてのブドウを食べていた時の事だった。
「やあ、レベッカ。やっぱりここにいたんだね?」
ニコニコしながら現れたのはランス王子だった。
「あ、こんにちは。ランス王子」
立ち上がって挨拶をした。
「レベッカ、今日はね……何と君にお客様が来ているんだよ?」
「え? 私にお客様ですか?」
はて…一体誰だろう? 私には親しい知り合いなどほとんどいないのに。
すると――
「やあ、レベッカ。元気にしていたかい?」
聞き覚えのある声と共に、現れたのはサミュエル王子だった――