身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
1-11 見つからない花嫁
使者達が城を去って10日程が過ぎた夕刻の出来事だった。
早馬に乗った2人の騎士が城に戻って来たと言う知らせを受けたシュミットが厩舎に駆けつけて来た。
「どうだ? 2人共、それらしき馬車は見つかったか?」
シュミットは厩舎に到着するなり、早々に2人の騎士に尋ねた。
「いいえ……ここから3つ先の宿場町まで足を延ばしましたが、見つかりませんでした」
「宿場町を通り抜けた馬車は全て辻馬車や荷馬車のような粗末な馬車ばかりだったと言う事です。大体あの周辺を貴族の馬車が通ればすぐに分るはずですしね」
騎士達は残念そうに首を振って返事をする。
「そうか……。しかし、あの宿場町はここ『アイデン』に来るのに避けては通れないはずなのに、一体どういうことなのだろう?」
シュミットは気が気でならなかった。
するとそこへ騎士団長のスティーブが話を聞きつけ、やってきた。
「ご苦労だったな、お前たち」
「あ! 団長!」
「お疲れ様ですっ!」
2人の騎士は交互に頭を下げた。
「10日もかけて様子を見に行ってくれて感謝する。明日は休暇を与えよう。ゆっくり休んでくれ」
スティーブは笑みを浮かべて2人の騎士に声をかけた。
「あ、ああ。そうだったな。ありがとう、2人共」
焦りのあまり、騎士たちに労いの言葉を掛けるのを忘れていたシュミットも慌てて声をかけた。
「いいえ、お役に立てず申し訳ございませんでした」
「それでは失礼致します」
2人の騎士は頭を下げると厩舎から出て行った。
「困った事になった……まさか盗賊にでも襲われて連れ去られたのでは……」
スティーブと2人きりになるとシュミットは溜息をついて、髪をかき上げた。本当はさらにその先の事を考えたが恐ろしくて口に出す事も出来なかった。
「まぁ、落ち着けって。あの宿場町一帯はのんびりした田舎町で、今まで一度たりとも盗賊の被害など出たことがないじゃないか。あの辺は平和な地域だぞ。それに俺達の指導の元で作り上げた自警団だっているじゃないか」
「本当にお前は能天気だな……」
シュミットは呆れたようにスティーブを見た。けれど、言われてみればスティーブの言う事は尤もである。アイゼンシュタット領地は敵の侵攻を食い止める為の砦のような場所。そこで各宿場町に自警団を作り、いざとなった場合は町を守れるように組織を作りあげたのである。
「なぁ、こうは考えられないか ?この領地に辿り着く為にわざと貧しい馬車を使って目立たないようにこの城を目指しているというふうには」
「確かにそれは方法としては良い手段だが……果たして貴族令嬢がそんな貧しい馬車を使って、ここまでやって来るだろうか?」
シュミットは腕組みしながら首をひねった。
「また別の者達を使いに出すから、そんなに気に病むなって。あんまり挙動不審な行動を取っているとエルウィン様に怪しまれるぞ?」
スティーブがシュミットの肩をポンポンと叩きながら笑った。
「うむ……そうだな……頼んだぞ。スティーブ」
「ああ、任せておけって」
しかし、その後も令嬢を乗せた馬車の情報はつかめずにいた。
さらに10日後、1台の荷馬車がアイゼンシュタット城に到着する事になる――
早馬に乗った2人の騎士が城に戻って来たと言う知らせを受けたシュミットが厩舎に駆けつけて来た。
「どうだ? 2人共、それらしき馬車は見つかったか?」
シュミットは厩舎に到着するなり、早々に2人の騎士に尋ねた。
「いいえ……ここから3つ先の宿場町まで足を延ばしましたが、見つかりませんでした」
「宿場町を通り抜けた馬車は全て辻馬車や荷馬車のような粗末な馬車ばかりだったと言う事です。大体あの周辺を貴族の馬車が通ればすぐに分るはずですしね」
騎士達は残念そうに首を振って返事をする。
「そうか……。しかし、あの宿場町はここ『アイデン』に来るのに避けては通れないはずなのに、一体どういうことなのだろう?」
シュミットは気が気でならなかった。
するとそこへ騎士団長のスティーブが話を聞きつけ、やってきた。
「ご苦労だったな、お前たち」
「あ! 団長!」
「お疲れ様ですっ!」
2人の騎士は交互に頭を下げた。
「10日もかけて様子を見に行ってくれて感謝する。明日は休暇を与えよう。ゆっくり休んでくれ」
スティーブは笑みを浮かべて2人の騎士に声をかけた。
「あ、ああ。そうだったな。ありがとう、2人共」
焦りのあまり、騎士たちに労いの言葉を掛けるのを忘れていたシュミットも慌てて声をかけた。
「いいえ、お役に立てず申し訳ございませんでした」
「それでは失礼致します」
2人の騎士は頭を下げると厩舎から出て行った。
「困った事になった……まさか盗賊にでも襲われて連れ去られたのでは……」
スティーブと2人きりになるとシュミットは溜息をついて、髪をかき上げた。本当はさらにその先の事を考えたが恐ろしくて口に出す事も出来なかった。
「まぁ、落ち着けって。あの宿場町一帯はのんびりした田舎町で、今まで一度たりとも盗賊の被害など出たことがないじゃないか。あの辺は平和な地域だぞ。それに俺達の指導の元で作り上げた自警団だっているじゃないか」
「本当にお前は能天気だな……」
シュミットは呆れたようにスティーブを見た。けれど、言われてみればスティーブの言う事は尤もである。アイゼンシュタット領地は敵の侵攻を食い止める為の砦のような場所。そこで各宿場町に自警団を作り、いざとなった場合は町を守れるように組織を作りあげたのである。
「なぁ、こうは考えられないか ?この領地に辿り着く為にわざと貧しい馬車を使って目立たないようにこの城を目指しているというふうには」
「確かにそれは方法としては良い手段だが……果たして貴族令嬢がそんな貧しい馬車を使って、ここまでやって来るだろうか?」
シュミットは腕組みしながら首をひねった。
「また別の者達を使いに出すから、そんなに気に病むなって。あんまり挙動不審な行動を取っているとエルウィン様に怪しまれるぞ?」
スティーブがシュミットの肩をポンポンと叩きながら笑った。
「うむ……そうだな……頼んだぞ。スティーブ」
「ああ、任せておけって」
しかし、その後も令嬢を乗せた馬車の情報はつかめずにいた。
さらに10日後、1台の荷馬車がアイゼンシュタット城に到着する事になる――