身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
8−1 訪問者
その日の夜のことだった。
エルウィンがシュミットとスティーブを招き、ダイニングルームで夕食後のお茶を飲んでいた。
幼馴染である3人は互いの子供時代の話で盛り上がっている。
「それにしても大将は子供の時から勉強が嫌いでしたよね」
スティーブが笑いながらコーヒーを口に入れた。
「うるさい、お前だって人の事が言えるか? いつも俺と一緒に勉強時間に抜け出していただろう?」
エルウィンはムスッとした表情でエスプレッソを飲んでいる。
「全くその通りですよ。それで探しに行かされていた私の身にもなっていただきたいものです」
紅茶を飲むのはシュミット。
「俺は机に向かっているより、身体を動かす方が性に合っているんだよ」
エルウィンが口を開いたその時――
――コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
エルウィンが声をかけた。
すると……。
『私です、オズワルドです』
扉の奥からくぐもった声が聞こえてきた。
「何だってっ!?」
途端に3人の間に緊張が走る。
「大将……どうします?」
この3人のメンバーの中で尤もオズワルドを嫌うスティーブが小声でエルウィンに尋ねてきた。
「……わざわざ訪ねてきたんだ。無下に追い返す事も無かろう? 大体初めてじゃないか? 奴が俺のところへ来るなんて」
エルウィンはニヤリと笑った。
「そうですね。では入って頂きましょう」
シュミットは立ち上がり、扉に向かうとノブを回した。
――カチャリ
扉を開けるとダリウスが意外そうな目をシュミットに向けてきた。
「ほう……。シュミット様もおいででしたか? それは都合がよいですな」
「俺もいるぜ」
スティーブがシュミットの後ろから顔を覗かせた。
「流石はお三方、仲がよろしいようですな……ですが丁度良かった。皆様にお伝えしたい事がありましたので」
「伝えたいこと……それは何だ?」
椅子に座ったままエルウィンが声をかけてきた。
「ええ。実はミカエル様とウリエル様の侍女の件についてなのです。何しろ突然の解任でしたからねぇ……」
「何……?」
たっぷり嫌味を込めた言い方をするオズワルドにエルウィンの眉が上がる。
「オズワルド、口を慎め。エルウィン様に失礼だろう?」
スティーブが怒気を含んだ声で咎めた。
「……まぁいい。スティーブ。オズワルドには美味いワインを差し入れてもらったからな。それで俺に伝えたい話とは何だ?」
「ええ、実はミカエル様とウリエル様に新しい専属メイドを雇う事にしたのです。もう本人から承諾も得ましたから、早速明日にでも働いて貰おうかと思っております」
「そうか。それは良かったな。だが、何故我々にその話をするのだ?」
エルウィンは残りのエスプレッソを飲み干した。
「ええ、何しろ新しく専属メイドになる女性は皆様が良くご存知の女性ですから」
「「「……?」」」
3人は首を傾げた。
「オズワルド、一体その女性とは誰なんだ? 勿体つけずに早く言え」
エルウィンはイライラしながらオズワルドを睨みつけた。
「ええ、私が新しく専属メイドに選んだ人物はこの城で下働きとして働いている若い女性です。金の髪に、紫の瞳を持つそれは美しい女性です」
「「「!!!」」」
エルウィンたちがその言葉に衝撃を受けたのは言うまでも無かった――
エルウィンがシュミットとスティーブを招き、ダイニングルームで夕食後のお茶を飲んでいた。
幼馴染である3人は互いの子供時代の話で盛り上がっている。
「それにしても大将は子供の時から勉強が嫌いでしたよね」
スティーブが笑いながらコーヒーを口に入れた。
「うるさい、お前だって人の事が言えるか? いつも俺と一緒に勉強時間に抜け出していただろう?」
エルウィンはムスッとした表情でエスプレッソを飲んでいる。
「全くその通りですよ。それで探しに行かされていた私の身にもなっていただきたいものです」
紅茶を飲むのはシュミット。
「俺は机に向かっているより、身体を動かす方が性に合っているんだよ」
エルウィンが口を開いたその時――
――コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
エルウィンが声をかけた。
すると……。
『私です、オズワルドです』
扉の奥からくぐもった声が聞こえてきた。
「何だってっ!?」
途端に3人の間に緊張が走る。
「大将……どうします?」
この3人のメンバーの中で尤もオズワルドを嫌うスティーブが小声でエルウィンに尋ねてきた。
「……わざわざ訪ねてきたんだ。無下に追い返す事も無かろう? 大体初めてじゃないか? 奴が俺のところへ来るなんて」
エルウィンはニヤリと笑った。
「そうですね。では入って頂きましょう」
シュミットは立ち上がり、扉に向かうとノブを回した。
――カチャリ
扉を開けるとダリウスが意外そうな目をシュミットに向けてきた。
「ほう……。シュミット様もおいででしたか? それは都合がよいですな」
「俺もいるぜ」
スティーブがシュミットの後ろから顔を覗かせた。
「流石はお三方、仲がよろしいようですな……ですが丁度良かった。皆様にお伝えしたい事がありましたので」
「伝えたいこと……それは何だ?」
椅子に座ったままエルウィンが声をかけてきた。
「ええ。実はミカエル様とウリエル様の侍女の件についてなのです。何しろ突然の解任でしたからねぇ……」
「何……?」
たっぷり嫌味を込めた言い方をするオズワルドにエルウィンの眉が上がる。
「オズワルド、口を慎め。エルウィン様に失礼だろう?」
スティーブが怒気を含んだ声で咎めた。
「……まぁいい。スティーブ。オズワルドには美味いワインを差し入れてもらったからな。それで俺に伝えたい話とは何だ?」
「ええ、実はミカエル様とウリエル様に新しい専属メイドを雇う事にしたのです。もう本人から承諾も得ましたから、早速明日にでも働いて貰おうかと思っております」
「そうか。それは良かったな。だが、何故我々にその話をするのだ?」
エルウィンは残りのエスプレッソを飲み干した。
「ええ、何しろ新しく専属メイドになる女性は皆様が良くご存知の女性ですから」
「「「……?」」」
3人は首を傾げた。
「オズワルド、一体その女性とは誰なんだ? 勿体つけずに早く言え」
エルウィンはイライラしながらオズワルドを睨みつけた。
「ええ、私が新しく専属メイドに選んだ人物はこの城で下働きとして働いている若い女性です。金の髪に、紫の瞳を持つそれは美しい女性です」
「「「!!!」」」
エルウィンたちがその言葉に衝撃を受けたのは言うまでも無かった――