身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
8-13 宴と視線
――18時
ダイニングルームには本日の歓迎会の主要メンバーが勢ぞろいしていた。
ニコニコと笑顔で座るのはエルウィンにミカエルとウリエル。無表情で座るのはシュミット、オズワルド、ロイ。
明らかに不機嫌な顔をしているのはスティーブ。
そして、戸惑いの表情を浮かべて立っている給仕のアリアドネである。
アリアドネの他にはメイド1人とフットマンが1名控えていた。
「皆、今宵はミカエルとウリエルの歓迎会に出席してくれて感謝する」
豪華な食事を前に上機嫌でエルウィンが語る。
「いえいえ、こちらこエルウィン様にお2人を受け入れて下さってありがとうございます。本当に感謝しております」
オズワルドが頭を下げた。
「いや、ミカエルもウリエルも血を分けた親戚だからな。そんなことは当然だ」
「ねぇねぇ。もう食べてもいいの?」
お腹をすかせたウリエルが尋ねてきた。
「ああ、そうだな。それじゃ皆で頂くとしよう。まずは各自飲み物を取ってくれ」
エルウィンの言葉に全員がテーブルに置かれたグラスを手にした。ミカエルとウリエルはぶどうジュースで残りは全員ワインである。
「では……乾杯!」
エルウィンの掛け声に続き、全員が乾杯の声をあげ……子供達の歓迎会が始まった――
その歓迎会は一種異様な雰囲気であった。
エルウィンとシュミットはミカエルとウリエルと楽しげに会話をしている。
オズワルドとロイは無表情で食事をし、その2人を時々チラチラと見ながらブスッとした表情を浮かべているのはスティーブである。
スティーブはどうしてもオズワルドとロイがテーブルに同席しているのが気にいらなかったのだ。
そんなスティーブの様子をアリアドネがハラハラした様子で見ていた。
(一体スティーブ様はどうしてしまったのかしら……。いつもとは全く雰囲気が違うわ……それに反して意外なのはエルウィン様だわ。まさかあんな風に無邪気に笑う方だったなんて…)
アリアドネはいつしか、気づけばエルウィンを注視していた。
そんな彼女の姿をある人物がじっと観察していることに、アリアドネは気付いてはいなかった――
歓迎会が始まって1時間程経過した頃、アリアドネが食器の後片付けをしていると、給仕のフットマンが声をかけてきた。
「そこのメイド、厨房に戻ったら飲み物の追加とデザートを持ってきてくれ」
「厨房にですね?」
「ああ、そうだ。これがこの城の見取り図だ。迷わないように行ってくるんだぞ?」
フットマンはアリアドネに4つ折りに畳まれた城の見取り図を手渡してきた。
「はい、分かりました」
アリアドネは返事をすると食器を乗せたワゴンを押して厨房へと向かった。
****
「これがミカエル様とウリエル様のデザート。そして頼まれていたワインだ。よろしく頼む」
「はい。ありがとうございます」
厨房からデザートとワインを受けったアリアドネはワゴンを押して厨房を出ると、再びダイニングルームを目指した。
「帰りも迷わないようにしなくちゃ……」
アイゼンシュタット城は入り組み、迷路のような造りをしている。
城の構造を全く理解していないアリアドネにとっては城の見取り図が頼りだった。
「……次の角を左に曲がるのね」
見取り図を確認しながら廊下を歩いていると、突然背後から非難めいた大きな声で呼び止められた。
「ちょっと! そこのメイド、待ちなさいよっ!」
「え?」
どこか聞き覚えのある声にアリアドネは振り向き、息を呑んだ。
振り向いた先にはメイド服を着たゾーイが腕組みをし、アリアドネを睨みつけるように立っていた――
ダイニングルームには本日の歓迎会の主要メンバーが勢ぞろいしていた。
ニコニコと笑顔で座るのはエルウィンにミカエルとウリエル。無表情で座るのはシュミット、オズワルド、ロイ。
明らかに不機嫌な顔をしているのはスティーブ。
そして、戸惑いの表情を浮かべて立っている給仕のアリアドネである。
アリアドネの他にはメイド1人とフットマンが1名控えていた。
「皆、今宵はミカエルとウリエルの歓迎会に出席してくれて感謝する」
豪華な食事を前に上機嫌でエルウィンが語る。
「いえいえ、こちらこエルウィン様にお2人を受け入れて下さってありがとうございます。本当に感謝しております」
オズワルドが頭を下げた。
「いや、ミカエルもウリエルも血を分けた親戚だからな。そんなことは当然だ」
「ねぇねぇ。もう食べてもいいの?」
お腹をすかせたウリエルが尋ねてきた。
「ああ、そうだな。それじゃ皆で頂くとしよう。まずは各自飲み物を取ってくれ」
エルウィンの言葉に全員がテーブルに置かれたグラスを手にした。ミカエルとウリエルはぶどうジュースで残りは全員ワインである。
「では……乾杯!」
エルウィンの掛け声に続き、全員が乾杯の声をあげ……子供達の歓迎会が始まった――
その歓迎会は一種異様な雰囲気であった。
エルウィンとシュミットはミカエルとウリエルと楽しげに会話をしている。
オズワルドとロイは無表情で食事をし、その2人を時々チラチラと見ながらブスッとした表情を浮かべているのはスティーブである。
スティーブはどうしてもオズワルドとロイがテーブルに同席しているのが気にいらなかったのだ。
そんなスティーブの様子をアリアドネがハラハラした様子で見ていた。
(一体スティーブ様はどうしてしまったのかしら……。いつもとは全く雰囲気が違うわ……それに反して意外なのはエルウィン様だわ。まさかあんな風に無邪気に笑う方だったなんて…)
アリアドネはいつしか、気づけばエルウィンを注視していた。
そんな彼女の姿をある人物がじっと観察していることに、アリアドネは気付いてはいなかった――
歓迎会が始まって1時間程経過した頃、アリアドネが食器の後片付けをしていると、給仕のフットマンが声をかけてきた。
「そこのメイド、厨房に戻ったら飲み物の追加とデザートを持ってきてくれ」
「厨房にですね?」
「ああ、そうだ。これがこの城の見取り図だ。迷わないように行ってくるんだぞ?」
フットマンはアリアドネに4つ折りに畳まれた城の見取り図を手渡してきた。
「はい、分かりました」
アリアドネは返事をすると食器を乗せたワゴンを押して厨房へと向かった。
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「これがミカエル様とウリエル様のデザート。そして頼まれていたワインだ。よろしく頼む」
「はい。ありがとうございます」
厨房からデザートとワインを受けったアリアドネはワゴンを押して厨房を出ると、再びダイニングルームを目指した。
「帰りも迷わないようにしなくちゃ……」
アイゼンシュタット城は入り組み、迷路のような造りをしている。
城の構造を全く理解していないアリアドネにとっては城の見取り図が頼りだった。
「……次の角を左に曲がるのね」
見取り図を確認しながら廊下を歩いていると、突然背後から非難めいた大きな声で呼び止められた。
「ちょっと! そこのメイド、待ちなさいよっ!」
「え?」
どこか聞き覚えのある声にアリアドネは振り向き、息を呑んだ。
振り向いた先にはメイド服を着たゾーイが腕組みをし、アリアドネを睨みつけるように立っていた――