身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
9-21 ダリウスへの疑惑
「ダリウス……突然どうしたの?」
セリアが突然現れたダリウスに驚いて声をかけた。
「あ……お前はよくリアと一緒にいた……まさか盗み聞きしていたのか?」
「いいえ、盗み聞きなどではありません。城主様がこちらにいらっしゃったので、最近姿を見せなくなったリアのことを尋ねるために参りました。その際、偶然話が耳に入っただけです」
エルウィンの言葉にダリウスは言い返した。
「お前……」
エルウィンは正直驚いていた。
普通、城主を相手に領民が物おじせずに強気な態度で出てくることなどありえないことだったからだ。
ましてや自分はこの国のみならず、他国からも『戦場の暴君』として名高く恐れられている存在なのに、まるでこちらに挑むような視線を向けてくるダリウスに違和感すら抱いていた。
「質問に答えて下さい、城主様。リアは俺たちにとって大切な仲間なのです」
ダリウスは質問に答えず、じっとこちらを見ているエルウィンに多少の苛立ちを感じながら、再度尋ねた。
「ダリウスッ! あなたエルウィン様に対して何て失礼な態度を取るの!? 申し訳ございません、エルウィン様」
セリアは態度の悪いダリウスに代わって自分から頭を下げた。
「いい、セリアは頭を下げる必要が無い。そう言えばお前はリアと特別親しかったようだからな……気になるのは当然だ」
エルウィンは腕組みするとダリウスを見た。
「ええ、そうです。リアは俺にとって大切な人ですからね。リアが怪我をしたと言うのは本当ですか?」
「ああ、リアは本日怪我をした……と言うか、性格に言えば同じメイド仲間のに怪我をさせられた」
「「何ですってっ!?」」
セリアとダリウスが同時に声を上げた。
「い、一体どんなメイドがリアに怪我をさせたのですかっ!?」
ダリウスは興奮気味に尋ねた。
「相手のメイドはゾーイと言う女で侍女を務めていたが、最近メイドにさせられた女だ。どうやらリアを生意気なメイドだと勝手に勘違いして怪我をさせたようだ。俺が偶然その現場を目撃したのだ。ゾーイは割れた食器の上に倒れているリアの背中を踏みつけてる最中だった。リアはそのせいで手と、足首を痛めて歩けなくなってしまったんだ」
「何て酷い……」
セリアが口元を抑えた。
「……」
ダリウスは唇を噛んで、こぶしを握り締めていたが……。
(こいつ……なんて目をしているんだ? おまけに全身から感じるこの殺気……本当にただの領民なのか……?)
エルウィンはダリウスからただならぬ気配を感じ取っていた。
「それで、私に代わりに臨時メイドを……と言う事ですね?」
「ああ、そうだ。リアは歩けるようになるまでは休ませることにした。セリア、メイドの仕事を引き受けてくれるか?」
「ええ。分かりました。それではいつからお城にあがれば宜しいですか?」
「明日から頼む」
するとそれまで黙って話を聞いていたダリウスが口を挟んできた。
「城主様、リアを見舞いたいのですが会えますか?」
「……」
少しの間、エルウィンは黙ってダリウスを見ていたが、フッと笑った。
「それは無理だろう? 何しろリアの部屋は城の。自分が世話する子供たちの隣の部屋に住んでるからな。諦めろ」
「な……っ!」
エルウィンの言葉にショックを受けるダリウス。
「それじゃあ、セリア。明日の9時から頼む」
「はい、かしこまりました」
セリアは頭を下げた。
そしてエルウィンはダリウスを見ることも無く、踵を返すと城へ戻って行った。
背後にダリウスの殺気を感じながら……。
(あのダリウスとか言う男……少し調べた方が良さそうだ……)
エルウィンはダリウスのことを探る決意を固めた――
セリアが突然現れたダリウスに驚いて声をかけた。
「あ……お前はよくリアと一緒にいた……まさか盗み聞きしていたのか?」
「いいえ、盗み聞きなどではありません。城主様がこちらにいらっしゃったので、最近姿を見せなくなったリアのことを尋ねるために参りました。その際、偶然話が耳に入っただけです」
エルウィンの言葉にダリウスは言い返した。
「お前……」
エルウィンは正直驚いていた。
普通、城主を相手に領民が物おじせずに強気な態度で出てくることなどありえないことだったからだ。
ましてや自分はこの国のみならず、他国からも『戦場の暴君』として名高く恐れられている存在なのに、まるでこちらに挑むような視線を向けてくるダリウスに違和感すら抱いていた。
「質問に答えて下さい、城主様。リアは俺たちにとって大切な仲間なのです」
ダリウスは質問に答えず、じっとこちらを見ているエルウィンに多少の苛立ちを感じながら、再度尋ねた。
「ダリウスッ! あなたエルウィン様に対して何て失礼な態度を取るの!? 申し訳ございません、エルウィン様」
セリアは態度の悪いダリウスに代わって自分から頭を下げた。
「いい、セリアは頭を下げる必要が無い。そう言えばお前はリアと特別親しかったようだからな……気になるのは当然だ」
エルウィンは腕組みするとダリウスを見た。
「ええ、そうです。リアは俺にとって大切な人ですからね。リアが怪我をしたと言うのは本当ですか?」
「ああ、リアは本日怪我をした……と言うか、性格に言えば同じメイド仲間のに怪我をさせられた」
「「何ですってっ!?」」
セリアとダリウスが同時に声を上げた。
「い、一体どんなメイドがリアに怪我をさせたのですかっ!?」
ダリウスは興奮気味に尋ねた。
「相手のメイドはゾーイと言う女で侍女を務めていたが、最近メイドにさせられた女だ。どうやらリアを生意気なメイドだと勝手に勘違いして怪我をさせたようだ。俺が偶然その現場を目撃したのだ。ゾーイは割れた食器の上に倒れているリアの背中を踏みつけてる最中だった。リアはそのせいで手と、足首を痛めて歩けなくなってしまったんだ」
「何て酷い……」
セリアが口元を抑えた。
「……」
ダリウスは唇を噛んで、こぶしを握り締めていたが……。
(こいつ……なんて目をしているんだ? おまけに全身から感じるこの殺気……本当にただの領民なのか……?)
エルウィンはダリウスからただならぬ気配を感じ取っていた。
「それで、私に代わりに臨時メイドを……と言う事ですね?」
「ああ、そうだ。リアは歩けるようになるまでは休ませることにした。セリア、メイドの仕事を引き受けてくれるか?」
「ええ。分かりました。それではいつからお城にあがれば宜しいですか?」
「明日から頼む」
するとそれまで黙って話を聞いていたダリウスが口を挟んできた。
「城主様、リアを見舞いたいのですが会えますか?」
「……」
少しの間、エルウィンは黙ってダリウスを見ていたが、フッと笑った。
「それは無理だろう? 何しろリアの部屋は城の。自分が世話する子供たちの隣の部屋に住んでるからな。諦めろ」
「な……っ!」
エルウィンの言葉にショックを受けるダリウス。
「それじゃあ、セリア。明日の9時から頼む」
「はい、かしこまりました」
セリアは頭を下げた。
そしてエルウィンはダリウスを見ることも無く、踵を返すと城へ戻って行った。
背後にダリウスの殺気を感じながら……。
(あのダリウスとか言う男……少し調べた方が良さそうだ……)
エルウィンはダリウスのことを探る決意を固めた――