身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
9-22 盗み聞き
「え? 何ですって?」
シュミットは執務室に戻ってきたエルウィンの話に目を見開いた。
「何だ? シュミット。よく聞こえなかったのか? 仕方ない奴だな……だから、リアの足の怪我が治るまではセリアに臨時でミカエルとウリエルの専属メイドを頼んできたと今話しただろう?」
「ええ、それは分かりましたが……。問題はその次です。誰の素性を調べろと言うのです?」
「ダリウスと言う領民だ。あいつ『アイデン』の領民のくせに、妙に反抗的な態度を取ってくる」
「え……? ダリウス……? どこかで聞いたような……あ! まさかリアと仲の良い人物ですか?」
「お前もその男のことをよく知っているのか?」
エルウィンは手にしている万年筆を持て余しながら尋ねた。
「え、ええまぁ……。それにスティーブがよく思っていないと言うか……敵視している人物ですから」
「フン……なるほどな」
エルウィンが不敵に笑った。
「エルウィン様? 何故そこで笑うのです?」
「いや、人当たりの良いスティーブが敵視するとは、相当な男だと思ってな。確かに奴は城主であり、俺の評判を知っているくせにあんな反抗的な態度を取れるのだから相当な奴だ。それに……」
エルウィンはそこで言葉を切った。
「エルウィン様? どうかされましたか?」
不思議そうに首を傾げるシュミット。
「いや、別に何でも無い」
しかし口ではそう答えるものの、エルウィンはかなりダリウスのことを疑っていた。
(あの男……妙に姿勢が良かった。ひょっとするとかなり実践的に剣を振るっていたことがあるのかもしれない……)
「とにかく、あのダリウスと言う男が何者なのか調べてくれ。確か去年はあんな奴、越冬期間で城にはいなかったよな?」
「ええ、そうですね。あれだけ目立つ人物であるなら昨年いたかいないかくらいすぐに分かりますから」
「よし、ならシュミット。あの男がこの城にいる期間中にあいつの事を調べるんだ。どんな些細なことでも構わ無い。分かったな?」
「……はい、分かりました……」
(全く……。ただでさえ、仕事が山積みなのに今度はダリウスの調査までさせるとは。本当にエルウィン様は人使いの荒い方だ)
シュミットはため息をつきながら返事をするのだった――
「……」
一方、その頃部屋の外で2人の会話を立ち聞きしている人物がいた。
その人物とはロイだった。
彼はアリアドネのことで話があり、エルウィンの執務室に足を運んでいた。
そして偶然にも少しだけ開いた扉から2人の会話が聞こえてきたのだ。
「ダリウス……?」
ロイは執務室を尋ねるのをやめると、東塔へ足を向けた。
(オズワルド様に今の2人の会話を報告しよう)
ロイはエルウィンに関する情報をオズワルドに提供しなければミカエル達の護衛騎士の任を解くと脅迫されていたからであった。
ほんの僅かな情報でもオズワルドに伝えようとロイは考えた。
それほどまでにロイはアリアドネの側にいたかったのであった――
シュミットは執務室に戻ってきたエルウィンの話に目を見開いた。
「何だ? シュミット。よく聞こえなかったのか? 仕方ない奴だな……だから、リアの足の怪我が治るまではセリアに臨時でミカエルとウリエルの専属メイドを頼んできたと今話しただろう?」
「ええ、それは分かりましたが……。問題はその次です。誰の素性を調べろと言うのです?」
「ダリウスと言う領民だ。あいつ『アイデン』の領民のくせに、妙に反抗的な態度を取ってくる」
「え……? ダリウス……? どこかで聞いたような……あ! まさかリアと仲の良い人物ですか?」
「お前もその男のことをよく知っているのか?」
エルウィンは手にしている万年筆を持て余しながら尋ねた。
「え、ええまぁ……。それにスティーブがよく思っていないと言うか……敵視している人物ですから」
「フン……なるほどな」
エルウィンが不敵に笑った。
「エルウィン様? 何故そこで笑うのです?」
「いや、人当たりの良いスティーブが敵視するとは、相当な男だと思ってな。確かに奴は城主であり、俺の評判を知っているくせにあんな反抗的な態度を取れるのだから相当な奴だ。それに……」
エルウィンはそこで言葉を切った。
「エルウィン様? どうかされましたか?」
不思議そうに首を傾げるシュミット。
「いや、別に何でも無い」
しかし口ではそう答えるものの、エルウィンはかなりダリウスのことを疑っていた。
(あの男……妙に姿勢が良かった。ひょっとするとかなり実践的に剣を振るっていたことがあるのかもしれない……)
「とにかく、あのダリウスと言う男が何者なのか調べてくれ。確か去年はあんな奴、越冬期間で城にはいなかったよな?」
「ええ、そうですね。あれだけ目立つ人物であるなら昨年いたかいないかくらいすぐに分かりますから」
「よし、ならシュミット。あの男がこの城にいる期間中にあいつの事を調べるんだ。どんな些細なことでも構わ無い。分かったな?」
「……はい、分かりました……」
(全く……。ただでさえ、仕事が山積みなのに今度はダリウスの調査までさせるとは。本当にエルウィン様は人使いの荒い方だ)
シュミットはため息をつきながら返事をするのだった――
「……」
一方、その頃部屋の外で2人の会話を立ち聞きしている人物がいた。
その人物とはロイだった。
彼はアリアドネのことで話があり、エルウィンの執務室に足を運んでいた。
そして偶然にも少しだけ開いた扉から2人の会話が聞こえてきたのだ。
「ダリウス……?」
ロイは執務室を尋ねるのをやめると、東塔へ足を向けた。
(オズワルド様に今の2人の会話を報告しよう)
ロイはエルウィンに関する情報をオズワルドに提供しなければミカエル達の護衛騎士の任を解くと脅迫されていたからであった。
ほんの僅かな情報でもオズワルドに伝えようとロイは考えた。
それほどまでにロイはアリアドネの側にいたかったのであった――