身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
10-6 エルウィンの本音
「シュミットの報告が入るまでは、一旦会議は終了だ。次の作戦会議は城の鐘を鳴らして知らせる。全員念の為にいつでも出立出来るよう準備をしておけ!これにて一旦解散!」
『はい!』
全員が力強く返事をした――
**
「エルウィン様、私は老いぼれですがお役に立てると思います。私も連れて行って頂けますかな?」
会議が終わるとすぐにエデルガルトが名乗りを挙げてきたが、エルウィンは首を振った。
「いえ、師匠。折角の申し出、大変ありがたいのですが今回は城にとどまって頂きたい。お願いします」
「何故です?」
「はい、恐らく今回の拉致事件はオズワルドが絡んでいると思います。奴は何かよからぬ企みを抱いているかも知れない。なので俺が不在中は師匠にこの城をお願いしたいと思っています」
「そうですか……やはり、エルウィン様自ら動くのですね? 越冬期間空けはすぐに国王からの命令で出陣することが多々あるのに?」
「ええ、当然です。今回の失態は俺が招いてしまったことです。責任は取らなければ。国王からの命令は二の次です」
エルウィンの碧眼の瞳には強い意志が見えた。
「分かりました。エルウィン様の妻となる方のお顔はこの城に戻ってくるまで楽しみにとっておきましょう。では私は一度下がらせて頂きます」
「ええ、また後ほど」
エデルガルトは頭を下げると、会議室を出ていった。
「大将」
エデルガルトが去ると、スティーブがエルウィンに声をかけてきた。
「どうした?」
「当然俺はメンバーに入れてもらいますよ?」
「ああ、勿論だ。何しろお前はこの城の一番部隊の団長だからな」
ニヤリと笑うエルウィンにスティーブは頭を下げた。
「大将……申し訳ありませんでした」
「……アリアドネのことか?」
「はい。まさか大将が気付いていたとは思いもしませんでした」
「お前、俺をどれだけ見くびっているんだ? 初めて後ろ姿を見た時から気付いていたぞ。何を今更そんなことを」
「なら、何故今迄何も知らないふりをしていたのですか?」
「それはお前もシュミットも必死で隠そうとしていたからだろう? アリアドネだってそうだ。自分の身元がバレるのを恐れているようだった。だが、そうさせてしまったのは全て俺が原因なのも分かっていた」
「大将……」
「俺がいけなかったんだ。この城を出ていくように剣を向けたから……。だが、恐らくアリアドネは行き場が無かったんだろう? それでシュミットか、お前にこの城に置いてもらいたいと頼んだんじゃないか? 労働する代わりに」
「そうです……俺とシュミットで決めました」
「もっと早く事情を知っていればな……いや、こんなのは言い訳に過ぎない。とにかく、俺は何としてもアリアドネを必ず連れ戻す。スティーブ、準備をしておけ」
「はい! 分かりました!」
スティーブは敬礼すると、足早に会議室を去って行った。
「よし……俺も準備に入るか」
エルウィンは会議室を出ると、自室へ向った――
『はい!』
全員が力強く返事をした――
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「エルウィン様、私は老いぼれですがお役に立てると思います。私も連れて行って頂けますかな?」
会議が終わるとすぐにエデルガルトが名乗りを挙げてきたが、エルウィンは首を振った。
「いえ、師匠。折角の申し出、大変ありがたいのですが今回は城にとどまって頂きたい。お願いします」
「何故です?」
「はい、恐らく今回の拉致事件はオズワルドが絡んでいると思います。奴は何かよからぬ企みを抱いているかも知れない。なので俺が不在中は師匠にこの城をお願いしたいと思っています」
「そうですか……やはり、エルウィン様自ら動くのですね? 越冬期間空けはすぐに国王からの命令で出陣することが多々あるのに?」
「ええ、当然です。今回の失態は俺が招いてしまったことです。責任は取らなければ。国王からの命令は二の次です」
エルウィンの碧眼の瞳には強い意志が見えた。
「分かりました。エルウィン様の妻となる方のお顔はこの城に戻ってくるまで楽しみにとっておきましょう。では私は一度下がらせて頂きます」
「ええ、また後ほど」
エデルガルトは頭を下げると、会議室を出ていった。
「大将」
エデルガルトが去ると、スティーブがエルウィンに声をかけてきた。
「どうした?」
「当然俺はメンバーに入れてもらいますよ?」
「ああ、勿論だ。何しろお前はこの城の一番部隊の団長だからな」
ニヤリと笑うエルウィンにスティーブは頭を下げた。
「大将……申し訳ありませんでした」
「……アリアドネのことか?」
「はい。まさか大将が気付いていたとは思いもしませんでした」
「お前、俺をどれだけ見くびっているんだ? 初めて後ろ姿を見た時から気付いていたぞ。何を今更そんなことを」
「なら、何故今迄何も知らないふりをしていたのですか?」
「それはお前もシュミットも必死で隠そうとしていたからだろう? アリアドネだってそうだ。自分の身元がバレるのを恐れているようだった。だが、そうさせてしまったのは全て俺が原因なのも分かっていた」
「大将……」
「俺がいけなかったんだ。この城を出ていくように剣を向けたから……。だが、恐らくアリアドネは行き場が無かったんだろう? それでシュミットか、お前にこの城に置いてもらいたいと頼んだんじゃないか? 労働する代わりに」
「そうです……俺とシュミットで決めました」
「もっと早く事情を知っていればな……いや、こんなのは言い訳に過ぎない。とにかく、俺は何としてもアリアドネを必ず連れ戻す。スティーブ、準備をしておけ」
「はい! 分かりました!」
スティーブは敬礼すると、足早に会議室を去って行った。
「よし……俺も準備に入るか」
エルウィンは会議室を出ると、自室へ向った――