身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
10-16 エルウィンVSダリウス
剣を握りしめ、扉を蹴破って部屋の中に飛び込んだエルウィンは目を見張った。
そこにはベッドの上で大きな身体のダリウスにのしかかられたアリアドネの姿があったからだ。
「エ……エルウィン様っ!」
アリアドネは涙目になって必死に叫んだ。
「チッ! 来たか、エルウィン……。まさかこんなに早く追いつかれるとは思わなかったな」
尚もアリアドネをベッドに押さえつけたまま、ダリウスはエルウィンを見上げた。
「ダリウスッ! 貴様……何をしているっ! 彼女から離れろっ!!」
エルウィンは激怒しながらダリウスに剣を向けた。
その瞬間室内がエルウィンの闘気で震えた。
「ほ……う。それが……お前の力か。流石『戦場の暴君』と言われるだけのことがあるな」
「黙れっ!!」
シュッ!!
エルウィンの左腕が素早く動き、空を切る音が聞こえると同時に2本のナイフがダリウス目指して飛んできた。
「な!?」
ダリウスが思わず驚いて、避けると同時に剣を握りしめたエルウィンが突っ込んできた。
「くっ! ば、馬鹿なっ!!」
ガキィィィンッ!!
地面に転がったダリウスはとっさにベッドに立てかけていた鞘に収まったままの剣を両手で握りしめ、眼前に振って来たエルウィンの剣を受け止めた。
「チッ!」
エルウィンは舌打ちしながらベッドの上で涙目で震えているアリアドネに向かって叫んだ。
「部屋から逃げろ! アリアドネッ! 仲間が階下にいるっ!!」
「は、はいっ!」
アリアドネは頷くと、ベッドから降りて部屋を飛び出した。その様子を横目で見ていたエルウィンに向かってダリウスは不敵に笑った。
「いいのか? 余所見をしていて」
「何?」
ドカッ!!
エルウィンの腹を蹴り上げた。
「ウッ! ゴホッ!」
身をかがめて咳き込むエルウィン目掛けて鞘から引き抜いたダリウスの剣が振り下ろされた。
「!!」
それに気付いたエルウィンは傍らにあったピローを掴んで攻撃を交わした。
ザクッ!!
ピローがダリウスの剣によって切られ、中に入っていた無数の羽が室内に飛び散る。
「くっ!」
「くそっ!」
エルウィンとダリウスは互いに剣を構えたまま距離を取った。
羽が舞い散る中、睨みあいながらダリウスが口を開いた。
「お前……いつから気付いていた?」
「何がだ?」
エルウィンもダリウスも相手に剣を向けながら視線をそらさない。
「シラを切るつもりか? さっき、アリアドネと叫んだだろう?」
「だったらどうだと言うのだ?」
「まさか初めから気付いていたのか? 彼女がお前の妻になる為に嫁いできた女性だったということに」
「貴様のような不埒な奴に説明する必要は無い!」
「不埒ねぇ……クックック……やはりお前は噂通り潔癖な奴だ……そんなに己の身体に流れる血が疎ましいのか? 所詮蛮族と呼ばれるだけのことがある」
「煩いっ!!」
エルウィンは剣を振りかざすとダリウスに向かった。
「本当にお前は血の気が多い奴だ!」
ガキィイイイインッ!!
2人の剣が交錯した。
互いに睨みあいながらエルウィンは唸るように言った。
「貴様……よくもアリアドネに……!」
「か、勘違いするな……手を出そうとした時に……お前が現れたんだ…‥」
「黙れっ!!」
シュッ!!
エルウィンは大きく剣を振りかぶり、ダリウスの皮膚を薄く切り裂いた。
「ぐっ!」
ツー……
ダリウスの右腕の軍服から血が滲んできた。
「ば、馬鹿な……切られてもいないのに……風圧だけで……?」
そしてダリウスは思った。
やはり、この男はただ者ではない――と。
そこにはベッドの上で大きな身体のダリウスにのしかかられたアリアドネの姿があったからだ。
「エ……エルウィン様っ!」
アリアドネは涙目になって必死に叫んだ。
「チッ! 来たか、エルウィン……。まさかこんなに早く追いつかれるとは思わなかったな」
尚もアリアドネをベッドに押さえつけたまま、ダリウスはエルウィンを見上げた。
「ダリウスッ! 貴様……何をしているっ! 彼女から離れろっ!!」
エルウィンは激怒しながらダリウスに剣を向けた。
その瞬間室内がエルウィンの闘気で震えた。
「ほ……う。それが……お前の力か。流石『戦場の暴君』と言われるだけのことがあるな」
「黙れっ!!」
シュッ!!
エルウィンの左腕が素早く動き、空を切る音が聞こえると同時に2本のナイフがダリウス目指して飛んできた。
「な!?」
ダリウスが思わず驚いて、避けると同時に剣を握りしめたエルウィンが突っ込んできた。
「くっ! ば、馬鹿なっ!!」
ガキィィィンッ!!
地面に転がったダリウスはとっさにベッドに立てかけていた鞘に収まったままの剣を両手で握りしめ、眼前に振って来たエルウィンの剣を受け止めた。
「チッ!」
エルウィンは舌打ちしながらベッドの上で涙目で震えているアリアドネに向かって叫んだ。
「部屋から逃げろ! アリアドネッ! 仲間が階下にいるっ!!」
「は、はいっ!」
アリアドネは頷くと、ベッドから降りて部屋を飛び出した。その様子を横目で見ていたエルウィンに向かってダリウスは不敵に笑った。
「いいのか? 余所見をしていて」
「何?」
ドカッ!!
エルウィンの腹を蹴り上げた。
「ウッ! ゴホッ!」
身をかがめて咳き込むエルウィン目掛けて鞘から引き抜いたダリウスの剣が振り下ろされた。
「!!」
それに気付いたエルウィンは傍らにあったピローを掴んで攻撃を交わした。
ザクッ!!
ピローがダリウスの剣によって切られ、中に入っていた無数の羽が室内に飛び散る。
「くっ!」
「くそっ!」
エルウィンとダリウスは互いに剣を構えたまま距離を取った。
羽が舞い散る中、睨みあいながらダリウスが口を開いた。
「お前……いつから気付いていた?」
「何がだ?」
エルウィンもダリウスも相手に剣を向けながら視線をそらさない。
「シラを切るつもりか? さっき、アリアドネと叫んだだろう?」
「だったらどうだと言うのだ?」
「まさか初めから気付いていたのか? 彼女がお前の妻になる為に嫁いできた女性だったということに」
「貴様のような不埒な奴に説明する必要は無い!」
「不埒ねぇ……クックック……やはりお前は噂通り潔癖な奴だ……そんなに己の身体に流れる血が疎ましいのか? 所詮蛮族と呼ばれるだけのことがある」
「煩いっ!!」
エルウィンは剣を振りかざすとダリウスに向かった。
「本当にお前は血の気が多い奴だ!」
ガキィイイイインッ!!
2人の剣が交錯した。
互いに睨みあいながらエルウィンは唸るように言った。
「貴様……よくもアリアドネに……!」
「か、勘違いするな……手を出そうとした時に……お前が現れたんだ…‥」
「黙れっ!!」
シュッ!!
エルウィンは大きく剣を振りかぶり、ダリウスの皮膚を薄く切り裂いた。
「ぐっ!」
ツー……
ダリウスの右腕の軍服から血が滲んできた。
「ば、馬鹿な……切られてもいないのに……風圧だけで……?」
そしてダリウスは思った。
やはり、この男はただ者ではない――と。