身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
11-2 卑怯な手口
「しかし、乗っ取ると言って……何か方法はあるのか?」
「いくらエルウィンが不在だと言っても、南塔にはまだ大勢奴の騎士と兵士が残っているのだぞ?」
大股で前を歩くオズワルドに必死に追いすがりながら、ドミニコとバルドが尋ねてくる。
「ええ。私に良い考えがあります。その為にまずは南塔に行くのです」
オズワルドは2人を振り返ることも無く答える。
「南塔……?」
「一体何をしに行くのだ?」
そんな2人にオズワルドは苛立ち紛れに言った。
「全く……。何も理解出来ないのから責めてその無駄口を閉じておいて頂けますかな?」
「何だとっ!」
「貴様……調子に乗りおって!」
するとその途端、オズワルドは素早く腰の剣を引き抜くと振り向きざまに2人に剣を突き付けた。
「「!!」」
驚きのあまり、息を呑む2人にオズワルドはぞっとするほど冷たい声で言い放った。
「忘れるな。ランベールの腰ぎんちゃくども。もう、あ奴はいないのだ。今後は我の言うことに従って貰う。戦場に出て戦った事すらない貴様らに付き従う者は1人もおらぬ! そのことを心にとめておけっ!」
「オ、オズワルド……もしや……?」
「我らを出し抜いたのか……っ!?」
バルドとドミニコは怒りで身体を震わせるも、それ以上は何も言い返せなかった。
何故なら前方から2人の兵士がこちらに向かってきたからである。
「オズワルド様。まだ南塔の騎士達は誰も気づいておりません」
1人の兵士がオズワルドに近付いてくると声をかけてきた。
「よし、ならこのままバレないように行動しろ。下働きの者共は全員エルウィンの手下だと思え。のろしを上げたら行動開始だ」
「「御意!!」」
兵士達は敬礼すると、足早に立ち去って行った。
「さぁ……それでは早速参りましょうか?」
オズワルドは不気味な笑みを浮かべてバルドとドミニコを振り返った――
****
「兄さま……今日、何だか変だと思わない?」
絵本を読みながらウリエルは向かい側に座り、読書をしているミカエルに声をかけた。
「変て……何が?」
「うん……城の中は静かなのに外はうるさいなって思って」
「だって今日で越冬期間が終わったからね。城で暮らしていた領民達が帰っていくからじゃないかな?」
「ふ~ん……でも、それにしても今日はまだリアもロイも姿を見せていないよ? もう9時になるのに……僕、お腹空いたよ」
「確かにそうだよな……ひょっとすると忙しいかもしれない。よし、なら僕が厨房に行って食事の準備をしてもらうように行ってくるよ」
ミカエルは本を閉じると立ち上がり、扉へ向かったその時。
ガチャッ!
突然扉が開かれ、ミカエルは慌てて後ろに下がった。見上げるとそこには苦手なオズワルドがじっと自分を見おろしている。
「おや? ミカエル様……一体どちらへ行かれようとしているのですか?」
オズワルドはミカエルに尋ねながら、部屋の中へと入って来た。そして当然のようにバルドとドミニコもその後ろをついてくる。
「え……ま、まだ朝ご飯が出て来ないので……それで伝えに行こうと思って……」
「何と、さようでございましたか? 全く怠慢なメイドですな……あのリアと言う娘は」
オズワルドはアリアドネがダリウスに攫われたのを知っていながら、責めるような言い方をした。
「リ……リアはいいメイドだよ!」
ウリエルはオズワルドが恐ろしかったが勇気を振り絞って言い返した。
けれどオズワルドは首を振る。
「やはりエルウィン様にお2人をお任せしたのが間違いだったかもしれませんな。ミカエル様、ウリエル様。東塔へ戻りましょう?」
すると部屋の中に先ほどの2人の兵士が入ってくると、ミカエルとウリエルの前に物も言わず立ち塞がった。
「「……」」
恐怖で声も出せずに震える2人にオズワルドは冷たい声で言った。
「お2人はこれから私どもに従って頂きますよ?痛い目に遭いたくなければね……?」
そして不気味な笑みを浮かべた――
「いくらエルウィンが不在だと言っても、南塔にはまだ大勢奴の騎士と兵士が残っているのだぞ?」
大股で前を歩くオズワルドに必死に追いすがりながら、ドミニコとバルドが尋ねてくる。
「ええ。私に良い考えがあります。その為にまずは南塔に行くのです」
オズワルドは2人を振り返ることも無く答える。
「南塔……?」
「一体何をしに行くのだ?」
そんな2人にオズワルドは苛立ち紛れに言った。
「全く……。何も理解出来ないのから責めてその無駄口を閉じておいて頂けますかな?」
「何だとっ!」
「貴様……調子に乗りおって!」
するとその途端、オズワルドは素早く腰の剣を引き抜くと振り向きざまに2人に剣を突き付けた。
「「!!」」
驚きのあまり、息を呑む2人にオズワルドはぞっとするほど冷たい声で言い放った。
「忘れるな。ランベールの腰ぎんちゃくども。もう、あ奴はいないのだ。今後は我の言うことに従って貰う。戦場に出て戦った事すらない貴様らに付き従う者は1人もおらぬ! そのことを心にとめておけっ!」
「オ、オズワルド……もしや……?」
「我らを出し抜いたのか……っ!?」
バルドとドミニコは怒りで身体を震わせるも、それ以上は何も言い返せなかった。
何故なら前方から2人の兵士がこちらに向かってきたからである。
「オズワルド様。まだ南塔の騎士達は誰も気づいておりません」
1人の兵士がオズワルドに近付いてくると声をかけてきた。
「よし、ならこのままバレないように行動しろ。下働きの者共は全員エルウィンの手下だと思え。のろしを上げたら行動開始だ」
「「御意!!」」
兵士達は敬礼すると、足早に立ち去って行った。
「さぁ……それでは早速参りましょうか?」
オズワルドは不気味な笑みを浮かべてバルドとドミニコを振り返った――
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「兄さま……今日、何だか変だと思わない?」
絵本を読みながらウリエルは向かい側に座り、読書をしているミカエルに声をかけた。
「変て……何が?」
「うん……城の中は静かなのに外はうるさいなって思って」
「だって今日で越冬期間が終わったからね。城で暮らしていた領民達が帰っていくからじゃないかな?」
「ふ~ん……でも、それにしても今日はまだリアもロイも姿を見せていないよ? もう9時になるのに……僕、お腹空いたよ」
「確かにそうだよな……ひょっとすると忙しいかもしれない。よし、なら僕が厨房に行って食事の準備をしてもらうように行ってくるよ」
ミカエルは本を閉じると立ち上がり、扉へ向かったその時。
ガチャッ!
突然扉が開かれ、ミカエルは慌てて後ろに下がった。見上げるとそこには苦手なオズワルドがじっと自分を見おろしている。
「おや? ミカエル様……一体どちらへ行かれようとしているのですか?」
オズワルドはミカエルに尋ねながら、部屋の中へと入って来た。そして当然のようにバルドとドミニコもその後ろをついてくる。
「え……ま、まだ朝ご飯が出て来ないので……それで伝えに行こうと思って……」
「何と、さようでございましたか? 全く怠慢なメイドですな……あのリアと言う娘は」
オズワルドはアリアドネがダリウスに攫われたのを知っていながら、責めるような言い方をした。
「リ……リアはいいメイドだよ!」
ウリエルはオズワルドが恐ろしかったが勇気を振り絞って言い返した。
けれどオズワルドは首を振る。
「やはりエルウィン様にお2人をお任せしたのが間違いだったかもしれませんな。ミカエル様、ウリエル様。東塔へ戻りましょう?」
すると部屋の中に先ほどの2人の兵士が入ってくると、ミカエルとウリエルの前に物も言わず立ち塞がった。
「「……」」
恐怖で声も出せずに震える2人にオズワルドは冷たい声で言った。
「お2人はこれから私どもに従って頂きますよ?痛い目に遭いたくなければね……?」
そして不気味な笑みを浮かべた――