身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
12-2 苦渋の決断
「ダリウスッ!」
エルウィンは地下牢へ幽閉されているダリウスの元へとやってきた。
「何だ? お忙しい辺境伯のエルウィン様が一体どんな要件で俺の元へ来たんだ?」
地下牢で寝ベッドの上で寝そべって本を読んでいたダリウスがムクリと起き上がった。
ダリウスが入れられている地下牢は暖炉もあり、冷たい石畳の上には毛皮のラグが敷かれており快適に過ごせるようになっていた。
「全く……罪人で我らの人質であるくせに、このような快適な地下牢を与えるなど……」
イライラした様子でエルウィンは地下牢のダリウスを睨みつけた。
「おいおい、それを俺に言うのはお門違いだぞ? 元はと言えばお前らがこの地下牢を用意したのだろう?」
ダリウスがおどけたように肩をすくめた。
「違うっ! 貴様にこの環境を与えたのは俺ではない! 俺の師匠の提案で、やむを得ずこうするしか無かったのだ! 何しろ、曲がりなりにも貴様は『カフィア』の第一王子だからな! クソ……ッ!」
吐き捨てるように怒鳴るエルウィンにダリウスはニヤリと笑った。
「その言い方……。さては何かあったな? 教えろよ」
「チッ…!」
その言葉に忌々しげに舌打ちをして腕組みをするとエルウィンはダリウスに尋ねた。
「ダリウス……貴様は知っていたのか?『レビアス』王国と『カフィア』小国が互いに重要な貿易相手国だということを?」
「ああ、知ってたさ。何しろ我が国は少国家とは言え、ダイヤ産出国世界一だからな」
「貴様……! それを知っていながら、何故『アイゼンシュタット』を狙った! 何が目的だっ!?」
「別に俺たちの国は辺境伯とは何一つ取引はしていないからな。何しろここは『レビアス』国に存在しながら、ある意味完全に独立地帯と言っても過言ではない。正直なところ……貴様の国の国王は強欲で横暴でありながら本来は臆病な男だ。いつか貴様らが反乱を起すのではないかと、内心ビクビクしていたのさ。かと言って、我らの国とは強い絆を持っていたい。……大方、今回のことは目を瞑って俺を釈放して国へ返せと言ってきたのではないか?」
「クッ……!」
エルウィンは悔しげに唇を噛んだ。
いくらダリウスのせいで城が混乱させられたとしても、所詮エルウィンは国王の命令には逆らえない。
「……こちらの準備が出来次第……貴様は釈放だ。貴様の部下たちは全員国へ帰り着いたそうだ」
エルウィンは悔しげに言い捨てると、ダリウスをその場に残し……地下牢を去っていった。
「くそっ……!」
憎いダリウスを釈放しなければならないことはエルウィンにとって屈辱以外の何者でも無かった。
(あいつの企みさえ無ければ……ロイだって死なずに済んだというのに……!)
そしてそのままエルウィンはアリアドネがいるミカエルとウリエルの部屋へと足を向けた。
アリアドネにも大事な話があったからである。
そして、エルウィンはアリアドネの言葉に衝撃を受けることになる――
エルウィンは地下牢へ幽閉されているダリウスの元へとやってきた。
「何だ? お忙しい辺境伯のエルウィン様が一体どんな要件で俺の元へ来たんだ?」
地下牢で寝ベッドの上で寝そべって本を読んでいたダリウスがムクリと起き上がった。
ダリウスが入れられている地下牢は暖炉もあり、冷たい石畳の上には毛皮のラグが敷かれており快適に過ごせるようになっていた。
「全く……罪人で我らの人質であるくせに、このような快適な地下牢を与えるなど……」
イライラした様子でエルウィンは地下牢のダリウスを睨みつけた。
「おいおい、それを俺に言うのはお門違いだぞ? 元はと言えばお前らがこの地下牢を用意したのだろう?」
ダリウスがおどけたように肩をすくめた。
「違うっ! 貴様にこの環境を与えたのは俺ではない! 俺の師匠の提案で、やむを得ずこうするしか無かったのだ! 何しろ、曲がりなりにも貴様は『カフィア』の第一王子だからな! クソ……ッ!」
吐き捨てるように怒鳴るエルウィンにダリウスはニヤリと笑った。
「その言い方……。さては何かあったな? 教えろよ」
「チッ…!」
その言葉に忌々しげに舌打ちをして腕組みをするとエルウィンはダリウスに尋ねた。
「ダリウス……貴様は知っていたのか?『レビアス』王国と『カフィア』小国が互いに重要な貿易相手国だということを?」
「ああ、知ってたさ。何しろ我が国は少国家とは言え、ダイヤ産出国世界一だからな」
「貴様……! それを知っていながら、何故『アイゼンシュタット』を狙った! 何が目的だっ!?」
「別に俺たちの国は辺境伯とは何一つ取引はしていないからな。何しろここは『レビアス』国に存在しながら、ある意味完全に独立地帯と言っても過言ではない。正直なところ……貴様の国の国王は強欲で横暴でありながら本来は臆病な男だ。いつか貴様らが反乱を起すのではないかと、内心ビクビクしていたのさ。かと言って、我らの国とは強い絆を持っていたい。……大方、今回のことは目を瞑って俺を釈放して国へ返せと言ってきたのではないか?」
「クッ……!」
エルウィンは悔しげに唇を噛んだ。
いくらダリウスのせいで城が混乱させられたとしても、所詮エルウィンは国王の命令には逆らえない。
「……こちらの準備が出来次第……貴様は釈放だ。貴様の部下たちは全員国へ帰り着いたそうだ」
エルウィンは悔しげに言い捨てると、ダリウスをその場に残し……地下牢を去っていった。
「くそっ……!」
憎いダリウスを釈放しなければならないことはエルウィンにとって屈辱以外の何者でも無かった。
(あいつの企みさえ無ければ……ロイだって死なずに済んだというのに……!)
そしてそのままエルウィンはアリアドネがいるミカエルとウリエルの部屋へと足を向けた。
アリアドネにも大事な話があったからである。
そして、エルウィンはアリアドネの言葉に衝撃を受けることになる――