身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
3-6 使用人達との会話
12時半――
アリアドネ達は仕事を一旦中断し、寄宿舎へ戻って全員でテーブルを囲んで昼食をとっていた。
「ほら、これが非常食用に加工した干し肉だよ」
アリアドネの向かい側の席に座ったマリアが、干し肉を出した。
出来上がった干し肉を初めて目にしたアリアドネは嬉しそうにマリアに礼を述べる。
「ありがとうございます。それで、これはどの様にして頂けばいいのですか?」
「そのまま食べればいいんだよ」
すると隣に座っていたイゾルネが教えた。
「そのままですか?」
アリアドネはそこで干し肉をフォークにさして口に入れてみた。
「……美味しいです。塩気が利いていて、それスパイシーです。こんなに干し肉って美味しいんですね」
するとその様子を見ていたマリアが豪快に笑った。
「アハハハハ……。気にいってくれて良かったよ。この城の騎士や兵士達はみんなこの干し肉を大量に持って戦場へ赴くんだよ」
「そうだったのですね……」
(やはり、私達が平和に暮らせていられるのは全てこのお城の方達のお陰なのね。そして皆をまとめているのがエルウィン様なのだわ)
アリアドネは初めて見た時の眼光鋭いエルウィンと、マリアと談笑するエルウィンを思い出していた。そこでマリアにエルウィンの事を尋ねてみたくなった。
「あの、マリアさん。エルウィン様ってどんなお方ですか?」
するとイゾルネが揶揄うようにアリアドネに話かけてきた。
「おや? もしかして先程エルウィン様を見て惚れちまったのかい? まぁエルウィン様ほどの美丈夫はなかなかいないからね~城中のメイド達はみ~んな虜になってるさ。尤も相手にもされていないけどね」
「そうなのですか」
「でも、アリアドネならいけそうかもね?」
突然、隣に座って来た女性が声をかけてきた。
「え?」
見るとその女性はアリアドネのように金の髪色の持ち主だった。年は10歳程上に見える。
「あ、あの……貴女は……?」
すると女性は笑った。
「あぁ、ごめんね。いきなり話しかけて驚いたわよね? 私はセリアよ。エルウィン様の御世話係をしていたの」
「そうだったのですか?」
「セリアは以前はメイドとして働いていたんだけどね、エルウィン様が下働きとして働く様に命じたんだよ」
マリアの言葉にアリアドネは疑問に思った。
「え……? そうなのですか?」
(下働きの方がメイドの仕事よりもきついのに?)
「意外そうな顔しているね? まぁ普通に考えればメイドのまま働く方がいいと思うだろうけど、この城はちょっと普通じゃないからね。以前はこんなんじゃ無かったのに……」
イゾルネが口を挟んできた。
「どういう事でしょうか?」
「この間、教えてあげただろう? アイゼンシュタットの城のメイド達の話」
「あ……」
マリアの話にアリアドネは気付いた。
「そんな事しているのは一部のメイド達なんだよ。ランベール様が連れて来たメイド達なのさ。以前からこの城で働いているメイド達は一切そんな事はしてはいないけどね。だけど、一部のメイドがこの城の男達の相手をしていれば、他のメイド達だって勘違いされてしまうだろう? それを案じたエルウィン様がわざとセリアを下働きにさせたのさ」
イゾルネが説明してくれた。
「ランベール様……? 初めて聞くお名前ですけど、どなたなのですか?」
「アリアドネは知らなくて当然よね? ランベール様と言うのはエルウィン様のお父様の腹違いの弟なのよ。母親は妾だったそうよ」
「妾の……?」
セリアの話にアリアドネは身体の血が凍りつきそうな気持になってしまった――
アリアドネ達は仕事を一旦中断し、寄宿舎へ戻って全員でテーブルを囲んで昼食をとっていた。
「ほら、これが非常食用に加工した干し肉だよ」
アリアドネの向かい側の席に座ったマリアが、干し肉を出した。
出来上がった干し肉を初めて目にしたアリアドネは嬉しそうにマリアに礼を述べる。
「ありがとうございます。それで、これはどの様にして頂けばいいのですか?」
「そのまま食べればいいんだよ」
すると隣に座っていたイゾルネが教えた。
「そのままですか?」
アリアドネはそこで干し肉をフォークにさして口に入れてみた。
「……美味しいです。塩気が利いていて、それスパイシーです。こんなに干し肉って美味しいんですね」
するとその様子を見ていたマリアが豪快に笑った。
「アハハハハ……。気にいってくれて良かったよ。この城の騎士や兵士達はみんなこの干し肉を大量に持って戦場へ赴くんだよ」
「そうだったのですね……」
(やはり、私達が平和に暮らせていられるのは全てこのお城の方達のお陰なのね。そして皆をまとめているのがエルウィン様なのだわ)
アリアドネは初めて見た時の眼光鋭いエルウィンと、マリアと談笑するエルウィンを思い出していた。そこでマリアにエルウィンの事を尋ねてみたくなった。
「あの、マリアさん。エルウィン様ってどんなお方ですか?」
するとイゾルネが揶揄うようにアリアドネに話かけてきた。
「おや? もしかして先程エルウィン様を見て惚れちまったのかい? まぁエルウィン様ほどの美丈夫はなかなかいないからね~城中のメイド達はみ~んな虜になってるさ。尤も相手にもされていないけどね」
「そうなのですか」
「でも、アリアドネならいけそうかもね?」
突然、隣に座って来た女性が声をかけてきた。
「え?」
見るとその女性はアリアドネのように金の髪色の持ち主だった。年は10歳程上に見える。
「あ、あの……貴女は……?」
すると女性は笑った。
「あぁ、ごめんね。いきなり話しかけて驚いたわよね? 私はセリアよ。エルウィン様の御世話係をしていたの」
「そうだったのですか?」
「セリアは以前はメイドとして働いていたんだけどね、エルウィン様が下働きとして働く様に命じたんだよ」
マリアの言葉にアリアドネは疑問に思った。
「え……? そうなのですか?」
(下働きの方がメイドの仕事よりもきついのに?)
「意外そうな顔しているね? まぁ普通に考えればメイドのまま働く方がいいと思うだろうけど、この城はちょっと普通じゃないからね。以前はこんなんじゃ無かったのに……」
イゾルネが口を挟んできた。
「どういう事でしょうか?」
「この間、教えてあげただろう? アイゼンシュタットの城のメイド達の話」
「あ……」
マリアの話にアリアドネは気付いた。
「そんな事しているのは一部のメイド達なんだよ。ランベール様が連れて来たメイド達なのさ。以前からこの城で働いているメイド達は一切そんな事はしてはいないけどね。だけど、一部のメイドがこの城の男達の相手をしていれば、他のメイド達だって勘違いされてしまうだろう? それを案じたエルウィン様がわざとセリアを下働きにさせたのさ」
イゾルネが説明してくれた。
「ランベール様……? 初めて聞くお名前ですけど、どなたなのですか?」
「アリアドネは知らなくて当然よね? ランベール様と言うのはエルウィン様のお父様の腹違いの弟なのよ。母親は妾だったそうよ」
「妾の……?」
セリアの話にアリアドネは身体の血が凍りつきそうな気持になってしまった――