身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
4-15 ショックを受けるシュミット
――話は少し前に遡る
その時シュミットはアリアドネの姿を探すべく、必死になって城内を探しまわっていた。
エルウィンにはアリアドネの名前を知られている。その為、名前を呼びながら探す事はためらわれた。
(アリアドネ様……一体どちらに行かれたのだ……?)
大理石の廊下を靴音を響かせながらシュミットは必死になってアリアドネを探した。
途中何人かの使用人達にすれ違い、下働きの女性を連れた2人のメイドを見かけなかったかを尋ねてみたものの、それらしき人物を見た者は1人もいなかった。
「困った事になった。もしお1人で城の何処かで迷われていたら……」
ただでさえ、この城は外部からの侵入者を惑わす為に迷路の様な複雑な作りをしている箇所がある。不慣れな者が迷い込めば、ただではすまない。
しかし、シュミットの心配はそれだけでは無い。ある一つの恐れがあったのだ。
それはここ『アイゼンシュタット城』にはあのランベールの息の根がかかった、ならず者の騎士や兵士が多く存在していると言う事だった。
彼等は皆一様に女に目が無く、色欲が非常に強い。
その様な者達にもし、アリアドネが見つかってしまったらどのような目に遭わされるかは目に見えて分っていた。
アリアドネの様に若く美しい女性は早々いない。きっと彼らはこぞってアリアドネを我が物にしようとするに違いない。
「……」
その事を考えるだけで恐怖により身体が震えて来る。
「何としても手遅れになる前に一刻も早くアリアドネ様を見つけ出さなければ……!」
その時、通路の曲がり角の奥の方で騒ぎが聞こえた。
「まさかっ! アリアドネ様っ!?」
廊下を駆け、通路を曲がった途端エルウィンがランベールに剣を向けている姿がシュミットの目に飛び込んできた。
「あ……あれはエルウィン様にランベール様……えっ!?」
その時、シュミットは見た。
エルウィンの腕の中にアリアドネがいる事を。アリアドネはエルウィンのクラバットで顔を隠しているが、長く伸びた金の髪で誰かは容易に判断出来た。
(な、何故エルウィン様がアリアドネ様を抱き寄せているのだ……)
シュミットはエルウィンがランベールに剣を向けている姿よりも、大切そうに……まるでアリアドネを守るかのように抱き寄せている姿にショックを受けた。
エルウィンはランベールを激しく恫喝し……やがて青ざめた顔のランベールはまるで逃げる用に立ち去って行く。
そしてエルウィンがアリアドネから離れ、会話を始めた時にようやくシュミットは我に返った。
「エルウィン様っ!」
シュミットはエルウィンの名を叫ぶと、駆け足で2人の元へ向かった――
****
エルウィンがシュミットにアリアドネを託し、立ち去ったところでシュミットは声をかけた。
「アリアドネ様、探しました。本当にご無事で良かったです」
シュミットは安堵のため息をつきながらアリアドネを見つめた。
「ご心配おかけしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいえ、謝罪等なさらないで下さい。さて……それでは作業場に戻りましょうか? あまり城内にはいない方が良いと思いますので」
「ええ。そうですね。エルウィン様にも言われましたから」
そして2人は並んで歩き始めた。
「そうですか。エルウィン様が直々にお話されたのですね?」
歩きながらシュミットは尋ねた。
「はい、そうです。今日は危ない所を二度も助けて頂きました。本当に感謝の気持ちで一杯です」
「え……? 二度も……?」
(一体どういうことなのだろう……?)
そこでどうしても事情を知りたくなったシュミットは尋ねてみる事にした。
「あの…差支えなければ何があったのか、教えて頂けますか?」
「ええ、分りました」
そしてアリアドネはこの城で何が起こったのか、歩きながら説明を始めた――
その時シュミットはアリアドネの姿を探すべく、必死になって城内を探しまわっていた。
エルウィンにはアリアドネの名前を知られている。その為、名前を呼びながら探す事はためらわれた。
(アリアドネ様……一体どちらに行かれたのだ……?)
大理石の廊下を靴音を響かせながらシュミットは必死になってアリアドネを探した。
途中何人かの使用人達にすれ違い、下働きの女性を連れた2人のメイドを見かけなかったかを尋ねてみたものの、それらしき人物を見た者は1人もいなかった。
「困った事になった。もしお1人で城の何処かで迷われていたら……」
ただでさえ、この城は外部からの侵入者を惑わす為に迷路の様な複雑な作りをしている箇所がある。不慣れな者が迷い込めば、ただではすまない。
しかし、シュミットの心配はそれだけでは無い。ある一つの恐れがあったのだ。
それはここ『アイゼンシュタット城』にはあのランベールの息の根がかかった、ならず者の騎士や兵士が多く存在していると言う事だった。
彼等は皆一様に女に目が無く、色欲が非常に強い。
その様な者達にもし、アリアドネが見つかってしまったらどのような目に遭わされるかは目に見えて分っていた。
アリアドネの様に若く美しい女性は早々いない。きっと彼らはこぞってアリアドネを我が物にしようとするに違いない。
「……」
その事を考えるだけで恐怖により身体が震えて来る。
「何としても手遅れになる前に一刻も早くアリアドネ様を見つけ出さなければ……!」
その時、通路の曲がり角の奥の方で騒ぎが聞こえた。
「まさかっ! アリアドネ様っ!?」
廊下を駆け、通路を曲がった途端エルウィンがランベールに剣を向けている姿がシュミットの目に飛び込んできた。
「あ……あれはエルウィン様にランベール様……えっ!?」
その時、シュミットは見た。
エルウィンの腕の中にアリアドネがいる事を。アリアドネはエルウィンのクラバットで顔を隠しているが、長く伸びた金の髪で誰かは容易に判断出来た。
(な、何故エルウィン様がアリアドネ様を抱き寄せているのだ……)
シュミットはエルウィンがランベールに剣を向けている姿よりも、大切そうに……まるでアリアドネを守るかのように抱き寄せている姿にショックを受けた。
エルウィンはランベールを激しく恫喝し……やがて青ざめた顔のランベールはまるで逃げる用に立ち去って行く。
そしてエルウィンがアリアドネから離れ、会話を始めた時にようやくシュミットは我に返った。
「エルウィン様っ!」
シュミットはエルウィンの名を叫ぶと、駆け足で2人の元へ向かった――
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エルウィンがシュミットにアリアドネを託し、立ち去ったところでシュミットは声をかけた。
「アリアドネ様、探しました。本当にご無事で良かったです」
シュミットは安堵のため息をつきながらアリアドネを見つめた。
「ご心配おかけしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いいえ、謝罪等なさらないで下さい。さて……それでは作業場に戻りましょうか? あまり城内にはいない方が良いと思いますので」
「ええ。そうですね。エルウィン様にも言われましたから」
そして2人は並んで歩き始めた。
「そうですか。エルウィン様が直々にお話されたのですね?」
歩きながらシュミットは尋ねた。
「はい、そうです。今日は危ない所を二度も助けて頂きました。本当に感謝の気持ちで一杯です」
「え……? 二度も……?」
(一体どういうことなのだろう……?)
そこでどうしても事情を知りたくなったシュミットは尋ねてみる事にした。
「あの…差支えなければ何があったのか、教えて頂けますか?」
「ええ、分りました」
そしてアリアドネはこの城で何が起こったのか、歩きながら説明を始めた――