身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
6-9 利害の一致
「いいか、スティーブ。絶対にエルウィン様にアリアドネ様の正体がバレないように最新の注意を払うんだぞ? その為にお前に監視を頼むんだからな?」
シュミットはスティーブに素早く耳打ちした。
「ああ、分かってるって。大将がアリアドネに妙な感心を抱いて2人の距離が近づかないようにすればいいんだろう?」
2人の思惑は違うが、利害関係は一致している。……が、シュミットもスティーブもその事に気付いていない。
「2人とも、さっきから何をコソコソ話をしているんだ? 感じが悪いぞ」
エルウィンがムッとした様子で背後から声をかけた。
「あ、いえ。葬儀のことについて少し話していただけですから」
「そうそう、ほら。大将はリアに礼服を選んでもらうんですよね?」
そしてすぐに2人はボソボソと話し始める。
「全く……。あいつ等何だって言うんだ?」
エルウィンがイライラしながら腕組みをし、2人の様子を伺っているとアリアドネから声をかけられた。
「あの……城主様……」
「何だ?」
振り向くと、アリアドネがエルウィンのクラバットを持って立っていた。
「以前にお借りしていたクラバットです。あの時は大変お世話になりました」
アリアドネは緊張しながら恐る恐るエルウィンにクラバットを差し出した。
「ああ、あの時のか……。何だ? もしかしてずっと持ち歩いていたのか?」
「はい。城主様はお忙しいお方ですから、いつお会いできるか分かりませんでしたし、直接お返ししてお礼を申し上げたかったからです。でも……こんな事になってしまって……」
アリアドネの手が震えていた。
「ふぅ……」
エルウィンはため息をつきながらクラバットを受け取った。
「……もしかして叔父上の死に責任を感じているのか?」
「え?」
アリアドネは驚いて顔をあげた。するとそこには青く澄んだ瞳でじっとこちらを見つめているエルウィンの姿があった。
「そ、それは……」
確かにランベールの死はアリアドネが気に病んでいることであった。ランベールから興味を持たなければ、無理やり連れ出されることも無く、エルウィンによって投獄されて無惨な死を遂げることも無かったはずなのだから。
「その様子だとやはり責任を感じているんだな」
「城主様……」
「いいか? 確かに俺が叔父上を投獄したのはお前に手を出そうとしたからだ。叔父上は3年前にも年若い領民に手を出し、死なせている。あの時から決めていたのだ。もし、後一度でも同じ過ちを繰り返そうものなら今度こそ投獄してやろうな。だからお前が気に病むことではない。叔父上は敵が多かった。だから殺された、それだけのことだ」
「エルウィン様……」
「それでは俺の礼服を選んでもらうか」
エルウィンが一歩アリアドネに近づいた時……。
「大将っ!」
「エルウィン様っ!」
スティーブとシュミットが同時にエルウィンに駆け寄ってきた。
「な、何なんだよ!? お前たちは! いきなり大声を出すな!」
「エルウィン様、それでは私は一足先に礼拝堂へ行きますので、くれぐれも打ち合わせ通りにしっかりと喪主を努めて下さいね?」
「大将、俺もリアと一緒に大将の礼服を選ばせて頂きますよ。期待して下さい」
2人はエルウィンとアリアドネの間に割り込むように入ってきた。
「わ、分かった! 早くシュミットは礼拝堂へ行けっ!」
エルウィンは露骨に嫌そうな顔をシュミットに向けるとシッシッと手で追い払う仕草をした。
「はい、言われなくても参ります。それではスティーブ。そこの女性をよろしく頼みますよ」
シュミットはチラリとアリアドネを見た。
「ああ、任せておけっ!」
こうしてシュミットはエルウィンの私室を出ていき、アリアドネとスティーブによるエルウィンの礼服選びが始まった――
シュミットはスティーブに素早く耳打ちした。
「ああ、分かってるって。大将がアリアドネに妙な感心を抱いて2人の距離が近づかないようにすればいいんだろう?」
2人の思惑は違うが、利害関係は一致している。……が、シュミットもスティーブもその事に気付いていない。
「2人とも、さっきから何をコソコソ話をしているんだ? 感じが悪いぞ」
エルウィンがムッとした様子で背後から声をかけた。
「あ、いえ。葬儀のことについて少し話していただけですから」
「そうそう、ほら。大将はリアに礼服を選んでもらうんですよね?」
そしてすぐに2人はボソボソと話し始める。
「全く……。あいつ等何だって言うんだ?」
エルウィンがイライラしながら腕組みをし、2人の様子を伺っているとアリアドネから声をかけられた。
「あの……城主様……」
「何だ?」
振り向くと、アリアドネがエルウィンのクラバットを持って立っていた。
「以前にお借りしていたクラバットです。あの時は大変お世話になりました」
アリアドネは緊張しながら恐る恐るエルウィンにクラバットを差し出した。
「ああ、あの時のか……。何だ? もしかしてずっと持ち歩いていたのか?」
「はい。城主様はお忙しいお方ですから、いつお会いできるか分かりませんでしたし、直接お返ししてお礼を申し上げたかったからです。でも……こんな事になってしまって……」
アリアドネの手が震えていた。
「ふぅ……」
エルウィンはため息をつきながらクラバットを受け取った。
「……もしかして叔父上の死に責任を感じているのか?」
「え?」
アリアドネは驚いて顔をあげた。するとそこには青く澄んだ瞳でじっとこちらを見つめているエルウィンの姿があった。
「そ、それは……」
確かにランベールの死はアリアドネが気に病んでいることであった。ランベールから興味を持たなければ、無理やり連れ出されることも無く、エルウィンによって投獄されて無惨な死を遂げることも無かったはずなのだから。
「その様子だとやはり責任を感じているんだな」
「城主様……」
「いいか? 確かに俺が叔父上を投獄したのはお前に手を出そうとしたからだ。叔父上は3年前にも年若い領民に手を出し、死なせている。あの時から決めていたのだ。もし、後一度でも同じ過ちを繰り返そうものなら今度こそ投獄してやろうな。だからお前が気に病むことではない。叔父上は敵が多かった。だから殺された、それだけのことだ」
「エルウィン様……」
「それでは俺の礼服を選んでもらうか」
エルウィンが一歩アリアドネに近づいた時……。
「大将っ!」
「エルウィン様っ!」
スティーブとシュミットが同時にエルウィンに駆け寄ってきた。
「な、何なんだよ!? お前たちは! いきなり大声を出すな!」
「エルウィン様、それでは私は一足先に礼拝堂へ行きますので、くれぐれも打ち合わせ通りにしっかりと喪主を努めて下さいね?」
「大将、俺もリアと一緒に大将の礼服を選ばせて頂きますよ。期待して下さい」
2人はエルウィンとアリアドネの間に割り込むように入ってきた。
「わ、分かった! 早くシュミットは礼拝堂へ行けっ!」
エルウィンは露骨に嫌そうな顔をシュミットに向けるとシッシッと手で追い払う仕草をした。
「はい、言われなくても参ります。それではスティーブ。そこの女性をよろしく頼みますよ」
シュミットはチラリとアリアドネを見た。
「ああ、任せておけっ!」
こうしてシュミットはエルウィンの私室を出ていき、アリアドネとスティーブによるエルウィンの礼服選びが始まった――