線香花火が消えるまで一緒にいさせて、傍にいて。
私には長年想い続けている幼なじみがいる。
可愛い女の子が大好きな颯汰(そうた)。
モテるくせに彼女というものをなかなか作らない颯汰に内心ホッとして、『ま、大丈夫でしょ』って何の根拠もない自信みたいなものがあった。
そんな何の根拠もない自信は突如奪われる、颯汰の一言によって──。
「俺、好きな奴いんだけどさ」
「……は?」
線香花火に火を付け、火花が美しく散りはじめた頃、幼なじみの唐突な報告に同様が隠しきれず、手に持っていた線香花火を濡れている地面へ落としてしまった。
「おいー。落とすなよー、もったいねえ」
「……あ、ああ……うん。ごめん」
地面に落とされた線香花火はジュッと控えめた音と共に光を失って、呆気なく終わりを迎える。これから儚くも美しいあかりを灯すはずだったのに……まだ、何も始まっていないのに──。
「ほら、もう落とすなよ」
「うん」
颯汰が新しい線香花火を私に差し出してきて、それを受け取った。
「全然気付いてくれねえんだよなー、そいつ」
「……へえ。そりゃ大変だね」
・・・・ねえ、好きな人いたの……?いつから……?誰なの……?
聞きたいことがたくさんあるのに、そんなの聞けない聞きたくない。
──── ずっと、ずっと好きだったのに。