堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
§1.恋愛成就は茨の道
大都会に建ち並ぶビルの一室にある“占い館・ブルーム”。
この日仕事を終えた私、茅田静珂はそこへ足を運んだ。
「先生、今日もよろしくお願いします」
「茅田さん、こんばんは」
正面の壁には、九星気学や方角を示す表のようなものが大々的に貼られてある。
布製の黒いクロスが掛かったテーブルの前に腰を下ろすと、先生がパワーを得ているというクリスタルが今日も悠然と鎮座しているのが目に入った。
ここには何度も来ているのになんとなく落ち着かなくて、思わずキョロキョロと辺りを見回す。
こぢんまりとした部屋の中は全体的に薄暗く、オレンジの光を放つ卓上のランプがミステリアスな空間を作り上げていた。
「今日も二十分でいいかしら?」
「はい」
バロック調の豪華な椅子に腰を掛けてこちらを見つめるのは、占い師の桜小路先生。
先生は四柱推命や九星気学、統計学などを組み合わせた独自の方法で占う。
それがSNSで当たると噂になり、テレビ出演をしたことで人気に火がついたすごい人。
私はこんなに人気になる前から定期的に通っているけれど、今ではなかなか予約が取れなくなって困っているくらいだ。
「さて、どんなことを占いましょう?」
今日の桜小路先生は、白の洒落た花柄のブラウスを身にまとい、ウェーブのかかった長い髪をサイドでまとめている。
三十代後半の女性だという噂だが、そうは見えないくらい若々しい。
にこりと笑う口元からは白い歯が覗き、清潔感もあって心身ともに美しく、私にとっては憧れの存在だ。
「もちろん恋愛について」
前のめりになって言うと、先生はいつも愛用している資料のノートをパラパラとめくりながらやさしく微笑んだ。
この日仕事を終えた私、茅田静珂はそこへ足を運んだ。
「先生、今日もよろしくお願いします」
「茅田さん、こんばんは」
正面の壁には、九星気学や方角を示す表のようなものが大々的に貼られてある。
布製の黒いクロスが掛かったテーブルの前に腰を下ろすと、先生がパワーを得ているというクリスタルが今日も悠然と鎮座しているのが目に入った。
ここには何度も来ているのになんとなく落ち着かなくて、思わずキョロキョロと辺りを見回す。
こぢんまりとした部屋の中は全体的に薄暗く、オレンジの光を放つ卓上のランプがミステリアスな空間を作り上げていた。
「今日も二十分でいいかしら?」
「はい」
バロック調の豪華な椅子に腰を掛けてこちらを見つめるのは、占い師の桜小路先生。
先生は四柱推命や九星気学、統計学などを組み合わせた独自の方法で占う。
それがSNSで当たると噂になり、テレビ出演をしたことで人気に火がついたすごい人。
私はこんなに人気になる前から定期的に通っているけれど、今ではなかなか予約が取れなくなって困っているくらいだ。
「さて、どんなことを占いましょう?」
今日の桜小路先生は、白の洒落た花柄のブラウスを身にまとい、ウェーブのかかった長い髪をサイドでまとめている。
三十代後半の女性だという噂だが、そうは見えないくらい若々しい。
にこりと笑う口元からは白い歯が覗き、清潔感もあって心身ともに美しく、私にとっては憧れの存在だ。
「もちろん恋愛について」
前のめりになって言うと、先生はいつも愛用している資料のノートをパラパラとめくりながらやさしく微笑んだ。
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