堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 孝乃原さんとはこの先、デートであちこち一緒に出かけたりするんだろうな。
 春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は温泉……遠くない未来を思い描いたら自然と顔がほころんでくる。
 彼が腕時計に視線を落とした。あまりゆっくりしていられないのだろう。

「時間、大丈夫?」
「ああ、うん。もう少ししたら行かないと。実は俺の仲間が……資金調達に手間取っててさ」
「……資金?」
「ほら、前に言ってたフレンチレストランを出店するって話」

 そういえばぞんな話を聞いたかもしれないと記憶がよみがえってきた。
 そのときは順調に進んでいると言っていたから、普通に仕事の話をしてくれているのだと思って、あまり深く気に止めなかったのだけれど。

「二百万円投資をしてもらえるはずだったんだけど無理になって。マジで困ってるんだよね」
「そう、なんだ」
「静珂ちゃん……俺に貸したりできないかな?」
「え?」

 怒涛の展開に、私は目を丸くした。
 彼は今、私にお金を貸してほしいと言ってきているのだ。遠回しではなく直球で。

「二百万円は大金だよ。私にはそんな貯金はないから無理かな」
「そっか。ごめんね。……いくらなら大丈夫?」

 やんわりと断れば引き下がってくれると思ったけれど、彼はまだこの話をしたいようだ。
 それほどまでに切羽詰まっているのだろうか。
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