堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「話、聞いていたんですか?」
「聞こえてきたんだよ。盗み聞きじゃないぞ」

 羽瀬川先生は腕組みをして眉をひそめた。
 そんな顔をされたらなにも言い返せなくなる。

「で、さっきの男だが」

 声が一段と低くなったことに気づき、うつむいていた顔を上げた。

「あれは詐欺だろ」

 先生はこれを言うためにわざわざ私の目の前に座ったのだろう。
 そうでなければ親しくもない私と話をしようとする理由がない。

「ち、違いますよ。あの人は……彼氏、ですから」
「正確には“ついさっき彼氏になったばかりの男”じゃないのか?」

 偶然とはいえ、すべて聞かれていたのだと思うと恥ずかしくなってくる。
 いたたまれなくて小さく溜め息を吐いた。

「あの男とは幼馴染のような旧知の仲とか、古い知人ではないよな?」
「はい。二ヶ月ほど前に知り合いました」
「だとしたらやはりおかしい」

 羽瀬川先生は眉をひそめたまま、間髪入れずにそう言い切った。
 今の発言にはかなり自信があるみたいだ。

「お互いのことをよく知りもしない間柄なのに、二百万なんて大金を借りようとするか?」
「それは……そうですけど」
「しかも、付き合ってほしいとアプローチしてる相手に。普通は頼めない。そんなことを口にすれば嫌われて逃げられるからな」
< 12 / 101 >

この作品をシェア

pagetop