堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 こちらへ冷めた視線を投げかけていた羽瀬川先生が、おもむろにタブレットを手にして起動させた。

「男の名前は? それくらいさすがにわかるよな?」
「孝乃原義典さん、です」
「……名前じゃヒットしないか」

 どうやら先生は孝乃原さんの名前を検索したようだ。
 起業したと言っても彼は有名人ではないから、普通に検索をかけても名前は上がってこないだろう。

「SNSは?」

 そう問われ、私はテーブルの上に置いていたスマホを操作して彼のアカウントを先生に見せた。

「投稿が少ないな。これしかないのか?」
「SNSはあまり好きじゃないって言ってたので」
「そんなふうには見えなかったけどな」

 たしかに孝乃原さんは社交的だから、たくさんの友達と相互フォローをしていそうなのに、実際のフォロワー数は一桁だった。
 私もそれには違和感を感じたのだけれど、SNSで嫌なことがあって一旦アカウントを消したとか、なにか事情がある可能性も否めない。
 仲よくなっていく過程で、そういうのはこれから徐々に聞いていけばいいと楽観的に考えていた。
 まさか……私に教えたのはサブアカウントのほうで、メインとして使っているアカウントがほかにある、とか?

「君はあの男のなにを知ってるんだ」
「なにって……名前と生年月日、血液型、あとは……住んでる街。家に行ったことはないのでだいたいの場所ですけど」

 ハァーッと再び盛大な溜め息が降ってきた。
 実際に言葉にしなくても、「バカだな」と言いたそうだと顔を見ればわかる。
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