堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 偶然居合わせただけなのに、羽瀬川先生がこんなに親身になってくれるとは思ってもみなかった。
 これまで会社で何度か接したときは、理路整然とした話し方で少々冷たい感じがしたけれど、今日で印象が変わった。
 羽瀬川先生は、本当はとてもやさしい人だ。

「ご心配ありがとうございます。自分ひとりで決めないで、友達にも相談してみますね」

 ドキドキしたままそう告げると、羽瀬川先生はしっかりとうなずいた。いったんは納得してくれたらしい。
 とりあえず叶実に話して意見を聞いてみよう。
 この件でなにか進展があれば、羽瀬川先生にも伝えたほうがいいのだろうか。
 先生にとってはくだらない話かもしれないけれど、きっとまた真剣に耳を傾けてくれると思う。

『君が泣くとわかってるから、絶対に見過ごせない』

 先ほどのはっきりとした低い声音が、脳内でリフレインする。
 あんなふうに心配してもらえる私は、それだけで幸せ者だ。

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