堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「きちんと彼の話を聞いてみる。出店計画のことや、お金を貸すとしたらいつごろ返せそうなのか、とか」
「静珂……大丈夫?」
「うん。ちゃんとするから。聞いてくれてありがとね」

 叶実は礼を言う私を心配そうに見つめ、眉根を寄せた複雑な顔をした。まだ完全に納得はしていないようだ。

「ていうか、羽瀬川先生って実は親切なんだね。冷徹で堅物な弁護士ってイメージだったけど」

 そこだけが救いだと言わんばかりに、叶実が気を取り直しておにぎりを頬張る。
 たしかに、孝乃原さんがお金の話をしたのも驚きだったけれど、羽瀬川先生が真剣な顔で助言してくれたことにもビックリした。
 会社で接していたときと印象が丸きり違ったから。

「あれ? 静珂、顔がゆるんでるよ? まさか羽瀬川先生のこと……」
「そ、そんなわけないでしょ! 先生は雲の上の人で、手を伸ばしたって届かないよ。それに、私の“運命の人”じゃないもん」

 誰もが憧れるハイスペイケメン弁護士にアプローチするなんて、さすがに無謀だと私でもわかる。
 玉砕覚悟で近づく勇気も持ち合わせていないのだから、遠目から見ているくらいでちょうどいいのだ。
 桜小路先生から告げられた“運命の人”の条件にも、羽瀬川先生は合致していないのだし……。

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