堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
◇◇◇

 それから一週間が経過したが、孝乃原さんからメッセージも電話も来ていない。
 このまま連絡が途絶えるのだろうかとモヤモヤしているものの、こちらからアクションを起こすのははばかられた。
 自分から「お金を貸すよ」と言っているようなものだから。
 単純に彼は仕事が忙しいのかもしれないし、今は待つときだと思っている。

「静珂、そろそろ行かなきゃ」

 壁掛け時計の針が午後一時五十分をさしたころ、資料が挟まれたファイルを手にした叶実に声を掛けられた。

「もうこんな時間。コンプライアンス研修だったね」
「講師はあの、羽瀬川先生だよ?」

 そんなに強調しなくても、弁護士である彼が講師を務めるのは私だって承知しているのに。

「話せるチャンスじゃない」
「話すって、なにを……」
「それはなんでもいいの。たとえばお礼を言うとか!」
「そ、そうだよね。お礼はちゃんとしなきゃ」

 羽瀬川先生は大人だ。当然私よりも経験値が高く、瞬時に判断した上で忌憚のない意見を言ってもらえるので頼りになる。
 そんな先生に孝乃原さんのことを相談できるのはとてもありがたい。
 今日は社内で顔を合わせるのだから、ていねいなあいさつと言葉かけをしておこうと肝に銘じた。

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