堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「あの、無理しないでください。私ひとりで大丈夫です。なにかほかにご予定があったんじゃないですか?」
「心配しなくてもいい。たいした用事じゃない。勇気との会食が入っていたが、そんなのはいつでも行けるから」
「ダメですよ!」

 彼の口から“勇気”という名前が飛び出したせいで、私は血の気が引いた。
 それは副社長の名だ。容易くキャンセルしていい相手ではない。

「大丈夫。それに、今夜は行けないと連絡したからもう遅い」

 私は目を伏せ、小さく溜め息を吐いた。
 とんでもなくおおごとになってしまった気がして、どんどん不安が押し寄せてくる。

「それより君の連絡先を教えてほしい」
「あ、はい」

 メッセージアプリで羽瀬川先生とID交換をして友達登録をした。この件に関して報告をするために。
 決して通常のたわいないやり取りができるわけじゃない。
 だけど、アプリに先生のアイコンが追加されるとうれしくて、ついニヤついてしまった。

「なに?」
「いえ。素敵なアイコンですね」
「勇気にはナルシストだって言われたけど」

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