堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
◇◇◇
仕事を終えた私は、前回と同じカフェに足を向けた。
待ち合わせの時間よりも少し早めに行き、テーブル席の椅子に腰を下ろしてアイスカフェラテを注文する。
羽瀬川先生はいない。孝乃原さんと一対一で向き合って、聞きたいことをきちんと聞けるだろうか。
緊張しながら待っていると、孝乃原さんが入口から入ってくるのが見えた。
右手を挙げてこちらに合図を送り、笑みをたたえつつ私の正面の椅子に腰を据える。
「静珂ちゃん、待った?」
「ううん。今日は時間どおりだよ」
自分の口から嫌味のような言葉が漏れ、誰よりも驚いたのは私自身だった。
これではまるで、前回彼が遅れてやってきたことを責めているみたいだ。
だけど彼は顔色ひとつ変えずにアイスコーヒーを注文した。
「早速なんだけど、この前の話の続きをしようか」
「えっと、なんだっけ?」
わかりながらも、私があえて知らない素振りでとぼけると、孝乃原さんは苦笑いを浮かべた。
「ほら、言ってたじゃん。事業の資金調達に苦戦してるって……」
「ああ、うん」
「いくら貸せそう? 二百万は無理だとしても百五十万とか?」
膝に置いていた手にじわりと汗が滲んでくる。
自分を落ち着かせるため、私は視線を下げながらフーッと細く息を吐いた。