堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「孝乃原さんの会社って、どんな事業だったっけ?」
「え、前にも話したけど飲食のプロデュースだよ」
「名刺をください」

 名刺はフェイクで作ろうと思えばどうにでもできる。
 そんなことは私でもわかるけれど、今までの言動と一致しているかどうか、証がほしかった。

「あー、今日は持ってきてないや。また今度ね」

 ジャケットのポケット部分を上から叩くように探る仕草が、どことなくわざとらしい。
 私の見方がひねくれているのだろうか。というより、彼を信じる気持ちよりも疑念のほうが(まさ)ってきているのかもしれない。

「私がお金を出すとしたら、孝乃原さんの会社に投資するってことでしょ? だったら名刺くらいは、」
「違うよ。たしかに静珂ちゃんから借りようとしてるけど、それは会社じゃなくて俺個人に貸してほしいんだ」

 私が最後まで言い終わらないうちに彼が途中で遮ってきた。解釈が違うと否定したいらしい。

「お金は、孝乃原さん個人に……」
「そう。百五十万もきつい? だったら百万でもいいけど」
「貸した場合、返済はいつになるの?」

 彼は一瞬考える素振りを見せたあと、いつもの人懐っこい笑みをたたえた。
 この笑顔に飲み込まれたらダメだ。今日は白黒はっきりつけると決めてきたのだから。

「返済? 今の段階ではまだわからないかな」
「月々で分割にするとかあるじゃない?」
「静珂ちゃんは俺の仕事を応援してくれてると思ってたけど、違うの?」

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