堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 下から顔を覗き込むようにして問われると、とてつもなく意地悪をしているような気持ちになり、しだいにいたたまれなくなってくる。

「もちろん応援してるよ。孝乃原さんにはがんばってほしい」
「この前も言ったけど、結婚するときになって資金ゼロなのはカッコ悪いからね。新婚旅行とか普通に行きたいでしょ」

 そうだ、彼は私との将来を思い描いてくれているのだ。
 そのために今無理をしてでもがんばりたいと言っていたのを思い出した。

 運命の人との交際を経て結婚する。――それでこそ、私は幸せを掴める。

「俺、来年は三十代に突入するしさ。そろそろ結婚を意識する年齢っていうか」
「ちょっと待って。来年で三十歳?」

 聞き違えたのかと思って尋ね返すと、孝乃原さんはにこやかに首を縦に振った。
 たしか彼は私より六歳年上だと聞いている。だとしたら現在三十一歳のはずだ。話が食い違っている。

「以前は三十一歳だって言ってたけど、本当は二十九歳なの? えっと……しし座でAB型なんだよね?」
「え、俺そんなこと言ったっけ?」

 真面目に問いただす私をよそに、彼は首をひねりながら肩を揺らしてクスクスと笑った。
 
「ああ、あれって冗談かなにかだと思ってた。運命の人を捜してる、なんてかわいいことを言うもんだから、俺がそうだよって話を合わせただけ。しし座でもAB型でもない」

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