堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「なにそれ。私は本気で捜してて……」
「結局さぁ、静珂ちゃんは俺にカネを貸す気あるの? ないの?」

 どうでもいい話をする暇はないのだと言わんばかりに、孝乃原さんが再び私の言葉を遮った。
 私には重要なことなのに。ウソをつかれていたのなら、もはや彼のどこを信用したらいいかわからない。

「失礼します」

 膝の上に両手を置いて拳を作る私の隣に、長身の男性が現れて椅子に腰を掛けた。
 低くて安心する声の主は、羽瀬川先生だ。

「え、誰?」
「私は茅田さんの同僚で、羽瀬川と申します」

 先生はスーツの内ポケットにある名刺入れから自身の名刺を一枚取り、孝乃原さんへ向けて差し出した。

「……は? 弁護士?」

 孝乃原さんが目を丸くして、何度も名刺と羽瀬川先生を交互に見ている。
 そして先生の左胸にある弁護士バッジに気づくと、先ほどまでとはあきらかに表情が変わった。
 顔から笑みと余裕が消えた今は、落ち着きがなく挙動不審と言っても過言ではない。

「不躾ですが、彼女からお金を借りるのであれば、後日こちらで借用書を準備するのでご署名願えますか」

 ものの数分で主導権を握った羽瀬川先生が、孝乃原さんに淡々とした口調で迫っていく。

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