堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「あのさ、アンタに関係ないよな? これは俺と彼女の問題だ」
「はい。しかし、茅田さんご本人から相談を受けましたので同席しています」

 羽瀬川先生から視線を送られた私は、不安な気持ちを隠せないまま静かにうなずいた。

「借用書だなんて大げさだろ。俺はただ、知り合いからちょっと借りるって感覚でいて……」
「知り合い? 失礼ですがあなたは茅田さんとお付き合いされているのでは?」
「そ、そうだよ! 彼氏だ!」

 興奮気味の孝乃原さんとは正反対に、羽瀬川先生はいたって冷静沈着でいつもどおりだ。
 相手がどう返してこようと動じない、そんな気概が見える。

「恋人同士とはいえ、借用書はきちんと作成しておいたほうがトラブル回避に繋がります」
「だから、いらないって」
「その際には実印と印鑑証明書をお持ちください」
「人の話を聞けよ」

 羽瀬川先生に対して荒っぽい言い方をする孝乃原さんの態度は目に余る。
 きっと、元々こういう人だったのだ。私の前では温厚な仮面を貼り付けていただけ。

「聞いていましたよ。最初からずっと」

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