堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「先生の予想どおりでしたね。彼は最初からお金を騙し取るつもりで……」

 私の声は届いているはずなのに先生は反応せず、孝乃原さんがテーブルの上に置き去りにした名刺に手を伸ばしてそっと回収した。

「あっけなくフラれちゃいました」
「ノーカウントだ」
「……え?」
「あんなヤツを元カレとしてカウントしなくていい」

 慈愛のこもった静かな声に、温かさとやさしさを感じた。
 先生は無意識なのか、普段と変わらず平然としているけれど。

「とにかく、犯罪を阻止できてなによりだ」
「彼を運命の人だと思っていたんです。だから信じたかった。でも全然違いました。うまく話を合わされて、すっかり騙された私はバカですよね」

 実は、知らされていた生年月日は孝乃原さんの口からはっきりと聞いたわけではない。
 私が先に占いや“運命の人”の話をしたから、彼は調子を合わせただけ。
 それを疑いもせず、身分証明書などで確認することもなく、私は鵜呑みにして信じた。
 今となっては“孝乃原義典”という名前さえ偽名だった可能性もある。
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