堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「あの、これ、長い間お借りしていてすみません。ありがとうございました」

 やさしくていねいに手洗いしてアイロンをかけたハンカチ。
 いつでも渡せるようにと、簡素なギフトバッグに入れて持ち歩いていたそれをさっと差し出す。
 彼は受け取って中身を確認したあと、小さくコクリとうなずいた。

「別に返さなくてもよかったのに」
「そ、そういうわけにはいきません!」
「律儀だな」

 私の返答がおかしかったのか、フッと表情をゆるませた。
 それは決して就業時間中には見られないやわらかい笑顔。
 見惚れていると気づいたときにはもう、心臓がドキドキとしてこれでもかというほど鼓動を早めていた。
 我が社のイケメン弁護士にときめくなんて恐れ多いのに。

「あれ? ほかにもなにか入ってるけど?」

 先生がハンカチだけではない厚みや重みに気づいたようだ。

「先日大変お世話になったので、心ばかりのお礼を添えさせていただきました」
「俺が勝手にしたことなのに、気を使わせてしまったな」
「とんでもないです。先生がいてくださらなかったら、どうなっていたか……」

 もし私が一般的な弁護士事務所に相談をしていたら、それなりの費用がかかっただろう。
 それを同じ会社の社員だからといって、謝礼の言葉だけで済ませるのはどうかと思う。
 先生はきっとお金は受け取ってくれない。ならば、なにか役立つ物を渡せたら……と私はひたすら考えた。
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