堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「これはなに?」

 お礼の品物を手の平に乗せて、先生が首をひねりながら尋ねた。

「天然石のブレスレットです」
「……だよな」
「モリオンと呼ばれる“黒水晶”。産出量や流通量が少なくて模倣品も出回ってたりするんですが、これは本物です。“煙水晶”のスモーキークォーツと迷ったんですけど、羽瀬川先生にはやっぱりモリオンかと!」

 一方的に喋りすぎたと気づいたときにはもう遅かった。
 視線を上げた途端、理解できないと言わんばかりの顔をした彼と目が合った。

「いわゆる、パワーストーン?」
「はい。これは邪気を払い、持ち主を守りぬく幸運の石なんですよ」

 モリオンにはほかのパワーストーンと比べ物にならないくらいの強力な魔除け効果があると言われている。
 男性が身につけても違和感がなく、それでいてパワーの強い石がいいと考えた結果、私はモリオンを選んだ。
 金運や仕事運上昇の石ももちろん存在するけれど、今の先生ならそちらは必要ない気がしたから。

「守ってくれるのなら、俺より君が持っていたほうがいいんじゃないか?」

 恋愛詐欺に遭いそうになった私と、救ってくれた彼。
 どちらが不運で悪いものが寄ってきそうかと問われたら、間違いなく私だ。
 先生の返事はごもっともなのだけれど、私はふるりと首を横に振った。

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