堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「大丈夫です。私も持ってますから。……あ! お揃いを狙ったとか、そういう意味じゃないです! 私はパワーストーンが好きで、家にあらゆる種類の石があるので……」
「集めてるの?」
「そのつもりはなかったんですけど、見慣れない石が売られていると買ってしまうんです」

 天然石を扱う専門店へ足を運んでいるうちに、いつの間にか収集癖のようなものがついた。
 見ているだけで癒されるし、手入れをするとしだいに愛しく思えてくる。

「俺は基本的に現実主義で、目に見えるものしか信じないんだが。これはありがたくもらっておこう」

 先生がブレスレットを見つめたまま、ボソリとつぶやくようにそう言った。
 自分の好きなものが、ほかの人も好きとは限らない。
 私の趣味を押しつけた結果、先生にとっては迷惑だったかもしれないと急に不安が押し寄せてきた。

「……ご興味ないですよね。すみません」
「人それぞれ好きなものは違って当たり前だし自由だ。否定はしないよ。俺もアファメーションなんかはいいと思う」
「アファメーション?」
「肯定的な言葉を実際に口に出して宣言をすること。例えば、仕事で成功してみせる、とか。一種の自己暗示だな」

 さすがは羽瀬川先生。自分が興味のないことでもよく知っている。
 弁護士という職業が知識量を豊富にしているのだろう。

「引き寄せの法則と似ていますね」
「そうだな。引き寄せは思考を重視しているが、ポジティブな部分は似ている」

 スピリチュアル好きな者として、話がかみ合ったのがうれしくて思わず笑みをこぼした。

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