堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「アファメーション、私もやってみます! ポジティブ思考だと元気が出るので」
「人間の思考の約八割がネガティブなものだと言われているから。それに抗うのも悪くない」

 もちろん個人差はあるが、人はネガティブ思考に陥りやすいと聞いたことがある。
 不安や疑問視する気持ちがそうさせるのだとか。

「がんばります。今度は私が先生のお役に立てるくらいに。いつか恩返しがしたいです」

 日々進化を求めて努力を重ねていたら、羽瀬川先生から信頼される日が来るかもしれない。
 ポジティブ思考は幸運をもたらせてくれると、私は信じている。

「……じゃあ、ひとつ頼みたいことがあるんだけど」

 先生は一瞬迷うような顔をしたあと、私の目を見てそう言った。
 “いつか”と遠い日を思い描いていたけれど、それがこんなに早々にやってくるとは思っていなくてキョトンとしてしまう。

「嫌なら断ってくれていいんだが」
「断りませんよ。なんでもやります!」
「なんでもって、内容も聞かずに……」
「羽瀬川先生だからですよ! 誰にでも言うわけじゃないです」

 私は誰かれ構わずどんな頼みでも聞くようなお人よしじゃない。
 信頼している彼だからこそ、困っているなら力になりたいと思ったのだ。たとえそれが無理難題なのだとしても。

 はっきりとした声音で言い切る私の勢いに押されたのか、先生は言葉を失ってあっけにとられていた。
 けれど口元に手をやったあとすぐに、ふいっと視線をはずした。なにか私の言い方がまずかったのだろうか。

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