堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
◇◇◇

 パーティー当日の土曜日がやってきた。
 来るように告げられた先は、東京翠雲(すいうん)グランドホテル。日本屈指の高級ホテルだ。
 本当になにも準備せずに手ぶらで行っていいのかと羽瀬川先生に確認したのだが、普段どおりの格好でそのまま来たらいいと言われてしまった。
 おそらく、私の知らないところで準備が整っているのだと思う。あの羽瀬川先生に抜け目などあろうはずがない。
 とりあえず服装は無難な紺色のワンピースで行くことにした。髪は下ろしたまま整えて、いつものメイクを施す。決して濃くなり過ぎないようにナチュラルに。
 パーティーの開始時間は十七時なのだけれど、先生から指定された時間は十六時。
 三九〇三号室まで直接来るようにとメッセージが来ていたので、エレベーターに乗ってそちらに向かう。
 自然と鼓動が早まってきた。今から行くのはきっと、先生が取ってくれた部屋なのだろう。
 時間どおりに到着した私はホテルの三十九階まで上がっていくと、そこがエグゼクティブスイートと呼ばれる豪華な客室のエリアだと気づいた。
 部屋の扉の前に立って息を吐く。恐る恐るチャイムを押したら、すぐに羽瀬川先生が出迎えてくれた。

「来てくれてありがとう」

 私の顔を目にした途端、先生が安堵の表情を浮かべた。
 もしかしたら来ない場合もあり得ると心配していたのかもしれない。

「入って」

 冷静に考えたらホテルの部屋でふたりきりという状況だ。
 だけど緊張はあるものの、怖くはない。

< 44 / 101 >

この作品をシェア

pagetop