堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「このロブスターうまいよ。食べときなよ」
「あの……お料理はたくさんいただいたので大丈夫です」
「本当に?」

 ウソだ。ひとくちサイズの料理をいくつか食べただけだから、たくさんとは言いがたい。
 だけど勧められるがままにパクパクと口に入れるのは思慮が浅すぎるだろう。
 今日の私は同伴者。羽瀬川先生に恥をかかせないよう、空気を読むことしか考えていない。

「決して邪魔はいたしませんので、どうぞ私のことはお気遣いなく」
「そうはいかないよ。亜蘭のパートナーなんだから」

 主催者である副社長はあちこちから声をかけられる。こんなところで私と話している暇などないはずだ。
 離れた場所にいる秘書の女性が副社長を目で捜しているのが見えた。

「フルーツやドルチェもあるよ?」
「副社長、お戻りになられたほうが……」
「話は変わるんだけど、亜蘭とは付き合ってるの?」

 急な不意打ちの質問に驚いて、そのまま全身が固まってしまった。数秒のあいだ、息もできないくらいに。
 そのあと遅れて心臓が早打ちを始め、顔が一気に熱くなる。

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