堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 私は、先生のお相手にはふさわしくない。
 万が一奇跡が起きて気持ちが通じ合ったとしても、長くは続かなくて、きっとすぐに振られてしまうだろう。

 私と羽瀬川先生は、――――運命で結ばれてはいないから。

 副社長のもとへ秘書の女性が呼びにきて、そのまま話しながら去っていった。
 会釈をしてその背中を見送り、ほうっとひとつ息を吐く。
 ずっと気を張っていて疲れてきたので、私はそっと会場の外に出て椅子で休むことにした。
 腕時計で時間を確認すると、まだ一時間も経っていない。
 副社長や羽瀬川先生と違って私はなにもしていないというのに、エネルギーが尽きかけているのだから情けない。
 
「ここにいたのか」

 もう少し休んだら戻ろうと考えていたとき、静かに歩み寄ってきた羽瀬川先生が私の目の前に立って言葉をかけた。

「すみません。休憩してました」
「慣れない場所に連れてきて、無理させてすまない」
「いえ。私こそお役に立てなくて申し訳ないです」

 すっくと立ちあがると、彼は真面目な表情でふるふると首を横に振った。
 
「疲れたよな。休むなら部屋に行こう」
「え?! パーティーは?」
「来賓にあいさつは済ませたし、勇気にも帰ると伝えてあるから大丈夫」

 彼は副社長の右腕としてパーティーに出席するよう促されただけだから、途中で帰っても支障はないのだろう。
 だけど、私がそうさせていると思うと申し訳なさが先に立つ。
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