堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「ルームサービスを頼んで部屋でゆっくりしよう」
「そ、そんなお気遣いは……」
「ビュッフェの料理、ほとんど食べてないから空腹なんだよ、俺が」

 歩き出そうとする先生の隣に並ぶ。
 横顔にはほんの少し笑みが浮かんでいて、それがあまりにも綺麗で見惚れそうになった。

「こっち」

 ぼうっと歩いていたら、エレベーターホールとは違う方向に行きそうになってしまった。
 咄嗟に彼が私の右手を繋いで自分のほうへ引き寄せる。
 大きくて温かな手に包まれ、私の心臓は一気に鼓動を早めた。

 ずっとこんなふうに過ごせたらいいのに。
 先生が私のことを好きになってくれたら……

 素敵なドレスに身を包んだ私は、まるでシンデレラにでもなったような気持ちになっていて。
 そんな叶わぬ夢を思い描かずにはいられなかった。

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