堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「彼は私の“運命の相手”に当てはまっていません。だから……これ以上踏み込んじゃいけないってわかってるんですけど」

 この上なく胸は高鳴っているのに、頭のどこかではブレーキをかけようとしているちぐはぐな自分がいる。
 もうどうしたらいいかわからない。解決できるのは桜小路先生だけのような気がして、藁をもすがる思いでここに来たのだ。
 喉がぐっと詰まって、鼻の奥がツンとした途端、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

「きっと、すぐに振られますよね。それでも彼が好きなんです」
「茅田さん、泣かないで」

 とめどなく涙を流す私を見て、桜小路先生はそばに置いていたティッシュを取って手渡してくれた。

「相性のいい男性じゃなくてもうまくいくかもしれません。占いは万能ではないですから」
「先生……」
「それに、運命は変えられます。元気を出してください。絶対に後悔だけはしないように」

 そうだ、桜小路先生の言うとおり。
 ああしておけばよかった、こうしていたなら……と後悔はしたくない。
 だから心のままにぶつかってみるしかないんだ。

 彼があの夜のことをどう捉えているかはわからない。私を好きかどうかは聞かなかったから。
 雰囲気に飲まれただけのワンナイトだと思っているかもしれない。
 それでも、私のこの気持ちは伝えておきたい。たとえどんな結末を迎えようとも。
 付き合えないと言われたらあきらめなきゃ。
 きちんと振られてからじゃないと、この思いにケリをつけて昇華させられない。

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