堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
◇◇◇

 羽瀬川先生と一夜を共にしたパーティーから五日が経った。
 あの日以降連絡は来ていないし、私もしていない。
 心待ちにして常にスマホを気にしているくらいなら、自分からメッセージを送ればいいのだけれど。
 素っ気なくされるのが怖くてなかなか行動できないなんて、私はどうしようもなく意気地なしだ。

 でも、自分の気持ちを伝えたいのなら、勇気を出さないとなにも始まらない。このまま終わるのは無理だから。
 ――――あの甘い夜を、なかったことにはできない。


「静珂、最近元気ないね」

 お昼休みにランチを食べているとき、叶実がふと私の顔色をうかがってそう言った。

「そ、そうかな?」
「先週パーティーに行ってから明らかに笑顔が消えてる。なにかあったの?」

 叶実は意外とするどいな、と思いながら苦笑いをして首を横に振る。
 今のモヤモヤした状態で、羽瀬川先生との夜を包み隠さず話すことはできなくて、押し黙るしかなかった。
 もし一夜限りで私がもてあそばれたと思われたら、彼が全面的に悪者になるからだ。
 羽瀬川先生は悪くない。あの夜は私も同意の上だった。だから誤解してほしくない。

「全部顔に書いてあるよ? 羽瀬川先生でしょ」
「え?! ……うん。今度ちゃんと話すね」

 しっかりと目を見て伝えると、叶実も苦笑いをしてうなずいてくれた。
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