堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「ちょっと仕事がトラブっちゃってさ」
「大丈夫?」
「実は途中で抜けてきたんだ。このあと戻らなくちゃいけない」
「大変なときにごめんね」

 一緒にキーマカレーを食べようと誘いかけたけれど、このあと仕事ならそれも無理そうだ。
 彼は私の向かい側に座り、ちょうど近くを通りかかったスタッフにアイスコーヒーを注文した。

「こっちこそバタバタしてごめん。だけど、少しでも静珂ちゃんの顔が見たかったんだ。元気をもらえるから」
「私も、話したいことがあって……」

 今から告白の返事をするのだと意識すると、緊張して身体が自然と固くなっていく。
 メッセージや電話で伝えるという方法もあった。でも、私としては面と向かって返事をしたかったのだ。

「あの……この前の“お返事”を……」
「俺と付き合ってほしいって言ったこと?」

 どうやら緊張しているのも顔を熱くしているのも私だけのようで、彼は腕組みをしながら余裕たっぷりに私を見つめている。

「えっと……前向きな方向で……」
「イエスでいいのかな?」

 恥ずかしくて視線を下げながらコクリとうなずくと、彼は「ありがとう」とうれしそうに笑った。

「じゃあ、今日から俺は静珂ちゃんの彼氏だ。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
「照れてるの? かわいいな」
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