夏が消えてゆく
夏のせい
・・・
「 気をつけーれーい。さよならー 」
「「「 さようならー 」」」
3日に1度回ってくる日直の仕事を終えて、ロッカーに教科書やらノートやらをしまうために寒くて寒くて仕方のない廊下へと向かった。
「 冬華ばいばい 」
「 しゅーと!またあした! 」
「 ……おう。お幸せにな 」
「 うるさい! 」
一刻も早く帰って暖を取りたかったのだろう、1番最初に教室を出たのはモスグリーンのマフラーをした愁人だった。
─── ガチャンッ
少しだけ強くしめないと閉まらないロッカーはやっぱり校舎と同じだけ古いらしい。
「 夏稀かえろ〜 」
教室に帰って寒さに首を縮こませながらリュックに手をかけて気がついた。
「 夏稀? 」
「 …… 」
夏稀は黒板の端っこにチョークを持って佇んで、俯いていた。
寂しそうに黒板に向かう夏稀が消えてしまいそうで、慌ててもう一度声をかけた。
「 夏稀?帰らないの? 」
「 …… 」
リュックを背負って、トントンと肩を叩いた
そんな強く叩いたつもりもないのだけれど、大袈裟に肩を揺らした夏稀を不思議に思いつつさっきから何度も口にした言葉をもう一度。
「 帰ろうよ、夏稀 」
「 ……おう 」
諦めたように小さく息を吐いて、真っ白いチョークを黒板消しの横にならべた。